BLOG
歯周病になると歯が長く見えると聞きましたが、それはなぜですか?
2017年05月15日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「歯周病になるとなぜ歯が長く見えるのか」です。
歯周病は虫歯に比べて自覚症状が少なく、そのため気付かない間に起きて進行するケースが多く見られます。
とは言え、全く自覚症状がないわけではなく、注意して見ていれば分かりやすい自覚症状もあるのです。
例えば「歯が長くなる」、これも歯周病も自覚症状の一つです。
さて、ここで疑問に思うのがなぜ歯周病になると歯が長くなるのかということです。
ここでは歯周病の自覚症状を一つのテーマにして、
その中でも歯周病になると歯が長く理由について説明していきます。
ちなみに、この自覚症状が見られる時には歯周病がある程度進行している証なので要注意です。
目次
1. 歯周病について知る
歯周病になると歯が長く見える、その理由を知るには歯周病の症状を知らなくてはなりません。
歯周病が歯を長くさせているわけではないですし、
だからと言って歯周病とその自覚症状が無関係なわけではありません。
では歯周病自体の症状と歯が長く見える理由、それを以下で説明していきます。
1-1. 歯周病は顎の骨を溶かす
そもそも歯周病はどんな症状が起こるのか?
歯が長く見えるのは、この歯周病によって起こる症状が深く関係してきます。
歯周病は歯周病菌によって歯肉に炎症が起きますが、進行することで徐々に歯槽骨が溶かされていきます。
歯槽骨というのは分かりやすく言えば顎の骨であり、顎の骨というのは歯を支える役割を持っています。
つまり歯周病が進行すると歯を支える骨が溶かされてしまうわけで、
支えを失った歯は不安定になってグラつき、やがて抜け落ちてしまうのです。
ここで注目してほしいのが「顎の骨が溶かされる」という点です。
歯周病によって起こるこの症状こそ、今回のテーマでもある「歯が長く見える」の理由に関わっているのです。
さて、「顎の骨が溶かされる」と「歯が長く見える」は一体どう関係しているのでしょうか。
1-2. 歯肉の退縮
歯周病によって顎の骨が溶かされるといいましたが、言うまでもなく顎の骨は目で見ることはできません。
なぜなら顎の骨は歯肉によって覆われているからで、顎の骨と歯肉は言わば一つのセットになっています。
このため、顎の骨が溶かされることでそれを覆っている歯肉も一緒に退縮していくのです。
具体的には顎の骨が溶かされることで歯肉も合わせて退縮し、その影響で歯肉が下がります。
そして歯肉が下がることで歯の根元が露出し、それによって歯は長くなって見えるのです。
これについてピンとこない人は、長袖の服から手を少しだけ出してみてください。
この時「服=歯肉」、「手=歯」に例えて考えてください。
今まさに歯周病が進行して歯肉が下がったとして、歯肉に例えた服の袖を少しずつ捲ってみてください。
袖を捲ったことで少しだけしか出ていなかった手…つまり歯はどんどん露出していきますね。
これは歯周病によって歯が長くなるメカニズムというわけです。
つまり「歯が長くなる」ではなく「歯が長くなって見える」というのが正確な表現であり、
それは歯肉が下がることで本来見えないはずの歯の根元が露出するからなのです。
2. 歯の根元が露出することの問題点
ここまでの説明で歯周病になるとなぜ歯が長くなるのか、その理由を分かっていただけたと思います。
さて、次に考えてほしいのがこうして歯が長くなる…正確には歯が長く見えてしまうことの問題点です。
歯が長くなって見えるのは歯の根元が露出しているからですが、この状態になると二つの問題点が生じます。
2-1. 見た目が悪くなる
問題点の一つは見た目の悪さです。細長く見える歯は見た目として悪く、
中にはそれがコンプレックスになってしまう人もいます。
歯を他人に見られたくないことで会話もしにくくなり、堂々と笑顔を見せることにも抵抗を感じてしまいます。
2-2. 熱いものや冷たいものがしみる
二つ目の問題点は歯の根元はエナメル質に覆われていないことです。
本来歯の表面はエナメル質で覆われており、これによって歯は刺激から守られています。
そもそも歯は刺激に対して非常に敏感なのですが、それを感じないのはエナメル質に覆われているからです。
例えば、虫歯治療で歯を削る時に痛みを感じることがありますが、
これはエナメル質に覆われていない歯の奥を削っていることが原因です。
さて、そんな歯を保護するエナメル質に覆われていない歯の根元が露出するとどうなるでしょうか。
エナメル質に覆われていない歯の根元は刺激に対して敏感ですから、
熱さや冷たさに対しても刺激を受けて「しみる」や「痛む」といった自覚症状をもたらします。
と言うことは、熱いものや冷たいものを飲食するとしみてしまうのです。
3. 下がった歯肉を元に戻す治療方法
歯周病になると歯が長くなるのは、歯周病によって歯肉が退縮して下がってしまうからです。
つまり、退縮した歯肉を戻すことができれば、歯の見た目は元通りの状態になるわけです。
