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最先端の歯周病治療には、具体的にどんな治療方法がありますか?
2017年07月07日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「最先端の歯周病治療」です。
医療技術というのは常に研究と進歩を続けており、歯科医療においてもそれは例外ではありません。
人工の歯の根を埋め込むことで天然の歯に限りなく近い完成度を誇るインプラント、
銀歯の詰め物や被せ物で指摘されていた欠点を克服したセラミックは、その良い例とも言えるでしょう。
ちなみに、歯周病治療においても以前に比べて進歩しています。
ここでは最先端の歯周病治療をテーマにして、最近ではどんな歯周病の治療方法があるのかを説明します。
ただし、最先端である以上全ての歯科医院で導入されているわけではないため、
「こういう治療方法があるのだ」という一つの参考にしてください。
目次
1. PDT治療
いわゆる光力学療法とされるもので、最新のバイオテクノロジー治療です。光感受性物質を投与し、
レーザーなどによる波長の光を照射することで活性化させ、それによって薬理作用を得る仕組みです。
この治療法は既に肺がんなどの治療にも応用されているため、知っているという人もいるかもしれません。
歯周ポケット内にバイオジェルを注入した後、レーザー光によって光殺菌するのが流れです。
バイオジェルの注入、レーザー照射、この2ステップのみで歯周ポケット内の歯周病菌を完全に破壊でき、
痛みや腫れも起こることなく簡単に歯周病を治せます。
欠点
PDT治療の欠点は現状で2つあります。
1つはこの治療を行っている歯科医院が少ないことで、これは最先端の治療には例外なく言える欠点です。
もう1つはどんな場合にも効果的ではないということです。
正確には既に歯周病の基本治療が終わり、継続的安定化治療に入っていることが前提になるため、
歯周病になったからといって即PDT治療で歯周病を完治させられるわけではないのです。
このため、いずれにしても一定時期までは従来の歯周病治療を行う必要があります。
2. 骨の再生療法
歯周病が進行すると歯を支える骨が溶かされてしまいますが、
この溶かされた骨を再生できる治療方法も存在します。
正確には「歯周病で溶かされた骨を再生する治療」であって、「歯周病を治すための治療」ではありません。
このため、「歯周病の治療方法」としてお伝えすると誤解を招くかもしれませんが、
歯周病によって溶かされた骨を再生できるという画期的な治療方法です。
ちなみに、骨の再生療法には現状2つの治療方法があります。
2-1. GTR法
元々この方法が登場したのは1980年代ですから、近年導入された治療方法というわけではありません。
治療方法としては骨を失った箇所に医療用のゴアテックスの皮膜を設置して、骨の再生を促すというものです。
ただし、日本人においてはこの治療は難しいとされています。
と言うのも、構造上歯肉の下にゴアテックスの膜を挟んで縫合するのですが、
日本人は歯肉が薄いためにこの手術が非常に難しいのです。
過去には術後に皮膜が露出したケースもあり、そうなると感染してしまって骨の再生は起こりません。
2-2. エムドゲイン法
エムドゲインとは、スウェーデンの特定の豚の歯の芽から抽出したタンパクの一種です。
こう説明すると抵抗を感じる人もいるでしょうが、日本の厚生労働省からも承認されているため、
エムドゲインの安全性は全く問題ありません。
治療方法としては、歯肉を切開した後エムドゲインを塗布して再び縫合します。
そうすることによって、歯が生えてくる時と同じ環境を作り出せるため、
再度骨を歯の周囲に呼び込んで再生させることができるのです。
GTR法に比べると手術も簡単なのですが、適応できる症例はGTR法に比べて若干狭くなります。
共通の欠点
どちらも手術を伴うため、誰もが気になるのは「安全性」でしょうが、これについては全く問題ありません。
これらの治療方法の欠点は3つで、1つはやはりこれらの治療を行っている歯科医院が限られていることです。
そして2つ目の欠点は、効果は高いものの再生できる骨の量には限界があることです。
つまりGTR法もエムドゲイン法も、失った全ての骨を全くそのまま取り戻すのは不可能だということです。
最後に3つ目の欠点ですが、高度に進行した歯周病には適応できないことです。
このため、絶対に骨を再生できるとは限らないですし、再生できる量にも限界があるのです。
3. 歯周内科治療
歯周病は歯周病菌に感染することで起こるため、病気の類としては感染症と位置付けられています。
要するに、感染症という点では歯周病は風邪と全く同じ特徴を持っているわけです。
歯周病も風邪と同じなら、風邪同様に薬で治せるのではないか?…これが歯周内科治療の発想の原点です。
つまり、「薬の力で歯周病を治す」というのが歯周内科治療の方法です。
デジタルパノラマレントゲンや顕微鏡で病巣部や細菌の状態を確認し、
