歯の神経の治療が数年後に再治療になることがある？それはなぜ？

歯の神経の治療とは？

歯の神経の治療は『根管治療』といいます。細菌に侵襲されてしまった細歯質や神経を徹底的に除去し、歯の根の病気(根尖病変)を治療・予防するものです。

一般的にはリーマーやファイルという器具を使用して行います。歯の表面のみの虫歯ならば根管治療を必要としないことが多いですが、歯髄まで虫歯が進行したならばこの治療が必要になります。

最悪の場合、歯根の先端（根尖）まで炎症が進行して、病巣を作ったり膿を放出したりします。

なぜ再治療になるのか？

その答えは根管治療の難しさにあります。歯の根っこの中は歯科医師が直接目視しながら治療をすることができず、根っこの形も患者一人一人異なっているので、完全に細菌を取り除くことが非常に難しいです。

そして細菌を完全に取り除くことができないままで詰め物を詰めたり、クラウン(かぶせ物)を被せてしまうと、徐々に細菌が増殖してトラブルが出てきてしまうこともあるからです。

また、歯の根っこの形や感染状況により治療期間も人それぞれで異なり、１～３回で終わる人もいれば何回行っても改善できない人もいます。ですので、よく何回も歯医者に行っているのに何も治療が進まないと思われやすい治療のひとつになります。

もしこの治療を完璧に行わなければ、炎症が再発し、せっかく被せた被せ物も除去して、再度根管治療を行わなければならず、最悪の場合抜歯になってしまします。

根管治療をきちんとしてくれる歯科医院の見分け方

認定医の有無

勿論専門医・認定医だからと言って上手いとは確実に言えませんが、少なくとも根管治療の分野に関しては知識や経験があり、良い結果が期待できる可能性は高いと思います。

しかし、日本歯内療法学会の認定医は全国に2014年7月現在、専門医は187名（指導医を含む）しかいませんし、海外の専門医（アメリカ歯内療法学会・AAE）の認定を持っている歯科医師も日本には数人しかいませんので、専門医・認定医を基準に歯科医院を見つけることはまだなかなか難しいのが現状だと思います。

ラバーダム使用の有無

口の中にはすべての方に「口腔内常在菌」が存在しており。唾液の中にもかなりの数の口腔内常在菌が存在しています。 虫歯治療・根管治療においては口腔内常在菌を含む唾液が歯の中に進入してくると、その治療結果が悪くなってしまいます。この唾液の進入を防いでくれるのがラバーダムです。

また、根管治療の際に使用する薬液から粘膜を保護したり、リーマー、ファイルの誤飲・誤嚥防止にも役立ちます。

しかし、実際使用している歯科医院は多くありません。なぜなら、『根管治療の保険点数が低すぎるから』です。日本の根管治療の健康保険の点数はアメリカの約８分の1と非常に低く、健康保険治療でもラバーダムを使用して治療を行えば、間違いなく赤字になります。勿論ラバーダムを使用したからといって確実に治すことができるわけではありませんが、成功率は高くなると思います。

マイクロスコープ ・拡大鏡(ルーペ)使用の有無

根管治療は、肉眼では限界があり、感染部を取り残してしまうことによって歯根嚢胞ができてしまうこともあったり、治らないことがあります。歯の神経は目では見にくい細かい管になっており、拡大鏡や歯科用マイクロスコープを使用することにより、より良く管を見ることができるので、再治療の可能性は低くなります。

アメリカの歯内療法専門医の９０％以上は、マイクロスコープを使用していると言われています。しかし、日本ではマイクロスコープの普及は遅れており、最近導入されてきている歯科医院は増えましたが、まだ一部にしか備わっていないため、日本で健康保険治療範囲内での根管治療はお世辞にもレベルの高いものとは言い難いと思います。

再治療にならないためには

再治療にならないためには、認定医の有無やラバーダム使用の有無、マクロスコープ・拡大鏡使用の有無も大切ですが、それに加えて健康保険治療範囲内ではなく、自費治療範囲内での受診をお勧めします。健康保険治療範囲内でもとても丁寧に、上手に根管治療を行う歯科医師もいらっしゃいますが、本当にごく僅かです。

日本の健康保険制度だと、保険点数が低いため、使いたくても使えない機材や材料、薬液などがあり、また、患者一人にかけられる時間も短くなってしまいます。しかし、自費診療の場合、高額になってしまいますが性能の良く信頼できる機材や材料を使用することができ、また治療時間も長く取ってもらうことができます（健康保険の場合30分、自費治療の場合60～90分）。歯科医院もボランティアではなく仕事として歯科医療を行っているので、経営的にも健康保険治療のみですと限界があります。

また、上に被せるクラウンも健康保険範囲内ですと金属になりますが自費診療ですとより身体に優しい金属やセラミックを装着することが可能です。
是非、患者さんにはしっかりとした歯科医療を受けるためにも自費診療を受診することをお勧めします。