BLOG
歯周病の自覚症状と、なぜその症状が起こるのかを分かりやすく教えてください
2017年07月30日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「歯周病の自覚症状の説明」です。
歯周病にはいくつか自覚症状がありますが、それぞれの自覚症状は全く異なったものになります。
例えば、虫歯の場合の自覚症状は「痛み」であり、虫歯の進行に比例して痛みは増していきます。
しかし、歯周病の場合は虫歯の自覚症状と違って複数の自覚症状があるのです。
ここで疑問となるのが、なぜそういった様々な自覚症状が起こるのかということです。
そこで、ここでは歯周病の自覚症状をお伝えし、
それぞれの自覚症状に対してなぜその症状が起こるのかを説明していきます。
目次
1. 歯肉の腫れや変色
歯周病になると、歯肉に腫れや変色が起こります。
これは初期段階の歯周病に起こる症状で、腫れや変色による痛みはありません。
このため、実際には腫れや変色に気付かないケースが多いです。
この症状が起こる理由
これは、歯周病によって歯肉が炎症を起こしているのが理由です。
また、初期段階の歯周病では、歯周病菌が中に入ってこないように身体が歯周病菌と戦おうとします。
免疫細胞を含んだ血液が集結し、歯周病菌を駆除しようとするのです。
血液が集結することで歯肉が赤く変色しますし、
普段よりも血液が多く集まっていることで、刺激を受けることで出血してしまうのです。
2. 口臭
歯周病になると、口臭がするようになります。とは言え、自分で自分の口臭には気付きにくいですし、
他人がそれに気づいても口臭を指摘する人はまずいないでしょう。ですから口臭の有無を確認するには
、
デンタルフロスを使用した時のデンタルフロスの臭いなどが参考になります。
この症状が起こる理由
歯周病で口臭がするようになる理由は2つあります。1つは細菌の影響で、
歯周病になることでお口の中で歯周病菌が繁殖して、それが口臭を招いているのです。
もう1つは歯周病による膿みです。歯周病になると歯肉が腫れたり変色したりしますが、
これが悪化すると膿みが出るようになり、お口の中にある膿みが口臭の原因になっているのです。
歯周ポケットが深くなるほど細菌も溜まるため、歯周病が進行すればその分口臭もきつくなります。
3. 歯がグラつく
歯周病が中期段階まで進行すると、歯がグラつくようになります。
常にグラグラしているわけではないですが、指で触れた時や噛んだ時に歯が動く感触があります。
ここまでの状態になってしまうと、治療において歯肉の切開が必要になる可能性もあります。
この症状が起こる理由
歯周病が進行すると、歯槽骨という顎の骨を溶かしてしまいます。
歯槽骨は歯を支える役割を担っており、言わば歯にとっての土台です。
これが溶かされてしまうということは、歯が土台を失うということになります。
土台を失った歯は不安定になってしまい、触れただけでグラつくようになってしまうのです。
このまま放置すると歯槽骨はさらに溶かされ、やがて歯は完全に支えを失って抜け落ちてしまいます。
4. 歯が長くなって見える
歯周病になると、歯が長くなったように見えます。これは中期段階になると見られる自覚症状ですから、
歯が長くなって見えるのであれば歯周病がある程度進行していると考えるべきです。
ただ、実質歯が長くなることはないため、こうやって見えるのにはきちんとした理由があります。
この症状が起こる理由
歯周病が進行すると歯槽骨が溶かされていきますが、それに合わせて歯肉が退縮していきます。
つまり、歯肉が徐々に下がっているのです。歯肉が下がることで歯の根元が露出し、
その結果一見歯が長くなったように見えるのです。
ちなみに、一度下がった歯肉は歯周病が完治しても元に戻らない可能性があります。
歯槽骨がどれくらい溶かされているかがポイントになるため、いち早く治療を受けることが大切です。
5. 冷たいものや熱いものがしみる
冷たいものや熱いものがしみる…これは一見虫歯の自覚症状に思えますが、
歯周病の場合も全く同じ自覚症状が起こります。
さらに言うなら、歯周病でこの自覚症状があった時はある程度歯周病が進行してしまっていることになります。
この症状が起こる理由
これは上記で説明した「歯肉の退縮」が関係してきます。歯肉が退縮することで歯の根元が露出しますが、
歯の根元というのはエナメル質に覆われておらず、刺激に対して非常に敏感です。
本来歯の根元には歯肉が被さっているため、冷たさや熱さで刺激を感じてしまうことはありません。
しかし歯周病が進行して歯の根元が露出することで、冷たさや熱さで刺激を感じてしまうのです。
つまり、冷たいものや熱いものが歯の根元に触れることになるため、しみや痛みを感じてしまうのです。
6. 歯並びが悪くなる
これは下の前歯に起こりやすい症状です。
例え歯並びが良い人でも、歯周病になると歯並びが悪くなってしまいます。
酷い場合は歯が重なりあってしまうこともあり、一度悪くなった歯並びは矯正でしか治せません。
この症状が起こる理由