薬を服用することで歯周病を治せるのです。
欠点
この治療方法においても、やはり対応した歯科医院が少ないというのが最大の欠点です。
また、風邪のように治ったら安心というわけにはいかず、治療後は再発に注意する必要があります。
薬で治すという点で一見画期的ですが、
治療後は従来と同じで定期検診に通って再発を予防しなければなりません。
4. 歯周病治療で重視するポイント
ここでは歯周病の最先端の治療方法をお伝えしましたが、
歯周病治療で大切なのは治療方法の新しさだけではありません。
治療する歯科医の腕、治療を行う歯科医院の医療設備、これらにも注目しなければなりません。
4-1. 歯科医の腕
歯科医の腕が悪ければ、いかに最先端の治療でも充分な効果は得られないですし、
GTR法やエムドゲイン法においては手術を伴う以上、むしろリスクを高めてしまうでしょう。
このため、治療内容だけでなく治療を行う歯科医の腕にも注目する必要があるのです。
そして、その目安となるのが認定医や専門医の資格です。
日本歯周病学会では歯科医の中でも経験と実績のある者だけに与える資格があり、
それが「歯周病認定医」や「歯周病専門医」です
この資格を持つ医師は歯周病治療に長けており、
治療の精度を考えるなら治療方法以上に重要なポイントになります。
ちなみに、日本歯周病学会のWEBサイトにてそれぞれの資格を持つ歯科医を探せますし、
その歯科医が勤務する歯科医院を都道府県別に調べることができます。
4-2. 医療設備
どんなに最先端の歯周病治療を行う歯科医院でも、医療設備が充実していなければ治療の精密さに欠けます。
例えば上記で説明した歯周内科治療においては、病巣部を正確に把握することがポイントになりますから、
精度の高い顕微鏡やレントゲンを導入していなければ治療は難しいでしょう。
また医療設備の充実さとあわせて、その歯科医院の衛生管理にも注目してください。
歯周病は細菌による感染症ですから、人から人にうつってしまいます。
衛生管理が不充分な歯科医院では、他の患者さんの歯周病菌をもらってしまう可能性もあるのです。
ちなみに、こうした医療設備の充実度は歯科医院のHPで確認できます。
最新の設備を導入している歯科医院は、大抵その旨をHP内の院内紹介欄などで紹介しているからです。
その歯科医院でどんな治療をしているかだけでなく、どんな医療設備を備えているかも大切なポイントです。
…最先端の治療方法の導入の有無だけでなく、歯科医の腕、医療設備、
これらにも注目した上で治療を受ける歯科医院を選んでください。
5. 予防意識は欠かさない
最先端の治療方法があるからといって、歯周病を軽視してはいけません。
と言うのも、「最先端の治療=どんな歯周病も治せる」というわけではないからです。
例えば、PDT治療は簡単なステップで歯周病菌を破壊できる画期的な治療方法です。
しかしその反面、ある程度治療を終えて安定した状態でなければ効果は発揮されません。
また、骨の再生療法においても再生できる量には限界がありますし、
どんな場合においても確実に再生できるとは断言できません。
つまり最先端の治療を行ったとしても、全ての歯周病に対応できるわけではないのです。
このため、何より大切なのはやはり歯周病を予防することであり、
毎日の歯磨きや定期検診を受けるなどの徹底予防は依然必要です。
5. 予防意識は欠かさない
いかがでしたか?
最後に、最先端の歯周病治療についてまとめます。
1. PDT治療 :レーザー光によって光殺菌する。バイオジェルの注入、レーザー照射の2ステップで治療可能
欠点 :対応している歯科医院が少ない、歯周病の基本治療が終わった状態でなければ行えない
2. 骨の再生療法 :歯周病が進行して溶かされた骨を再生させるための治療
GTR法 :骨を失った箇所に医療用のゴアテックスの皮膜を設置して骨の再生を促す
エムドゲイン法 :歯肉を切開して塗布し、歯が生えてくる時と同じ環境を作り出して骨を再生させる
共通の欠点 :対応している歯科医院が少ない、骨の再生できる量に限界がある、対応できない症例もある
3. 歯周内科治療 :風邪同様に、薬を服用することで歯周病を治す
欠点 :対応している歯科医院が少ない、再発の可能性がある
4. 歯周病治療で重視するポイント :治療方法だけでなく、歯科医の腕と医療設備にも注目するべき
歯科医の腕 :認定医、専門医の資格を持つ歯科医は腕が良い
医療設備 :いくら最新の治療方法を導入しているも、医療設備が充実していなければ精度が落ちる
5. 予防意識は欠かさない :最先端の治療方法にも限界があるため、それに頼らず予防は徹底するべき
これらのことから、最先端の歯周病治療が分かります。
歯周病治療を受ける際、歯科医院選びの基準として距離だけで決めてしまう人が多いのが現状です。
しかし、歯周病は私達にとって深刻な病気になっています。
だからこそ、ここでお伝えした最新の治療方法、それに加えて歯科医の腕や医療設備に注目して、
精度と効果の高い治療を行う歯科医院を選んでください。