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歯周病ですが痛みなど全くないですし、歯周病がなぜ怖い病気なのか分かりません
2017年09月08日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。今回のテーマは「歯周病の怖さ」です。残念ながら現状歯周病を軽視する方が多く、その影響で日本人の成人の7割が歯周病とも言われています。
ではなぜ歯周病は軽視されるのか?…その理由は「痛みのなさ」だと考えられます。みなさんが虫歯を恐れるのは、「歯を失うから」というよりは「痛むから」ではないでしょうか。だからこそ、痛みのない歯周病は怖くない病気と認識されてしまうのです。
しかし、歯科医として意見するなら歯周病はむしろ痛くないからこそ怖いのです。なぜなら痛みという自覚症状がなければ自分が歯周病だと気付けず、気付いた時には重症化してしまうからです。
目次
1. 歯周病が進行すると歯を失う
歯周病が進行すると最終的に歯を失います。これは虫歯のように歯に穴があくという意味ではく、歯そのものが抜け落ちてしまうのです。抜けた歯は元に戻すことは不可能で、抜けている以上詰め物や被せ物で対処することもできません。
では、歯周病が進行するとなぜ歯が抜けるのかを説明していきます。歯周病になると歯肉が炎症を起こして出血しやすくなりますが、あくまでそれは初期段階の症状です。進行することでさらに別の症状が起こり、具体的には歯槽骨を溶かしてしまうのです。
歯槽骨とは顎の骨であり、同時に歯を支えている骨でもあります。家で例えるなら歯は家であり、歯槽骨は家が建っている土台に等しい存在です。土台…つまり歯槽骨が溶かされることで歯は土台を失い、やがて抜け落ちてしまうのです。
ちなみに、歯槽膿漏という病名を聞いたことのある方も多いでしょうが、歯槽骨が膿みを漏らすと書く歯槽膿漏は、実は重度の歯周病とイコールでもあります。
2. 歯周病が進行すると辛い治療が必要になる
歯周病の治療内容は患者さんによるプラークコントロールに加え、歯科医院で行うクリーニングが基本です。つまり虫歯治療のように歯を削ることもないため、それもまた歯周病が軽視される理由の1つになっています。確かに、プラークコントロールもお口のクリーニングも苦痛はありません。
しかしそれはあくまで初期段階の歯周病治療であり、進行することで治療内容は大きく変わります。治療時には歯と歯肉の境目である歯周ポケットの溝を清掃する必要がありますが、歯周病が進行するとこの溝が深くなり、外側から清掃できなくなるのです。
こうした場合はフラップ手術を行い、歯肉を切開してそこから歯周ポケット内の清掃を行います。また、重度段階まで進行している場合は状態によって治療不可と診断され、抜歯せざるを得なくなります。このように、進行することで手術や抜歯といった辛い治療をしなければならなくなるのです。
3. 歯を失った後の対処方法
歯周病が進行すると歯が抜け落ちてしまいますが、その後の対処方法も簡単ではありません。1つの方法として入れ歯がありますが、そもそも入れ歯をすることに抵抗を感じる方もいるでしょうし、入れ歯の咬合力…つまり噛む力は天然の歯の1/3ほどになるため、今までと同じ食生活は送れません。
食生活で不便さをなくすならインプラントという方法がありますが、人工の歯の根を埋め込むインプラントは治療費が高く、相場として1本30万円以上もするのです。さらに治療の過程で手術も必要になるため、とてもお手軽な治療とは言えません。
入れ歯とインプラント…この2つを比較して、どちらがいいかを即答するのは難しいと思いますし、どちらもやりたくないというのが自然の答えでしょう。しかし歯周病が進行するとやがて歯が抜け落ちるため、その時はどちらかの治療が必要になってしまうのです。
4. 歯周病は全身の健康にも害をもたらす
歯周病は歯肉の病気ですが、その被害を受けるのは歯肉や歯だけではありません。身体全体…つまり全身の健康にも害をもたらし、時には命にかかわる病気を招くこともあるのです。では実際にどんな害をもたらすのか?…以下でそれを説明していきます。
脳梗塞・心筋梗塞
歯周病菌が血液の中に侵入し、血管に入り込むことで起こり得ます。歯周病菌が血管の中に入り込むと血管内に血栓を作りやすくなり、その影響で脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすリスクが発生します。
糖尿病
以前から歯周病と糖尿病の関係は指摘されており、歯周病になると糖尿病を引き起こしやすくなるのです。逆に糖尿病になると歯周病が重症化しやすくなる傾向があります。
誤嚥性肺炎
老化現象によって反射機能が衰えることで起こり得ます。唾液と一緒に歯周病菌が肺に入り込んでしまい、そうなると深刻な肺炎を引き起こすことがあります。
…これら以外にも、歯周病の進行によって胃がんなどの消化器系疾患、関節リウマチなどを起こす可能性が指摘されています。
5. 妊娠中の女性へのリスク
