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虫歯はないけど歯周病です。予防方法が同じなのにどちらか一方だけ起こるのはなぜ?
2017年03月27日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「虫歯と歯周病は同じ予防方法なのになぜどちらか一方だけ起こるのか」です。
虫歯と歯周病はどちらも細菌による感染で引き起こされる口腔内の病気です。
最も、虫歯は歯の病気で歯周病は歯肉の病気という違いがあるものの、予防方法は全く同じです。
そこで思うのは同じ予防方法である以上、どちらか一方だけ起こるのはなぜなのかということです。
予防方法が同じなのに人によっては虫歯にだけなってしまう、
もしくは歯周病にだけなってしまう…今回はその理由について解説していきます。
目次
1. 虫歯と歯周病の要因
虫歯も歯周病も細菌に感染することで起こる病気です。
その意味では、虫歯や歯周病の要因は「細菌」というのが答えでしょう。
このように「細菌」とひとくくりにしてしまえば全く同じですが、肝心の細菌の種類は全く違うのです。
虫歯の要因となる細菌はミュータンス菌、いわゆる虫歯菌と呼ばれるものです。
一方、歯周病の要因になる細菌は歯周病菌と呼ばれるもので、ミュータンス菌とは全く別物です。
この点から分かるとおり、1つの細菌が虫歯と歯周病の両方を引き起こしているわけではないのです。
例えば、歯磨きでミュータンス菌を除去できたとしても、歯周病菌が残っていれば歯周病を引き起こしますし、
反対に歯周病菌を歯磨きで除去できたとしても、ミュータンス菌が残っていれば虫歯が引き起こされます。
それぞれ要因のなる細菌の種類が異なる以上、同じ予防方法でもどちらか一方だけ起こることはあり得ます。
1-1. 風邪に例えて考える
「細菌の感染によって引き起こされる」、この点においては実は虫歯も歯周病も風邪と全く同じです。
そこで風邪に例えて考えてみましょう。
そうすることで、虫歯と歯周病は同じ予防方法なのになぜ一方だけ起こるのかが分かりやすくなります。
さて、風邪の細菌といっても種類は様々で、
頭痛や熱を引き起こすものもあれば喉やお腹に痛みをもたらすものなど色々です。
しかし、風邪の予防方法は基本的には同じですよね。
それでもどうしても風邪を引いてしまうことはありますし、風邪を引いた時の症状は人によって様々です。
ではもっと分かりやすく例えてみましょう。風邪の予防を徹底している人が2人いたとします。
しかし2人とも風邪を引いてしまい、1人は喉が痛くなり、もう1人はお腹が痛くなったとします。
これは別に珍しくも何ともないことですが、よく注目してみてください。
1人は喉に痛みをもたらす細菌に感染したものの、お腹に痛みをもたらす細菌は予防できたわけです。
もう1人は、お腹に痛みをもたらす細菌に感染したものの、喉に痛みをもたらす細菌は予防できたわけです。
この例が全てを示しており、症状の要因となる細菌が異なる以上、
同じ予防方法でもどちらか一方だけ起きてしまうのは、珍しいケースではないのです。
つまり、虫歯を予防できて歯周病を予防できないこともあれば、その逆もあり得るということです。
2. 虫歯や歯周病になりやすい人がいる
何らかの原因で虫歯になりやすかったり、歯周病になりやすかったりする人がいます。
このため、虫歯になりやすい人なら歯周病を予防できてもすぐ虫歯になってしまいますし、
歯周病になりやすい人なら虫歯を予防できてもすぐ歯周病になってしまいます。
さて、気になるのは「何らかの原因」とは具体的に何なのかですね。
そこで、以下の項目で虫歯になりやすい人と歯周病になりやすい人の特徴を挙げていきます。
これらの特徴に該当する人は、特に今回のテーマのようにどちらか一方だけ起こることが多いでしょう。
2-1. 虫歯になりやすい人の特徴
噛み合わせのバランスが悪い
噛み合わせが悪いと、噛んだ時に特定の歯だけ負担が掛かりやすくなります。
例えば、噛み合わせが悪いことで前歯を使ってあまり噛めない人の場合、
本来前歯が負担するはずの力が奥歯に掛かってしまいます。
この例のケースで言えば、通常以上の力が掛かってしまうことで奥歯のエナメル質は傷ついてしまいます。
エナメル質は歯の表面にあり、歯を保護する役割を持った言わば歯にとってのバリアです。
それが傷ついてしまうことで虫歯になりやすくなるのです。
唾液がネバついていて量も少ない
これは唾液の質の問題です。唾液は口腔内の細菌を洗い流すという洗浄効果を持っています。
しかし、ネバついていれば綺麗に洗い流すことができなくなりますし、
唾液の量が少ないこともやはり細菌を洗い流す点において支障となります。
このため口の中に細菌が溜まりやすくなりますし、それが最も露呈するのが食後です。
食事によって口腔内が酸性になりますが、本来唾液の働きによってそれが中和されます。
しかし、唾液が少なくてネバついているとすぐに中和されないため、長時間酸性状態が続くのです。
