BLOG
虫歯と歯周病の両方になってしまったら、どちらを先に治療するべきですか?
2017年06月19日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「虫歯と歯周病の治療の優先順位」です。
虫歯になったら虫歯治療が必要ですし、歯周病になったら歯周病治療が必要です。
では虫歯と歯周病の両方になってしまった時はどうするのか?…それが今回のテーマです。
もちろん最終的にはどちらも治療が必要ですが、虫歯治療と歯周病治療を同時に行うことはできません。
そうなると当然治療に優先順位が生まれてきますが、この場合はどちらの治療を優先するべきなのでしょうか。
目次
1. 基本的には歯周病治療が優先
虫歯と歯周病の両方の治療が必要な場合、基本的には歯周病治療を優先します。
これは当院の場合という意味ではなく、どの歯科医院においても同じです。
ちなみに、歯周病治療を優先する理由は家に例えるとよく分かります。
1-1. 歯周病治療を優先する理由
歯と歯肉を家に例えるなら、歯は家で歯肉は土台です。
歯という名の家は骨という名の柱によって固定されているわけです。
さてこの例のまま説明していくと、虫歯というのは言わば家が壊れた状態です。
壁に穴が開いて窓ガラスが割れ、破損してしまった家を修理するのが虫歯治療です。
ここで注目しなければならないのが、歯肉という名の土台の状態です。
知ってのとおり、家は土台がしっかりしているからこそ建っていられます。
もし土台がしっかりしていなければ、いくら綺麗な家でもすぐに崩れてしまいますからね。
このため、家と土台の両方が痛んでいる場合は当然その修理を優先する必要があるのです。
歯周病にかかった土台を修理して、地盤を安定させた上で虫歯にかかった家を修理するのです。
1-2. 虫歯治療を優先するケース
虫歯と歯周病の両方になった場合は基本的に歯周病治療を優先すると言いましたが、
「基本的に」という表現どおり例外もあり、場合によっては虫歯治療を優先するケースもあります。
そして、そのポイントになるのは虫歯の進行状況です。
例えば、虫歯が神経まで進行した場合は激痛を感じるため、
睡眠や仕事などの日常生活に大きな支障をもたらします。
この場合、患者さんの負担を軽減するため例外的に虫歯治療を優先することがあります。
また、虫歯は放置すると最終的に虫歯菌が身体中にまわってしまい、脳梗塞や心筋梗塞の引き金となります。
それを防ぐため、顎の骨にまで到達するほど進行している場合も虫歯治療を優先することがあるのです。
このため、虫歯の痛みが酷い時は虫歯治療を優先できないかを歯科医に相談するといいでしょう。
…このように、虫歯治療は歯肉という土台がしっかりしていることが前提で行えるため、
虫歯と歯周病の両方になった際には土台の安定を考えて歯周病治療を優先します。
しかし、あまりにも虫歯の痛みが酷い際には虫歯治療が先にできないかを歯科医に相談してください。
2. 虫歯治療を優先したらどうなるか
虫歯と歯周病の治療の優先順位は、上記のように家に例えるとよく分かります。
しかし例えはあくまで例え…実際には歯は家ではなく、歯肉は土台ではありません。
ではこの例えを無視して虫歯治療を優先すると、どんな問題が起こり得るのでしょうか。
2-1. 詰め物や被せ物に血液が混ざる
歯周病になると歯肉から出血しやすくなるため、その影響が虫歯治療の際にも出てきます。
虫歯治療では詰め物や被せ物で処置しますが、歯肉から出血することでこれらに血液が混ざります。
そうなると接着が弱まり、詰め物や被せ物が外れてしまう、もしくは隙間が生まれて二次虫歯を招きます。
2-2. 虫歯治療に危険が伴う
誰もが知っているとおり、虫歯治療では余程初期段階の虫歯を除いて歯を削って治療します。
この時、歯周病になっていることで土台である歯肉が揺れて不安定な状態にあります。
そうなると削る際に精度が落ちるだけでなく、頬などの粘膜を誤って傷つけてしまう危険性があるのです。
2-3. 被せ物が合わなくなる
歯周病が進行すると歯肉が退縮し、全体的に歯肉が下がってきます。
この影響を受けるのが被せ物です。虫歯治療を優先して被せ物で処置した場合、
歯周病の進行によって歯肉が退縮すると、被せ物が合わなくなって歯の根が露出してしまうのです。
2-4. 痛みがおさまるとは限らない
歯周病治療よりも虫歯治療を優先したい人は、「とりあえず痛みをおさめたい」というのが理由でしょう。
しかし、その痛みは虫歯ではなく歯周病が原因による知覚過敏の可能性もあるのです。
この場合痛みの原因は歯周病にあるわけですから、虫歯治療を優先しても痛みがそのまま続きます。
…これらの点から分かるとおり、歯周病治療を優先する理由は治療の安全性を高めることにあります。
歯周病になった歯肉はまさにぬかるんだ不安定な土台に等しく、虫歯治療に危険性を伴わせてしまうのです。
このため、余程の痛みでない限り歯周病治療を優先し、安全な土台を作った上で虫歯治療を行います。
3. 虫歯や歯周病を放置するとどうなるか
歯周病は虫歯に比べて軽視されがちです。確かに歯周病には虫歯のようなつらい痛みはないため、
単純に痛みの有無で比較してしまうと歯周病は軽視されるでしょう。
このため、虫歯の状態によっては例え歯周病を自覚していても、治療を受けずに放置する人がいるのです。