歯周病になると歯槽骨が溶かされ、歯がグラつくようになります。
つまり歯が動いてしまうことになり、それによって歯並びが悪くなってしまうのです。
例えるなら、土台を失った家の柱が傾いてしまうのと全く同じ状態です。
また、歯並びが悪くなることで歯磨きもしづらくなり、細菌もより溜まりやすくなってしまいます。
そうなると、当然歯周病がさらに悪化してしまいます。
7. 歯周病の治療方法
上記の症状が確認できた時は、歯周病である可能性が高いでしょう。
すぐに歯科医院に行って治療を受けるべきですが、
歯周病の治療は虫歯の治療と比べてあまり分からないという人も多いですよね。
そこで、歯周病の際には実際にどんな治療を行うのかを説明します。
7-1. スケーリング
歯の周りに付着した歯石を除去する治療です。歯石は元々プラークが石灰化したものなのですが、
一旦歯石になると歯磨きでは除去できない上、歯周病を悪化させる要因にもなります。
このため、専用の器具で歯石を丁寧に除去していきます。
7-2. プラークコントロール
デンタルフロスを使用するなどの精度の高い歯磨きで、プラークの付着を防ぐ治療です。
治療とはいっても、プラークコントロールは患者さん自身で行うものです。
歯周病治療においてプラークコントロールは重要で、これができないと治療の効果が失われてしまいます。
7-3. 歯周外科手術
手術内容は歯肉の切開で、目的は歯周ポケット内のクリーニングです。
本来、歯周ポケット内の清掃は手術することなく行えますが、
歯周病が進行して歯周ポケットが深くなると、外側からクリーニングできなくなってしまいます。
こうした場合に歯肉の切開を行い、そこから歯周ポケット内の清掃を行います。
7-4. 骨の再生療法
溶かされた歯槽骨を再生させるための治療ですが、この治療にはいくつか欠点があります。
まずこの治療を行っている歯科医院が限られることで、全ての歯科医院で受けられる治療ではありません。
また、再生できる量や症例も限定されるため、今までどおりの状態に完全に戻すことは困難です。
7-5. メンテナンス
歯周病治療の中で最も重要であるものの、最も疎かにする人が多いのがメンテナンスです。
歯周病がある程度完治の状態まで来たとして、それで治療が終わりというわけではありません。
現状を維持するために定期的に通院し、メンテナンスを行う必要があるのです。
歯周病が一応治ったということでメンテナンスを疎かにする人が多いですが、
メンテナンスを怠ると今までの治療の成果が全て失われる可能性もあります。
…歯周病治療にはこれらの方法があり、実際に行う治療内容は歯周病の進行状況によって異なります。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、歯周病の自覚症状の説明についてまとめます。
1. 歯肉の腫れや変色 :痛みはないため、気付かないケースも多い
この症状が起こる理由 :歯肉が炎症を起こしているためで、歯磨きなどの際に出血もしやすくなる
2. 口臭 :自分では気付きにくいが、デンタルフロスの臭いなどから判断できる
この症状が起こる理由 :お口の中で細菌が増殖していることや、歯肉から出た膿みなどが原因
3. 歯がグラつく :触った時や食事で噛む時に、歯が動く感じがする
この症状が起こる理由 :歯を支えている歯槽骨が溶かされることで、支えを失った歯が不安定になる
4. 歯が長くなって見える :特定の歯が長くなったように見える
この症状が起こる理由 :歯肉が退縮して下がるため、歯の根元が露出して歯が長くなったように見える
5. 冷たいものや熱いものがしみる :虫歯にも同じ自覚症状がある。歯周病も進行するとこの症状が起こる
この症状が起こる理由 :露出した歯の根元はエナメル質に覆われていないため、刺激に敏感に反応する
6. 歯並びが悪くなる :歯並びが悪くなれば歯磨きもしづらくなり、より細菌が溜まってしまう
この症状が起こる理由 :歯槽骨が溶かされて歯が動くことで、歯並びが悪くなってしまう
7. 歯周病の治療方法 :進行度に応じて治療内容は異なる
スケーリング :歯石の除去。歯石は歯磨きでは除去できない上、歯周病悪化の要因になる
プラークコントロール :患者さん自身が行うもので、プラークを付着させないための歯磨きなど
歯周外科手術 :歯周ポケットが深すぎる場合、歯肉を切開して歯周ポケット内を清掃する
骨の再生療法 :溶かされた骨を再生させられるが、症例や量に限界があるので万能ではない
メンテナンス :最も重要だが最も疎かになりやすい。治療効果を維持するために必要
これらのことから、歯周病の自覚症状の説明が分かります。
自覚症状の中には含めませんでしたが、最終的な自覚症状は歯が抜けることです。
実際に日本人が歯を失う要因としては歯周病が最も多く、その意味でも深刻な病気です。
さらに初期段階では目立った自覚症状がないため、いつの間にか進行しやすいのも厄介な問題です。
このため、日頃から歯科医院で定期検診を受ける習慣をつけて、歯周病を徹底予防してください。