そうなると酸性時間が長く続くことで歯のエナメル質が溶かされ、
さらに溶けた歯を再石灰化するのも追いつかなくなり、やがて虫歯になってしまうのです。
糖分を含んだ甘いものが好き
「甘いものを食べると虫歯になる」…これは誰もが一度は言われた経験があるでしょうし、本当のことです。
つまり、糖分を含んだ甘いものが好きな人は、それだけで虫歯になりやすいのです。
ここではその理由を解説していきます。まず、虫歯はミュータンス菌、つまり虫歯菌によって引き起こされます。
さて、虫歯菌は酸を出すことで歯を溶かして虫歯にするのですが、虫歯菌が酸を出すには時間が掛かります。
ただしエネルギーを得た虫歯菌は別で、エネルギーを得ることでより活発に酸を出してしまうのです。
そしてそのエネルギーが糖分で、糖分を摂取することで虫歯菌の働きを活発にさせてしまうのです。
2-2. 歯周病になりやすい人の特徴
糖尿病の人
糖尿病と歯周病が関係していることは、以前から話題になっています。
と言うのも、糖尿病になると感染に対する抵抗力が弱くなってしまうからです。
歯周病は歯肉の病気とは言え、その要因は細菌に感染することで起こります。
つまり、抵抗力の弱さは歯周病になるリスクを高めることになるのです。
また、糖尿病の人は歯周病になりやすいだけでなく、進行を早めてしまう特徴も持っています。
ちなみに、心臓病などの場合も同じことが言えます。
喫煙者
タバコを吸う人と吸わない人とで歯周病になるリスクを比較した場合、
タバコを吸う人の方が吸わない人のそれに比べてリスクが5倍以上高くなるというデータがあります。
また、禁煙した場合は歯周病になるリスクがおよそ4倍低下するとも言われているのです。
その点からも歯周病と喫煙が関係しているのは明白です。
ちなみに、タバコを吸うことで歯肉の出血を抑え、さらに歯肉を硬くしてしまいます。
このため歯周病になっても気付かないケースが多く、重症化しやすい特徴もあるのです。
妊娠中の女性
歯周病菌にはいくつかの種類がありますが、中には女性ホルモンを栄養源とする歯周病菌も存在します。
このため女性は男性に比べて歯周病になりやすく、
特に女性ホルモンの分泌が活発になる妊娠中に至ってはそのリスクがさらに高まります。
また、妊娠することでつわりが酷いと口腔内の環境が悪化してしまうため、
それもまた歯周病を招く要因になるのです。
女性ホルモンの分泌が活発になるという点では、初潮を迎える時期や閉経時にも同じことが言えます。
3. 虫歯も歯周病も予防するためには
この記事のタイトルどおり、虫歯も歯周病も予防方法は同じです。
また、100%予防する方法があるとまでは断言できません。
しかし、どちらにおいても確実に予防効果を高める方法を1つ紹介しておきます。
それは、歯科医院で定期検診を受けることです。
虫歯菌も歯周病菌も口腔内に付着するプラークに潜んでいるため、
毎日の歯磨きでこれを完全に除去できれば虫歯も歯周病も防げます。
しかし、現実的に考えるとそれは不可能に近いでしょう。
何しろプラークは目に見えないですし、毎日のように発生して口腔内に付着します。
いくら丁寧に歯磨きをしたところで、毎日目に見えないプラークを常に全て除去するのはまず不可能です。
さらにプラークは時間が経つと歯石に変化し、そうなると歯磨きでは除去できなくなるのです。
ちなみに、歯石はプラーク以上に細菌を持っているため、虫歯や歯周病になるリスクをより高めてしまいます。
歯科医院の定期検診なら口腔内のクリーニングによってプラークも歯石も除去できますし、
毎日の歯磨きの効果を高められる「正しい歯磨きの方法」の指導を受けることもできます。
また、仮に虫歯や歯周病になってもそれを早期発見できるメリットもあるのです。
初期段階で発見できれば、虫歯や歯周病になったとしても簡単な治療で治せます。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、虫歯と歯周病は同じ予防方法なのになぜどちらか一方だけ起こるのかについてまとめます。
1. 虫歯と歯周病の要因
- 風邪に例えて考える :虫歯や歯周病は風邪と同じで細菌によって感染する
虫歯や歯周病になりやすい人がいる
- 虫歯になりやすい人の特徴 :噛み合わせのバランスが悪い、唾液がネバついていて量も少ないなど
- 歯周病になりやすい人の特徴 :糖尿病の人、喫煙者、妊娠中の女性
虫歯も歯周病も予防するには :歯科医院で定期検診を受けると良い。予防だけでなく早期発見もできる
これらのことから、虫歯と歯周病は同じ予防方法なのになぜどちらか一方だけ起こるのかが分かります。
予防方法は同じでも、要因となる細菌の種類が異なる以上、
虫歯か歯周病かどちらか一方だけ引き起こされる可能性は充分にあります。
両方確実に予防するとなると、おすすめなのは歯科医院で定期検診を受けることです。
そもそも虫歯も歯周病も歯磨きだけで確実に予防するのは難しいですし、
定期検診を受けていれば一方の症状が起こっても、早期発見して早期治療することが可能です。