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なぜ歯周病になると歯が抜けるのですか?
2017年05月01日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「なぜ歯周病になると歯が抜けるのか」です。
日本人が歯を失う要因のトップが歯周病であるように、歯周病になると最終的に歯を失います。
では、そもそもなぜ歯周病になると歯が抜けるのでしょうか?
歯周病とは歯の周りの病気…すなわち歯肉の病気であり、歯肉に炎症が起きるのが歯周病の症状です。
この点だけに注目すると歯と歯周病は無関係に思えますし、なぜ歯が抜けるのか疑問に感じるでしょう。
しかし実際には歯周病が進行すると歯が抜けてしまうわけで、
ここでは歯周病になると歯が抜ける理由について説明していきます。
痛みがないことで軽視されがちですが、歯周病は歯を失う要因になる怖い病気です。
目次
1. 歯槽骨について
身体には至るところに骨があり、それぞれの骨には名称がついています。
その一つが歯槽骨というのもで、これは上下の顎骨の部分を表します。
歯周病で歯を失うのは、この歯槽骨が関係してきます。
1-1. 歯周病で歯槽骨が溶かされる
歯周病が進行すると、歯周病菌によって顎の骨…すなわち歯槽骨が溶かされてしまいます。
歯槽骨にはそれぞれの歯が収まっており、言わば歯槽骨は歯を支える役割を果たしているのです。
歯周病によって歯槽骨が溶かされると、それを支えにしている歯は当然不安定な状態になります。
そうなると歯はグラつき、最終的に抜け落ちてしまうのです。
身近なもので例えるなら、歯周病で歯槽骨が溶かされることは家が土台を失うのに等しい状態です。
土台を失った家が崩れ落ちてしまうのと同じで、支えを失った歯は抜け落ちてしまうのです。
1-2. 自覚症状
歯槽骨が溶かされている様子を目で見ることはできませんが、
歯周病になって歯槽骨が溶かされることでいくつかの自覚症状が起こります。
逆に言えば、その自覚症状に気付いた時には歯周病になっている可能性が高いということになります。
では、歯周病が進行して歯槽骨が溶かされた際の自覚症状を以下で挙げてみます。
歯が長くなって見える
歯槽骨は歯肉に覆われているため、溶かされることで覆っている歯肉も合わせて退縮します。
つまり歯肉が下がってしまうわけで、それによって歯の根元が露出して歯が長くなってように見えます。
熱いものや冷たいものがしみる
歯肉が退縮して歯の根元が露出すると、熱いものや冷たいものの飲食でしみるようになります。
なぜなら歯の根元はエナメル質に覆われていないため、刺激に対して非常に敏感だからです。
歯がグラつく
歯槽骨が溶かされて不安定になった歯はグラつくようになります。
とは言え実際に歯を触る機会はないでしょうから、これに気付くのは食事の際などです。
…こうした自覚症状があった時には歯槽骨が溶かされている可能性が高く、
歯周病になっていてなおかつ進行していることが考えられます。
放置するとさらに症状が悪化するため、すぐに歯科医院に行って治療を受けてください。
2. 歯槽骨の再生方法
歯槽骨が溶かされることで歯は不安定になりますが、
歯周病を治療したからといって溶かされた歯槽骨が元に戻るわけではありません。
失った歯槽骨を再生させるには、歯周病治療とは全く別の治療が必要です。
もちろん歯周病は治療が必要ですが、歯槽骨の状態によってはそれとは別の治療を行って対処します。
2-1. エムドゲイン法
歯肉を切開してエムドゲインという歯槽骨を再生させる薬を埋める治療方法です。
ただしどんな場合にも有効というわけではなく、部分的に骨がなくなっている場合のみ有効です。
全体的に骨がなくなっている場合には行えないですし、溶かされた骨全てを再生できるわけではありません。
また、喫煙している人はほとんど効果が得られないですし、
糖尿病や骨粗しょう症の人には感染のリスクの問題上、エムドゲイン法を行うことはできません。
このため「誰にでもどんな場合でも再生できる」とはいえない治療方法です。
2-2. 骨移植
文字どおり骨を移植する治療方法で、お口の他の箇所の健康な骨を失った箇所に移植します。
人工の骨を移植することもありますが、この場合も最終的には自分の骨と置き換えることになります。
また、骨移植はインプラント治療を希望する時に必要となることもあります。
と言うのも、インプラント治療は顎の骨が不足していると行えないため、
その対処としてインプラント治療前に骨移植を行う場合もあるのです。
治療後は腫れや痛みなどが起こることもありますし、決してお手軽な治療ではありません。
…どちらの方法も大掛かりな治療になりますし、従来の歯科治療に比べて治療費も高くなります。
このため「歯槽骨を失っても再生できる」と安易に考えてしまうのは厳禁ですし、
これらの治療に頼ることなく歯周病自体を予防することを考えなければなりません。
3. 歯を失った後の対処
