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見えない矯正があると聞いたのですが、どんなものですか?
2016年07月18日
目次
従来の矯正方法
昔から現在まで使用し続けられてきている矯正は表側矯正(マルチブラケット装置)といい、俗にいう「見える矯正」です。それは、歯の唇側の表面にブラケットという固定する装置を歯科用接着剤でくっつけて、それに金属製の硬いワイヤーを通して、ワイヤーの力で歯並びをよくする方法です。この方法が一番微調整が効き、また結果も良いとされています。欠点といえば、完全に口の中で金属が目立ってしまうことと、唇側にブラケットとワイヤーを装着するので違和感や痛みを生じることがあります。金属のワイヤーを使用するのでどうしても審美性が劣ってしまいますが、少しでも目立たないようにとブラケットを透明や白い材料にする工夫もされています。
また、矯正開始から終了まで常に口の中にブラケットとワイヤーが入っているので、食べ物も良く挟まりますし、歯磨きなどのメインテナンスはとてもしにくく、細心の注意を払ってメインテナンスを行わなければ、虫歯や歯周病になるリスクが高まります。また、矯正開始時や調整でワイヤーを絞めたりすると、痛みで食事ができないこともあります。また、少しずつ歯を動かすので噛み合わせが著しく悪化し、食事をしにくくなることもありますが、幅広い症例で適応することができますし、とても信頼度の高い方法になります。
見えない矯正とは?
1)裏側(舌側)矯正マルチブラケット装置
従来の表側マルチブラケット装置は、唇側の歯の表面に歯を固定するためのブラケットと歯を動かすためのワイヤーを装着しますが、裏側矯正は歯の舌側にその装置を取り付けるので、矯正装置自体が目立たないという利点があります。しかし、ブラケットとワイヤーを歯の裏側(舌側)に取り付けるので、舌に違和感や痛みを生じる可能性があり、さらに装置が舌の動きを阻害して話しにくくなることもあります。また、歯の舌側は唇側の形と違い複雑なことが多いので、既製品を使用する表側矯正と異なりオーダーメイドのブラケット装置を製作することが多く、費用もやや高額になりがちです。
加えて、歯の舌側は見えにくいため細かな調整をすることが難しく、術者の経験・知識・技術に大きく左右されてしまいます。
一方、虫歯のリスクは表側矯正と比べて低いというデータもあります。歯の舌側は、唇側よりエナメル質という硬い組織が3倍も厚いので、虫歯の原因菌であるミュースタンス菌の放出する酸に強く虫歯になりにくいとされています。また、歯の舌側には常に唾液が循環しているので、虫歯の原因菌がこの唾液の自浄作用によって増殖しにくくなっています。このような理由から、歯の裏側に装置を付けた方が虫歯になりにくいのです。しかし、表面矯正同様、磨きにくくなっていますし、食べ物も良く挟まるのでしっかりとしたブラッシングを行う必要があります。
2)マウスピース矯正
表側矯正マルチブラケット矯正、裏面矯正マルチブラケット矯正とも、矯正開始から終了まで常に歯の表面にブラケットとワイヤーが装着されているので、違和感などは最初から最後まで伴います。また、表側矯正に関しては金属が見えるので審美性にも問題がありました。そこで発明されたのがマウスピース型の矯正装置です。これは、透明なプラスチックのマウスピースを歯にはめ込むだけで矯正することができるというものです。
最大のメリットはとにかく透明な矯正装置なので目立たないということです。どうしても従来法だと金属が見えていやだという人には最適です。また、固定している従来のマルチブラケット装置とは違い、自分自身で取り外しができるので、食事の時や歯磨き・矯正装置の洗浄などのメインテナンスが容易になります。
ですが、歯の移動量が大きい症例や抜歯を必要とする症例では、マウスピース矯正単独では限界がある場合があります。もしそのような場合は、一定の期間表側・裏側矯正を併用することがあります。また、自分自身で取り外しできるというメリットがある反面、矯正装置を装着するかしないかの判断は患者自身に一任されてしまうために、矯正装置を着ける時間が短い、もしくは着けない期間があった場合、治療期間が従来より長くなってしまうというデメリットも存在します。
歯は少しずつ動かすので何度か新しいマウスピースに交換しながら矯正を行います。従来のマルチブラケット装置はワイヤーを取り替えたり絞め直したりするだけで調整することができますが、マウスピース型の矯正装置は変形しないので作り替えが必要になります。
矯正する時期に注意
どの矯正装置にもメリットとデメリットが存在します。つまり今のところ完璧な矯正装置は存在しないということです。ここで注意しなければならないことは、矯正を行う時期にあります。成人になってある程度噛み合わせが固まった人はいいのですが、成長期のお子さんには特に注意が必要です。微調整を繰り返して顎骨の発達と同時進行で矯正を行うことが望ましいのですが、がっちり固定してしまうと骨の成長を阻害してしまうことも考えられます。