歯周病内科
目次
歯周病とは
歯周病は今や生活習慣病のひとつとも言われ、歯周病は放置しておくと全身疾患を引き起こす引き金にもなりかねない病気です。
また、歯を失う原因の大きな要因となっています。
歯を失う原因で最も多いのは「むし歯」ではなく「歯周病」です。
「歯周病」によって歯を失う方は35歳頃から増加し、45歳以降では「むし歯」を抜いて歯を失う主原因のトップになります。
歯肉炎と歯周炎の違い
歯肉炎
プラークが歯の周りに付着することで歯肉に炎症が起こり、歯周ポケットが作られます。
炎症の原因であるプラークが除去されると改善します。
歯周炎
歯肉炎が進行すると、歯を支えている骨(歯槽骨)にまで影響が及びます。
歯茎から出血や膿が出たり、口臭も強くなります。
歯槽骨が溶かされてしまい歯がグラグラして、最終的には歯が抜けてしまします。
原因はプラーク中の細菌
歯周病の主な原因はプラーク(歯垢)中の細菌です。
歯周病原性細菌から出される毒素によって歯周ポケットが作られます。
ここは細菌にとって住みやすい環境です。
歯周ポケットの中では歯周病原性細菌が毒素をどんどん作り出し、歯周病を悪化させていきます。
歯周病が悪化すると歯ブラシを当てただけで痛くなり、ブラッシングが疎かになります。
そうなると、さらに歯周病が悪化するという悪循環に陥ってしまいます。
どうして歯周病で歯が抜けるのか
直接歯を壊していく虫歯に対し、歯周病は歯の周りの歯ぐきなど、軟組織と呼ばれるものに影響していきます。ではなぜ歯が抜けてしまうのでしょうか。
毒素と歯槽骨の関係
歯周病菌は歯の周りや歯周ポケットの中に溜まった汚れの中で繁殖し、そこから毒素を出します。当然人間の体には免疫機能が備わっているので、歯周病菌が侵入しないように特に菌の多い部分に血液を集めて戦おうとします。
歯周病の原因
歯周病と全身の健康
近年、歯周病原性細菌が全身の様々な疾患に影響を与えていることを示す研究結果が多数発表されてきています。
歯科医師、歯科衛生士と一緒に「歯周病」を治しましょう。
「サイレント・アーミー」~沈黙の病気~と呼ばれる歯周病。
歯肉炎と歯周炎をあわせた歯周病には35~45歳で80%、45~55歳で88%の人がかかっているとの報告があります。
また歯肉からの出血、口臭、歯肉の腫れ、これら全ての症状は歯周病の予備軍となりえます。
歯周病とは、歯と歯肉に近い部分についた歯垢(プラーク)の中にいる細菌によって引き起こされる病気です。
歯と歯茎の境目についた歯垢(プラーク)から、歯の根にそって歯周病原菌が入り込み、歯を支えている周りの組織をじわじわと壊していき、最後には歯が抜け落ちてしまいます。
歯周病の原因菌
歯周病は複数の原因菌が影響して発症する感染症です。
最近では研究が進み、歯周病の主な原因となる細菌が特定されてきました。
代表的な菌の特性についてご紹介します。
A.a.菌(Actinobacillus actinomycetemcomitans)
正式名称を「アグリケイティバクター・アクチノミセテムコミタンス」と呼ぶ細菌です。酸素を嫌い、歯と歯茎の間の汚れの中で繁殖します。
この菌が出すロイコトキシンという毒素は、私たちの体の中の免疫に関わっている好中球を破壊してしまいます。
P.g.菌(Porphyromonas gingivalis)
正式名称を「プロフィモナス・ジンジバーリス」と呼ぶ細菌です。他の菌と同じように酸素を嫌い、歯と歯茎の中で繁殖して毒素を出します。この菌は特に付着力が強く、他の菌と交わって取り除きにくいバイオフィルムを形成します。
Td.菌(Treponema denticola)