例えば、虫歯が進行して神経が死んでしまい、なおかつ歯周病を自覚している人にあり得るケースです。
既に神経が死んでしまったことで虫歯は痛まない、歯周病になっているけど痛くないから問題ない、
こうした理由から結果的に虫歯も歯周病も治療しない人がいるのです。
これは絶対にやってはいけない厳禁行為であり、
このように虫歯も歯周病も放置した場合、一体どんな問題が起こってしまうのかを説明します。
3-1. 虫歯を放置した場合
虫歯は治療しない限り進行し続けます。神経に進行すると激痛を感じるようになり、
ここでもさらに放置するとやがて神経は死んでしまいます。
神経が死んだことで痛みはなくなりますが、痛くないからといって放置するとさらに怖い症状が起こります。
と言うのも、虫歯菌が血液に侵入してしまうのです。そうなると血管を通じて全身にまわってしまい、
虫歯菌が脳に侵入すれば脳梗塞、心臓に侵入すれば心筋梗塞を引き起こす危険性があるのです。
ケースとしては稀ですが、事実こうした状態に陥って死に至って事例もあるのです。
3-2. 歯周病を放置した場合
歯周病も虫歯同様に治療しない限り進行し続けます。初期段階では歯肉が腫れて変色する程度ですし、
痛みもないのでこの時点では気付くことすら難しいでしょう。
しかし進行すると歯を支える歯槽骨が溶かされていき、それによって歯がグラつくようになります。
そうなるといずれ歯は完全に支えを失って抜け落ちてしまうのです。
実際に日本人が歯を失う要因として最も多いのがこの歯周病であり、
歯周病を放置すれば若くても歯を失う危険性があるのです。
…このように、虫歯を放置すれば命にかかわる病気を引き起こすことがありますし、
歯周病を放置すれば最終的に歯が抜け落ちてしまい、失った歯は取り戻すことができません。
虫歯と歯周病の両方になった場合はもちろん、どちらか一方だけなった場合も必ず治療が必要です。
4. 虫歯と歯周病の予防方法
虫歯と歯周病を放置した場合の症状の説明から、その怖さが分かったと思います。
そして、怖さが分かった今誰もが真っ先に考えるのが、虫歯と歯周病をどうやって予防するかです。
そこで、まとめとして虫歯と歯周病をどうやって予防していけばいいのかを説明します。
4-1. 精度の高い歯磨きをする
虫歯と歯周病、それぞれを引き起こす細菌の種類は違うものの、どちらの細菌もプラークの中に潜んでいます。
つまりプラークを除去することが虫歯と歯周病予防において必須であり、そのための基本は歯磨きです。
最も、予防するには精度の高い歯磨きが必要なので、ブラッシングだけでは不充分でしょう。
歯磨き時はデンタルフロスや歯間ブラシを使用して、ブラッシングでは磨きにくい箇所も綺麗にしましょう。
4-2. 定期検診を受ける
定期検診ではお口のクリーニングを行うので、お口に溜まったプラークや歯石を綺麗に除去できます。
また、お口の状態をチェックすることで虫歯や歯周病をいち早く発見でき、
どちらか一方、もしくは虫歯と歯周病の両方になっていても進行前の段階で治療が可能です。
さらにブラッシング指導も受けられるため、それによって歯磨きの精度を高めることができるのです。
…精度の高い歯磨きと定期検診を心掛けていれば、虫歯や歯周病は大抵予防できます。
また、身体の免疫力を高めるために生活習慣を改善するのも予防に効果的です。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、虫歯と歯周病の治療の優先順位についてまとめます。
1. 基本的には歯周病治療が優先 :どの歯科医院でも、基本的には歯周病治療を優先して行う
歯周病治療を優先する理由 :歯周病を治して歯肉を安定させないと、虫歯治療に支障が出る
虫歯治療を優先するケース :虫歯の痛みがあまりにも酷い場合は、先に虫歯治療を行うこともある
2. 虫歯治療を優先したらどうなるか :虫歯治療を優先してしまうと、治療において様々な問題が起こる
詰め物や被せ物に血液が混ざる :歯肉からの出血で詰め物や被せ物に血液が混ざり、接着が弱まる
虫歯治療に危険が伴う :歯肉が揺れて治療の精度が落ち、頬などの粘膜を傷つけてしまう恐れがある
被せ物が合わなくなる :虫歯治療後に歯肉が退縮することで、被せ物がピッタリ合わなくなってしまう
痛みがおさまるとは限らない :歯周病の知覚過敏で痛む場合は、虫歯治療をしても痛みはおさまらない
3. 虫歯や歯周病を放置するとどうなるか :虫歯にしても歯周病にしても、治療せずに放置するのは厳禁
虫歯を放置した場合 :虫歯菌が全身回って脳梗塞や心筋梗塞を起こす恐れがある
歯周病を放置した場合 :歯を支えている歯槽骨が溶かされ、歯が抜け落ちてしまう
4. 虫歯と歯周病の予防方法 :虫歯と歯周病の予防方法は同じ
精度の高い歯磨きをする :ブラッシングだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシも使用する
定期検診を受ける :予防効果が高まるだけでなく、虫歯や歯周病になった場合も早期発見できる
これらのことから、虫歯と歯周病の治療の優先順位が分かります。
虫歯と歯周病の治療では、基本的に歯周病治療が優先されます。
虫歯治療を安全に行うには歯肉が安定していることが前提であるため、
歯周病によってその前提が満たされていない時はまず歯周病治療を行って歯肉を治す必要があるのです。