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小学生の子供でも歯周病になる可能性はありますか?
2017年07月21日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「小学生の子供が歯周病になる可能性」です。
歯周病は進行すると歯が抜け落ちてしまうため、その症状から高齢の人がかかる病気のイメージがあります。
しかし、結論から言えばそれは単なるイメージにしか過ぎません。
歯周病はプラークに潜む歯周病菌に感染することで起こり、そこに年齢は関係ないのです。
確かに、小学生の子供が歯周病を進行させて歯を失ってしまうことはまずないでしょうが、
歯周病自体にかかる可能性は充分にあり、小学生の歯周病は決して珍しいことではありません。
ここでは、小学生と歯周病をテーマにしたお話をしていきます。
目次
1. 歯肉炎について
小学校の歯科検診で歯肉炎と診断された経験のある人がいると思いますが、これは歯周病とイコールです。
歯周病は進行に応じて初期段階と中期段階と重度段階の3段階に分けられており、
以前は初期段階の歯周病のことを歯肉炎と呼んでいたのです。
ちなみに中期段階の歯周病は歯周炎、重度段階の歯周病は歯槽膿漏と呼ばれており、
歯周病という名前を使わずそれぞれ歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏と呼んでいたのです。
これが最近では全てひっくるめて歯周病と呼ぶようになったのです。
そして、今でも以前の呼び名…つまり歯肉炎や歯周炎や歯槽膿漏と表現することもあり、
小学校の歯科検診で歯肉炎と診断されたら、それは初期段階の歯周病ということになるのです。
確かに、小学生で歯周炎や歯槽膿漏になってしまうことはまずありません。
しかし、初期段階の歯周病である歯肉炎になってしまうことはあるのです。
1-1. 歯周病で歯槽骨が溶かされる
歯周病が進行すると、歯周病菌によって顎の骨…すなわち歯槽骨が溶かされてしまいます。
歯槽骨にはそれぞれの歯が収まっており、言わば歯槽骨は歯を支える役割を果たしているのです。
歯周病によって歯槽骨が溶かされると、それを支えにしている歯は当然不安定な状態になります。
そうなると歯はグラつき、最終的に抜け落ちてしまうのです。
身近なもので例えるなら、歯周病で歯槽骨が溶かされることは家が土台を失うのに等しい状態です。
土台を失った家が崩れ落ちてしまうのと同じで、支えを失った歯は抜け落ちてしまうのです。
2. 歯周病の低年齢化
近年では歯周病の低年齢化が問題視されており、厚生労働省の報告による過去のデータでは、
5歳~9歳のおよそ4割が歯肉に何らかの異状を持っているとされています。
また、10歳~15歳においてもおよそ5割が同じく歯肉に何らかの異状を抱えていることが分かっています。
20歳~30歳の成人に至っては、むしろ歯周病を持っていることが当然であるかのような数値になっており、
以前に比べると歯周病はどんどん低年齢化しており、もはや国民の病気とまで言われるようになっています。
さて、このように歯周病が低年齢化しているのはなぜなのでしょうか。
糖の過剰な摂取
今ではコンビニに行けば簡単にお菓子が手に入りますし、その種類も豊富です。
ガムや駄菓子に至っては子供のお小遣いでも簡単に購入できますし、
歩いて行ける箇所に何軒もコンビニが立ち並んでいます。
このため、子供がお菓子を食べる機会が以前に比べて格段に増えているのです。
そしてお菓子には糖が含まれており、この糖の摂取によってプラークが増殖してしまうのです。
糖の過剰な摂取は虫歯のリスクを高めますが、歯周病においても同じことが言えます。
お菓子を食べる機会が増えるということは糖を摂取する機会が増えるということになり、
糖を摂取する機会が増えるということは歯周病になるリスクが高まるということになるのです。
このように、依然に比べて糖を摂取しやすい環境であることが歯周病の低年齢化の理由の一つです。
親から子への感染
歯周病は歯周病菌という細菌に感染することで起こる、言わば感染症の一種です。
つまり、風邪と同じで人から人にうつってしまい、その感染経路は唾液です。
食器の共用、歯ブラシの接触、キス、これらの唾液を介す行為によって歯周病菌はうつってしまうのです。
いずれも親子でする行為ですし、成人の歯周病が当たり前の状況になっている以上、
親が歯周病を持っている可能性は高いことが予想できるでしょう。
いくら子供の予防を徹底していても親自身が予防を疎かにすることで、歯周病菌がうつってしまうのです。
ただしこの場合、歯周病が直接うつるわけではなく歯周病菌がうつるというのが正しい表現です。
このため、仮に親が歯槽膿漏であったとしても子供に歯槽膿漏がうつってしまうことはありません。
しかし、歯槽膿漏を引き起こしている歯周病菌は子供のお口の中に入ってしまい、
歯周病にかかるリスクを生んでしまうのです。
疲労やストレス
歯周病になると歯を失うことになり、その失った歯は取り戻すことはできません。
また、歯槽骨を再生させる方法にしても失った歯への対処にしてもその治療は大掛かりなものであり、
そう考えると歯周病予防がいかに必要か分かります。そんな歯周病の予防方法を説明します。
こうした疲労やストレスは身体の免疫力を低下させる要因になり、
免疫力低下によって細菌にも感染しやすくなるのです。