正式名称を「トレポネーマ・デンティコーラ」と呼ぶ細菌で、酸素を嫌います。
歯と歯茎の隙間で繁殖し、細胞の隙間から歯肉の組織の中に直接入り込んで来ます。そして血管にも侵入し、毒素を発しながら全身を巡る大変怖い細菌です。
T.f.菌(Tannerella forsythensis)
正式名称を「タンネレラ・フォーサイセンシス」と呼ぶ歯周病の原因菌です。この菌も酸素を嫌い、タンパク質の分解酵素を作り毒素を発します。
歯周病菌は人から人へ移ります
歯周病は細菌によって引き起こされ、その原因菌となる細菌は人から人へと感染していきます。従って専門的には感染症としてみなされる病気です。
カップルや夫婦、親子において感染するケースがありますが、その経路は細菌によって異なります。
ある種の細菌はお母さんが感染していると胎内の赤ちゃんにも感染すると言われており、実際に生まれたときにはすでに赤ちゃんが歯周病菌に感染しているケースも報告されています。
また最も多い感染経路はだ液を媒介する水平感染と呼ばれるものです。食事の際に同じ食器を使ったり、キスなどで感染します。
パートナーのどちらかが歯周病にかかっていても、きちんとケアされていれば感染しない事もありますので、何よりも一度検査を通してお口の状態を知ることが大切です。
※参考(https://www.gcdental.co.jp/clinicalconv/pdf/no129.pdf)
歯周病が薬で治る!?
歯周病治療といえば、昔から歯磨き指導と歯石を除去したりする歯のまわりのお掃除がどの歯科医院でもされている基本的な治療です。
しかし、この基本的治療をしても、一生懸命歯磨きしても、なかなか歯肉の炎症が取れず歯肉の腫れや出血・口臭で悩まれ、歯周病で歯を失う方がいらっしゃるのも事実です。
ところが内服薬で治す方法がございます。
原因である菌を特定し、薬でその菌を退治する事ができるようになったのです。この治療法は21世紀に入ってから行われている方法で最新式の治療方法「顕微鏡を使った歯周内科治療」です。
費用につきましては、保険適用可能な治療になります。
「歯周病内科学」とは
歯科界の新しい分野「歯周内科学」。これまでとまったく異なったあたらしい考え方。
お薬で歯周病を治してしまう治療の総称です。
歯科における2大疾患といえば、「虫歯」と「歯周病」。これは現在の歯科医療においては、感染症であるという結論になっています。
では、なぜ感染症なのに治らないのでしょうか。
医科において一般的な感染症は風邪です。一般的な風邪であれば医師の指示に従ってきちんと薬を飲めば、ほとんどの場合、治ってしまいます。
では、歯周病も同じように治らないのでしょうか。
現在の歯周病治療は外科的な処置が主流です。しかし、それは歯科医師が特殊な技術を持ち、患者さんも歯磨きがうまくできるという厳しい条件下でないと、良い結果が生まれないのです。どんな条件下においても同じ方法で、簡単に良い結果が生まれる方法はないものかと、多くの歯科医師が知恵を出し合った結果生まれたのが、薬で歯周病を治す歯周内科という治療法なのです。
歯周内科治療の治療方法
この治療方法には4つの大きなポイントがあります。
- 位相差顕微鏡での菌の確認
- 細菌の除去薬剤の内服
- 力ビの除去薬剤あるいはカビとり歯磨き剤での歯磨き
- 除菌後の歯石とり
特に(1)は、非常に大きなポイントです。位相差顕微鏡でお口の中の菌を確認しなくてはなりません。歯周病菌がいるのか、カビが多いのか、あるいは非常にきれいなのか。位相差顕微鏡で確認しないと、お薬の選択ができないのです。
位相差顕微鏡検査
顕微鏡検査では歯周病菌やカビ菌がほとんどの方に見られます。われわれは患者さんのお口の中の汚れをほんの少し採取し、それを顕微鏡で観察します。
