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虫歯と歯周病、予防が難しいのはどちらですか?
2017年04月24日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「虫歯と歯周病では予防が難しいのはどちらなのか」です。
虫歯も歯周病も予防が必要ですが、現状多くの人がこれらの病気に悩まされています。
さて、そんな虫歯と歯周病を比較した時、予防が難しいのはどちらだと思いますか?
実は一般的には歯周病の方が予防は難しいと言われており、
実際に日本人が歯を失う要因のトップは歯周病です。
また、日本人の成人の8割ほどが歯周病とも言われており、
これらの点から虫歯以上に歯周病の予防が難しいことが分かります。
ここでお伝えするのは、歯周病は虫歯に比べて予防が難しい理由についてです。
目次
1. 自覚症状の差
自分が虫歯かどうかを判断する時、ほとんどの人は「歯の痛みの有無」で考えます。
歯が痛むのは典型的な虫歯の自覚症状ですから、痛みがある人は虫歯だと自覚して歯科医院に行くでしょう。
そして治療に通えば、虫歯を引き起こしたとしても重症化する前に治すことができます。
これは虫歯の発覚から治療までの最も多い流れですが、歯周病はこのようにいかないことが多いのです。
なぜなら歯周病は虫歯に比べて自覚症状に乏しく、気付きにくいという特徴があるからです。
正確に言えば自覚症状自体はありますが、少なくとも虫歯の痛みのように明確ではありません。
また、歯周病の場合は目立つ自覚症状が出た頃には既に重度段階まで進行している可能性が高く、
気付いた時には重症化していて歯を失うことになった…そんなケースも珍しくないのです。
では、実際に歯周病の自覚症状を以下で挙げていきます。
歯磨きや食事の時に歯肉から出血する
元々歯肉には多くの毛細血管が通っているのですが、歯周病になることで歯肉に炎症が起こると、
その箇所に力が掛けられることで出血しやすくなります。
常に出血するわけではないですが、歯ブラシの刺激や硬いものを食べた時に起こりやすい症状です。
歯肉が健康な状態なら歯磨きで出血することはないですし、
炎症を起こしている以上は歯肉に腫れや変色などの症状も起こっています。
このため、歯磨きや食事で出血することがあったら、一度自分の歯肉を鏡でよくチェックしてみてください。
口臭を感じる
歯周病になるとお口の中に歯周病菌が繁殖し、それが原因で口臭を招きます。
深くなった歯周ポケットにも細菌は溜まりますし、お口の中が細菌だらけになってしまうのです。
口臭は一見目立つ自覚症状に思われますが、厄介な点が2つあります。
1つは自分では自分の口臭には意外と気付きにくいということです。
もう1つは他人なら口臭に気付くでしょうが、それを指摘してくれる人はまずいないということです。
使用している歯ブラシやデンタルフロスのニオイを気にして、明らかに嫌なニオイがした時は要注意です。
お口の中がネバつく
これに最も気付きやすいのは起床時です。朝起きた時、お口の中の感触に注意してみてください。
その時ネバネバした感触があれば、それは歯周病の可能性があります。
これは、歯周病によってお口の中で歯周病菌が繁殖しているのが原因です。
歯周病菌は唾液に含まれることでネバネバする特徴を持っているため、
それがお口の中のネバつきを感じさせているのです。起きてすぐに歯磨きやうがいをする習慣がある人は、
その前にネバつきがあるかどうかを気にしてみるといいでしょう。
歯が長くなって見える
歯周病になると徐々に顎の骨が溶かされていき、それに伴って歯肉が退縮していきます。
その影響で歯の根元が露出するため、歯が長くなったように見えるのです。
また、歯の根元はエナメル質に守られていないので、刺激に対して非常に敏感です。
このため、この状態で冷たいものや熱いものを飲食するとそれが刺激となって歯に痛みやしみを感じます。
つまり、「歯が長くなって見える」というのは歯周病がある程度進行していることを示す自覚症状ですし、
そうなることで同時に「冷たいものや熱いものがしみる」という自覚症状も起こるのです。
歯がグラつく
非常に分かりやすい自覚症状なので、他のものに比べてこれなら歯周病に気付けると思うかもしれません。
確かに歯がグラつけば誰だってそれに気付きますが、この時点で気付くのは遅すぎるというのが問題です。
歯がグラつくのはある程度顎の骨が溶かされたからであり、歯周病も相当進行していることが予想されます。
歯周病は虫歯と同じで、進行前に発見して治療することで大きな問題に至らずにすみます。
初期段階で治療すれば歯周病もそれほど怖くありません。しかし、歯がグラつくほどの自覚症状があるとなると、少なくとも中期段階、もしくは重度段階にまで歯周病が進行してしまっている可能性が高いでしょう。
…このように、歯周病の自覚症状はどれも虫歯の痛みほど目立ったものはなく、
あるとしてもそれは既に歯周病が酷く進行してしまっている状態です。