歯周病で歯が抜けてしまった場合、当然失った歯を再生させることはできません。
この場合の主な対処としてはインプラントか入れ歯であり、
これらはそれぞれ全く異なったメリットとデメリットを持っています。
3-1. インプラント
顎の骨に人工の歯の根を埋め込むことで、天然の歯同様の安定性を誇る治療方法です。
上部構造…すなわち人工の歯の部分も美しく、機能性も審美性も天然の歯に限りなく近くなります。
ただし治療費は高額で、費用は歯科医院ごとで異なるものの相場は1本30万円から45万円ほどです。
また、インプラント治療はどの歯科医院でも行っているわけではないため、
環境によっては治療を受けるための歯科医院探しも苦労するでしょう。
天然の歯に近い感覚を取り戻せますが、そこに至るまでの治療や通院は大きなものになります。
3-2. 入れ歯
入れ歯については説明不要かと思いますが、上記で紹介したインプラントとは全く逆の特徴を持っています。
発音のしづらさや噛む力を考えると機能性に優れているとはいえないですし、
外れてしまうケースを考えると決して見た目も良くありません。
このため機能性も審美性もインプラントに劣りますが、その分治療費が安いというメリットがあるのです。
つまり、インプラントに比べて安く簡単にできる治療であることがメリットであり、
インプラントに比べて機能性も審美性も劣っていることがデメリットというわけです。
4. 歯周病の予防方法
歯周病になると歯を失うことになり、その失った歯は取り戻すことはできません。
また、歯槽骨を再生させる方法にしても失った歯への対処にしてもその治療は大掛かりなものであり、
そう考えると歯周病予防がいかに必要か分かります。そんな歯周病の予防方法を説明します。
4-1. 歯磨き
歯周病予防の基本ですが、ただ何も考えずに歯を磨くだけでは高い予防効果は得られません。
何より精度の高い歯磨きが必要であり、ここでは歯磨きの精度を高める方法を挙げておきます。
デンタルフロスを使用する
歯ブラシだけではいくら丁寧に磨いてもプラークの除去率は6割ほどといわれていますが、
デンタルフロスを使用することでさらに2割高まる…つまりプラークの除去率が8割以上まで高まります。
ちなみに歯間ブラシを使うのも同様におすすめで、歯周病だけでなく虫歯予防にも効果的です。
プラークチェッカーを使用する
プラークを着色させるためもので、磨き残しを確実に防げます。
何日も使用すれば着色のパターンも分かってくるため、自分の歯磨きの弱点にも気付けます。
ちなみにプラークテスターとも呼ばれており、液体タイプだけでなく綿棒タイプのものも存在します。
4-2. 歯科医院で定期検診を受ける
歯科医院の定期検診ではお口をクリーニングできるため、歯磨きでは対応できない歯石の除去も可能です。
また、正しい歯磨きの指導を受けることでブラッシングの精度も高まりますし、
何より仮に歯周病があったとしても初期段階で発見できるため、大きな問題になる前に治療できるのです。
4-3. 家族全員で予防する
歯周病菌は唾液を介して人から人にうつります。歯周病が直接うつるわけではないものの、
歯周病菌がうつるのは確かです。そして、唾液を介す行為からはキスや食器の共用などが連想できるでしょう。
このため、家族や恋人など親しい関係の人全員で予防することが大切です。
と言うのも、例え自分一人が予防を徹底していても、
家族が歯周病予防を怠っていればその家族の誰かが持つ歯周病菌が自分にうつってしまうからです
正確にいえば、唾液を介す行為をする人同士全員で予防しなければ、
歯周病菌がうつる、うつされると事態を招くのです。
…特におすすめなのは歯科医院の定期検診です。
実際はこの定期検診と精度の高い歯磨きを実践していれば、歯周病は高い確率で防げます。
いかがでしたか?
最後に、なぜ歯周病になると歯が抜けるのかについてまとめます。
- 歯槽骨について
歯周病で歯槽骨が溶かされる :歯槽骨は歯を支える骨であり、歯周病になるとこれが溶かされる
自覚症状 :歯槽骨が溶けると「歯が長く見える」、「熱いものや冷たいものがしみる」などの症状がある - 歯槽骨の再生方法
エムドゲイン法 :歯肉を切開して歯槽骨を再生させる薬を入れる
骨移植 :健康な箇所の骨を失った骨の箇所に移植する - 歯を失った後の対処
インプラント :手術によって人工の歯の根を埋め込む治療。治療費が高い
入れ歯 :機能性や審美性は劣るが治療費が安いのでお手軽 - 歯周病の予防方法
歯磨き :デンタルフロスやプラークチェッカーを使用すると精度が高まる
歯科医院で定期検診を受ける :歯周病予防だけでなく早期発見できる
家族全員で予防する :歯周病は唾液を介して人にうつるため、家族や恋人同士で予防するべき
これらのことから、なぜ歯周病になると歯が抜けるのか分かります。
歯周病になると歯が抜けるのは、歯周病の進行によって歯を支えている歯槽骨が溶かされるからです。
将来歯を失わないためにも、歯周病は徹底予防してください。