ちなみにこの場合は何よりも歯周病治療が優先ですが、歯周病が治っても歯肉は元には戻りません。
歯肉を元通りの状態に戻すには、全く別の治療が必要になるのです。
3-1. 遊離歯肉移植術
簡単に言えば、健康な箇所の歯肉の一部を下がった歯肉の箇所に移植する治療方法です。
一時的に腫れや痛みが起こるものの、治療は一時間ほどで終わります。
完全に元通りとはいかない場合があるものの、見た目は歯肉が退縮した頃の状態よりも明らかに良くなります。
3-2. エムドゲイン法
溶けた骨や退縮した歯肉の再生を促す治療方法です。
特殊なタンパク質を埋め込むことで再生しやすい環境を作り上げますが、
どんな状態でもこの治療方法が利用できるわけではなく、費用も高額です。
3-3. 骨の再生
溶けてしまった骨を再生するための治療方法です。
この場合、健康な箇所の骨を溶けてしまった箇所に移植して行いますが、
人工の骨を使用する場合もあり、その際も最終的には自分の骨と置き換わることになります。
…どの方法も決してお手軽とは言えないですし、歯肉の切開なども必要な大掛かりな治療です。
また、状態次第では適用できない治療方法もあるため、
いくら歯肉を元に戻せるといっても軽く考えず、こうした状態にならないことが大切です。
4. 歯周病以外の歯肉の退縮の原因
歯が長くなる…つまり歯が長く見えるのは歯肉の退縮が原因ですが、
「歯肉が退縮する=歯周病」とは限りません。と言うのも、歯周病以外の理由で歯肉が退縮することもあり、
歯周病以外の原因についても説明しておきます。
4-1. 歯ぎしり
歯ぎしりの力というのは非常に強く、歯に揺さぶりをかけるほどの力が掛かります。
このため、この大きな力によって歯を支える骨が溶かされることもあるのです。
歯が溶かされれば歯肉も合わせて下がるため、この場合もやはり歯が長くなったように見えます。
4-2. 歯磨き
最初にいっておくと、歯磨きするのが悪いわけではありません。
ただ、あまり強く磨きすぎてしまうとそれによって歯肉がダメージを受けて下がってしまいます。
ちなみに歯科医院で正しい歯磨きの方法の指導も受けられますが、歯ブラシのチョイスも重要なポイントです。
4-3. 歯並びの悪さ
歯並びの悪さは見た目だけでなく、歯肉の退縮も招きます。
元々歯は顎の骨に埋まっていますし、顎の骨と歯の大きさが合わないと歯は顎の骨から押し出されます。
これによって歯肉が退縮しますし、歯並びが悪い人は加齢によって歯肉が下がりやすい傾向もあります。
5. 歯周病の予防方法
歯肉の退縮、さらには歯が抜けてしまうことから、歯を守るために絶対に歯周病を予防しなければなりません。
そんな歯周病の予防方法を説明しておきます。
まず基本は歯磨きですが、歯磨きの精度を高めるにデンタルフロスや歯間ブラシも使用しましょう。
また、歯科医院で定期検診を受けることで歯周病の進行を早める歯石を除去できますし、
仮に歯周病になったとしても歯肉が退縮していない初期段階で発見と治療が可能です。
もちろん、定期検診を受けること自体歯周病を予防する上で高い効果があります。
虫歯と歯周病では予防方法は同じですが、痛みがない分歯周病は軽視されがちな傾向があります。
しかし、今回説明したように歯が長く見える見た目の悪さ、歯の根元が露出することでのしみや痛み、
さらには歯が抜け落ちる事態を招くことから、決して軽く見てはいけない病気です。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、歯周病になるとなぜ歯が長く見えるのかについてまとめます。
- 歯周病について知る
歯周病は顎の骨を溶かす :歯周病は顎の骨を溶かしてしまう。この症状が、歯が長く見えるのに関わる
歯肉の退縮 :顎の骨は歯肉覆われており、顎の骨が溶けると歯肉も合わせて下がって歯が長く見える - 歯の根元が露出することの問題点
見た目が悪くなる :歯が長くなって見えることで、単純に見た目が悪くなる
熱いものや冷たいものがしみる :露出した歯の根元は刺激に敏感なので、熱さや冷たさで刺激を受ける - 下がった歯肉を元に戻す治療方法
遊離歯肉移植術 :健康な箇所の歯肉を下がってしまった箇所の歯肉に移植する治療方法
エムドゲイン法 :溶けた骨や退縮した歯肉が再生しやすくなる環境を作る治療方法
骨の再生 :健康な箇所の骨を溶けてしまった箇所の骨に移植する治療方法 - 歯周病以外の歯肉の退縮の原因
歯ぎしり :歯に揺さぶりをかけるほどの強い力によって、歯を支える骨が溶かされて歯肉が退縮する
歯磨き :歯磨きの力が強すぎると歯肉がダメージを受けて下がってしまう
歯並びの悪さ :歯並びが悪い人は加齢によって歯肉が下がりやすい傾向がある - 歯周病の予防方法 :デンタルフロスや歯間ブラシの使用、歯科医院で定期検診を受けるなど
これらのことから、歯周病になるとなぜ歯が長く見えるのかが分かります。
歯が長く見えるのは歯肉の退縮によって歯の根元が露出するからです。
これは見た目の悪さだけでなく、熱いものや冷たいものがしみる自覚症状を起こりますし、
何より歯周病がさらに進行すると歯を失ってしまうため、いち早く歯科医院で治療を受けてください。