こうした自覚症状の乏しさによって歯周病に気付きにくく、虫歯よりも予防しにくい特徴があるのです。
2. 日常生活が関わってくる問題
歯周病は単にお口の中を綺麗にするだけでは予防しきれず、
日常生活の過ごし方によっては歯周病になるリスクが一気に高まります。
つまり歯周病にならないためには日常生活にも注意する必要があり、そこが予防の難しさにもなっています。
例えば、疲労やストレスは身体の免疫力を低下させ、歯周病菌に感染するリスクを高めてしまいます。
また、喫煙に至っては歯周病になるリスクを数倍高めますし、受動喫煙においても例外ではありません。
さらに喫煙すると歯肉の老化が早まるため、それもまた歯周病になるリスクを高めます。
もっと言うなら女性の場合は女性ホルモンの過剰な分泌さえ歯周病菌を活発化させるため、
妊娠時や閉経時などは普段以上に歯周病を引き起こしやすい状態になります。
こうした日常生活が歯周病に関わる以上、予防するには生活習慣の改善も必要です。
とは言え、普段の生活習慣を改善するのは容易ではないでしょう。
疲労やストレスをゼロにするのは不可能ですし、害があると分かっていても禁煙はつらいものです。
このような点も、虫歯に比べて歯周病の方が予防するのが難しいとされている一因となっています。
3. 全身の健康状態が関わってくる問題
歯周病になりリスクはお口の中だけでなく、全身の健康状態も関わってきます。
その筆頭となるのが糖尿病、歯周病と糖尿病の関連性は以前から指摘されていたことです。
糖尿病によって血糖値が高くなると様々合併症が起こりやすくなり、実は歯周病もそこに含まれているのです。
実際に糖尿病の人とそうでない人とを比較した場合、
糖尿病の人の方がそうでない人に比べて歯周病になるリスクが高いと報告されているのです。
つまり、全身の健康状態が良好でないことで、それが歯周病の予防を難しくさせてしまうのです。
逆に言えば歯周病を予防するには全身の健康状態を良好にしなければならないわけで、
お口の中を健康にすれば予防できる虫歯に比べて、歯周病は明らかに予防が難しいことが分かります。
また、心疾患などは歯周病になることで起こりやすく、歯周病もまた全身の健康状態に悪影響を及ぼします。
4. 危機感を持つ人が少ない
歯周病が虫歯よりも予防が難しいのは、人の考え方も関係しています。
と言うのも、歯周病は虫歯に比べて軽視されやすい傾向があるからです。
人の心は読めないのであくまでこれは予想ですが、人が歯周病に危機感を持てない理由は2つ考えられます。
1つめの理由は、歯周病は高齢の人がなる病気というイメージが強いからです。
歯を失う、歯肉が退縮する…いずれも症状だけに注目すれば確かに高齢の人に起こるイメージですからね。
このイメージによって若い人は歯周病に危機感が持てず、予防を疎かにしてしまうのです。
もう1つの理由は、歯周病は虫歯のような痛みがないことです。
誰だって痛いのは嫌ですし、歯を削る虫歯治療は想像しただけで鳥肌が立つ人もいるでしょう。
だからこそ予防もしっかりと行いますし、見た目の意味も含めて自分の歯をチェックする人は多いのです。
一方歯周病にはそういった痛みはないですから、仮になっても平気だと軽視されてしまいがちです。
その甘さが歯周病予防を疎かにさせ、虫歯に比べて予防が不充分になってしまうのです。
こうした心理状態から、少なくとも生活習慣を改善するほど予防を徹底する人がそもそも少ないのです。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、虫歯と歯周病では予防が難しいのはどちらなのかについてまとめます。
- 自覚症状の差 :歯周病は虫歯に比べて自覚症状に乏しく、自分が歯周病であることに気付きにくい
<歯周病の自覚症状の例>
歯磨きや食事の時に歯肉か出血する :歯周病によって歯肉が炎症を起こすと出血しやすくなるため
口臭を感じる :歯周病菌が繁殖することで口臭がする。自分では口臭に気付きにくいのが難点
お口の中がネバつく :歯周病菌は唾液が混ざるとネバつく特徴があるため
歯が長くなって見える :歯周病によって歯肉が退縮して歯の根元が露出するので長くなって見える
歯がグラつく :分かりやすい自覚症状だが、ここまでになると歯周病は相当進行してしまっている - 日常生活が関わってくる問題 :お口の状態とは無関係に、ストレスや喫煙は歯周病になるリスクを高める
- 全身の健康状態が関わってくる問題 :糖尿病の人は歯周病になるリスクが高いと報告されている
- 危機感を持つ人が少ない :痛みのない歯周病は軽視されやすいため、徹底予防を心掛ける人が少ない
これらのことから、虫歯と歯周病では予防が難しいのはどちらなのかが分かります。
歯周病は自覚症状が乏しいことから気付きにくく、そのため進行させてしまう人が多いのが問題です。
さらに予防するには生活習慣の改善や全身の健康を良好に保つ必要があり、
単にお口を綺麗にするだけでは充分に予防できないのが歯周病予防の難しいところです。