妊娠中の女性が歯周病になると、早産や低体重児を出産するリスクが高まります。しかしそのリスクは7倍ほど高まるとされており、本人だけでなくお腹の赤ちゃんにも影響するのです。また、妊娠中の女性は悪阻の辛さがお口の中のケアが不充分になりやすいので要注意です。
さらに歯周病菌の中には女性ホルモンをエネルギー源としているものもあるため、
妊娠して女性ホルモンの分泌が過剰になることで歯周病にかかりやすくなるのです。
このため、妊娠中は歯周病の進行に注意するだけでなく、歯周病そのものの予防も大切です。
6. 歯周病の予防方法
上記の説明で歯周病の怖さを分かっていただけたかと思いますが、
そうなるとポイントになってくるのはどうやって予防するか?…すなわち歯周病の予防方法です。
歯周病を予防するには、以下の3つのことを実践しましょう。
歯磨きの精度を高める
歯周病菌はプラークの中に存在するため、それを除去するための歯磨きが予防の基本です。
ただし、歯周病予防の歯磨きにおいて重要なのは歯磨きの回数よりも精密さです。
例えば1日3回歯磨きしたとしても、それが適当な磨き方なら高い予防効果はありません。
一方1日1回しか歯磨きしなかったとしても、確実にプラークを除去できれば歯周病を予防できるのです。
ではどうやって歯磨きの精度を高めるかですが、最も効果的なのはデンタルフロスを使用することです。
さらにプラークテスターの使用やブラッシング指導を受けるなどの方法で歯磨きの精度は高まります。
定期検診を受ける
定期検診ではお口の中をクリーニングし、歯磨きで落とせない歯石まで除去できます。
歯石は歯周病になるリスクを高めるだけでなく進行を早める要因になるため、
それを除去できるクリーニングは大きな効果があります。
また、定期検診を受けることで歯科医がお口の状態を確認するため、
自覚症状のない初期段階の歯周病も発見できます。
早期発見することで早期治療ができるため、例え歯周病になっても重症化することがなくなります。
生活習慣を見直す
歯周病は生活習慣病とも言われており、文字どおり日常生活の過ごし方次第で予防可能です。
ポイントは身体の免疫力を高めることで、これは歯周病が細菌による感染症だからです。
身体の免疫力が高まれば細菌に感染しにくくなり、歯周病を予防しやすくなるのです。
そのためにはまず疲労やストレスの蓄積を防ぎ、
栄養バランスのとれた食生活で身体の免疫力を高めることが大切です。
また、喫煙しているとそれだけで歯周病にかかるリスクが高まり、さらに重症化しやすくなってしまいます。
7. 歯周病は若くてもかかる
歯が抜けるという歯周病の症状から、
歯周病は高齢の方だけがかかる病気をイメージしている方もいるのではないでしょうか。
それは間違いで、歯周病は歯肉と歯がある時点で若くてもかかります。
確かに、歯が抜けるほどの進行となるとそれなりの年齢の方が対象になりますが、
初期段階の歯周病である歯肉炎に至っては小学生ですらかかりますし、
実際に歯周病の低年齢化が問題にもなっています。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、歯周病の怖さについてまとめます。
- 歯周病が進行すると歯を失う :歯を支える歯槽骨が溶け、支えを失った歯が抜け落ちてしまう
- 歯周病が進行すると辛い治療が必要になる :進行度によっては歯肉の切開や抜歯が必要になる
- 歯を失った後の対処 :失った歯を取り戻すことはできず、入れ歯やインプラントをしなければならない
- 歯周病は全身の健康にも害をもたらす :歯周病の影響は身体全体に及び、命にかかわる病気も招く
- 脳梗塞・心筋梗塞 :歯周病菌が血管に入り込むことで血栓ができやすくなるため
- 糖尿病 :歯周病になると糖尿病にもなりやすく、糖尿病になると歯周病が重症化しやすい
- 誤嚥性肺炎 :反射能力が衰えていると、唾液と一緒に歯周病菌が肺に入り込み肺炎が起こる
- 妊娠中の女性へのリスク :妊娠中に歯周病になると早産や低体重児出産のリスクが7倍高まる
- 歯周病の予防方法 :以下の3つを実践することで高い予防効果を得られる
- 歯磨きの精度を高める :デンタルフロスの使用やブラッシング指導を受けて精度を高める
- 定期検診を受ける :歯周病を予防しやすいだけでなく、歯周病の早期発見も可能になる
- 生活習慣を見直す :身体の免疫力を高めることで、歯周病菌に感染しにくくなる
- 歯周病は若くてもかかる :初期段階の歯周病である歯肉炎なら、小学生でもかかり得る
これらのことから、歯周病の怖さが分かります。
確かに、歯周病には虫歯のような辛い痛みはありません。
しかし進行することで歯を失いますし、進行度に比例して治療内容も辛いものになってきます。
特に妊娠中の女性においては早産や低体重児出産のリスクも招き、お腹の赤ちゃんにも影響するのです。
さらに場合によっては脳梗塞や心筋梗塞などの命にかかわる病気を招くこともあり、
これらの点で考えても徹底予防…そして決して放置してはいけない病気だということが分かります。