歯周病も細菌に感染することで起こる病気ですから、免疫力低下は歯周病になるリスクを高めます。
…糖の摂取の機会が多いことによるプラークの増殖、
親が歯周病になっている可能性が高いことによる子供への感染、子供の疲労やストレス、
こうした理由から歯周病は低年齢化しつつあるのです。
3. 子供の歯周病を予防するには
子供でも歯周病になる以上、親は子供の歯周病を徹底予防してあげなければなりません。
ではどうやって歯周病を予防するかですが、歯周病の予防方法と虫歯と全く同じです。
毎日の歯磨き、食生活の注意、歯科医院の検診、この3つが予防の基本です。
さて、3つの予防方法は大人の歯周病予防の方法と変わらないですが、
子供の場合はそれぞれにおいて注意してあげなければならないことがあります。
まず毎日の歯磨きですが、子供は大人に比べて歯磨きの技術が未熟です。
特に小さな子供は歯周病の怖さを知らないことで、歯磨きを適当に行ってしまうことも多いでしょう。
このため、小さな子供の場合は親がしっかりと仕上げをして歯磨きの大切さを教えてあげなければなりません。
次に食生活、これは上記でも説明したように糖の摂取に注意してあげることです。
子供はお菓子やジュースが大好きですし甘いものを好んで食べますから、
おやつの時間はきちんと決めて糖の過剰な摂取に注意してあげてください。
そして、定期的に検診に連れていってお口の中にプラークや歯石をためないようにしてあげましょう。
4. 歯肉炎の問題点
子供でも歯周病になりますが、あくまでそれは歯肉炎…つまり初期段階の歯周病であることがほとんどです。
代謝が盛んな子供は歯周病が進行することは稀であり、歯周炎や歯槽膿漏になることはまずないでしょう。
とは言え、歯肉炎にも充分注意する必要がありますし、歯肉炎には厄介な問題があるのです。
それは、自覚症状がほとんどないことです。
子供が虫歯になった時、歯が痛むことで子供は虫歯を自覚しますが、
歯肉炎の場合は歯肉の変色くらいしか症状が見られないため、気付くことが難しいのです
つまり、いつの間にか歯肉炎になっていることがほとんどで、
気付かないまま放置してしまえばいずれ悪化してしまうでしょう。
こうした状況に陥らないためには、歯科医院で検診を受けることです。
検診自体、お口のクリーニングやブラッシング指導によって歯周病を予防できますし、
仮に歯周病になっていたとしてもお口の状態をチェックすることで確実に気付けます。
このように、歯肉炎は目立った自覚症状がなくて辛くない反面、気付きにくい特徴があるのです。
5. 歯周病かどうかを知るための自己診断
これは子供に限ったことではなく、大人にも有効なアドバイスです。
歯肉炎、つまり初期段階の歯周病になっていないかを知るための自己診断の方法をお伝えします。
食事や歯磨きの際に出血する
歯肉炎になると歯肉が腫れ、刺激を受けることで出血しやすくなります。
このため、食事や歯磨きの際に歯肉から出血するようになるのです。
たまたま歯肉を傷つけてしまった可能性もありますが、出血の頻度が高い場合は疑ってみるべきです。
口臭がする
歯肉炎になるとお口の中で歯周病菌が増殖するため、その影響で口臭を感じるようになります。
口臭は自分では気付きにくいですし、周囲が気付いてもそれを指摘する人もいないでしょう。
このため、子供から口臭がしたら歯肉炎の可能性があるのです。
…中期段階になると「歯が長く見える」などの自覚症状もありますが、
子供の場合はそこまで進行することはまずありません。
歯肉の腫れや変色に加え、このように歯肉からの出血や口臭の有無で自己診断できます。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、小学生の子供が歯周病になる可能性についてまとめます。
1. 歯肉炎について :歯肉炎は初期段階の歯周病とイコール。中期段階は歯周炎で重度段階は歯槽膿漏
2. 歯周病の低年齢化 :5~9歳の約4割、10歳~15歳の約5割が歯肉に何らかの異状を持っている
糖の過剰な摂取 :お菓子が簡単に手に入ることで、糖を過剰に摂取する子供が増えている
親から子への感染 :歯周病菌は唾液を介して人から人にうつるため、親の歯周病菌がうつることがある
疲労やストレス :子供でも疲労やストレスを抱えることがあり、これによって歯周病菌に感染しやすくなる
3. 子供の歯周病を予防するには :小さな子供は歯磨きを上手にできないため、親が仕上げをしてあげる
4. 歯肉炎の問題点 :痛みのような自覚症状がないため、子供が歯肉炎になっても気付きにくい
5. 歯周病かどうかを知るための自己診断 :歯肉炎になっているかを判断するための自己診断がある
食事や歯磨きの際に出血する :歯肉炎になると食事や歯磨きで出血しやすくなる
口臭がする :歯肉炎になると歯周病菌が増殖するため、その影響で口臭がするようになる
これらのことから、小学生の子供が歯周病になる可能性が分かります。
歯がグラつく、抜けるほどの症状に至ることはまずないものの、小学生の子供でも歯肉炎にはなります。
そして歯肉炎は初期段階の歯周病とイコールである以上、小学生の子供でも歯周病になると言えるのです。
歯肉炎には痛みはないですから、虫歯に比べて軽い症状に思えるかもしれません。
しかし、将来自分の歯を守るためには虫歯同様に歯周病も予防しなければなりません。
小学生の子供でも歯周病になる…まずはこの事実に対して危機感を持ちましょう。