顕微鏡で見ることで、今現在の菌の状態を確認することができ歯周病になりやすいかどうか、今はどういう状態なのか、これからどういう状態になつていくのかがわかってきます。
さらに映し出された動画像を拡大表示する機能を用いることで治療効果のよりわかりやすい説明を聞くことが可能です。
感染経路
生まれたときには人のお口の中には歯周病菌は存在しません。しかし、もともといない歯周病菌がなぜ今おロの中にいるかというと、人からうつされているのです。いまも、家族の間でうつしあってる状態にあるかもしれません。
回し飲みや回し食い、箸の使いまわし、キス、くしゃみなどが感染ルートとしてあげられます。菌が再びお口の中に入ってくると、お口の中で定着して歯周病を発症する可能性が出てくるということになります。
特に危険なのは性感染です。せっかく歯周病を治してもパートナーからうつされたのでは意味がありません、パートナーの方と同時に治療なさることをおすすめします。
再発を予防するには
カビ菌は口腔内常在菌といって、お口の中に必ず住み着いている菌です。徹底的にやっつけても、空気中や食べ物や手の指などから再びお口に戻ってきます。全滅させることは不可能なのです。
ですから毎日の歯磨きと歯科医院における定期的なプロフェツショナルクリーニングが大切です。カビ菌が増えすぎると歯ぐきが腫れるなど、悪い影響が出てきます。また、カビ菌は歯周病菌の快適な住みかにもなりますので歯周病菌が再感染しやすくなります。
定期的に歯科医院に通って、歯周病菌が再感染していないか、カビ菌が増えすぎていないか、顕微鏡で確認しカビ菌が増えすぎないように専用の器具を用いてクリーニングを行う必要があります。
全身疾患との関係
菌が全身疾患に大きく関与しているのが医科でも問題になってきています。カビが肺に入れば肺炎になってしまいます。歯周病菌も、わずかでもお口の中で出血を起こすとそこから血管に菌が入ってしまい、心臓で炎症を起こすのです。歯周病の人が心臓病になる確率は2~3倍にあがります。ほかにも食道癌、糖尿病、早産、高血圧などにも関与しています。
義歯
義歯を使っている方は、義歯にもかなりカビが付きます。義歯の清掃もこれから非常に重要になってきます。
虫歯
カビは歯周病にだけ関与しているわけではありません。カビはお口の中で酸を出すことがわかってきていますので、その周りに歯があれば歯を溶かし、虫歯を作ってしまうのです。
タバコ
今回使う薬は白血球が運んでくれる薬なので、たばこを吸うと歯ぐきの血管が収縮し、白血球が減少し、薬の効きが悪くなります。また、タバコは歯周病になりやすく、歯周病が治りにくいことがわかっています。
薬による歯周病治療終了後に注意すべきこと
- 歯周病は細菌による感染症なので、再感染に気をつけましょう。特に性感染に気をつけましょう。
- 歯周病を起こす細菌が感染しにくいように、お口の中を清潔に保つようにこころがけましょう。つまり、歯石やカビ菌を定期的に除去して、そして毎日の適切な歯磨さをしましょう。
- 歯周病をおこす細菌が再感染していないか、また、お口の中が再感染しやすい環境になっていないか、歯科医院での顕微鏡を用いた定期検診を受けるようにしましょう。
よくある質問
- 歯周病はどのような自覚症状がありますか?
- 主に歯茎からの出血や歯のぐらつき、口臭、食べ物がよく詰まるなどの症状が一般的に多く聞かれます。
- 歯茎から出血しました。歯周病ですか?
- 歯周病の可能性が高いです。一度ご相談ください。歯周病は進行すると歯を失ったり全身疾患の原因になる可能性があります。放置することは避けましょう。