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そもそもなぜ虫歯になると歯が痛くなるのですか?
2017年10月01日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「虫歯になると歯が痛くなる理由」です。
虫歯になると歯が痛くなりますが、それはなぜなのかと考えたことはありますか?
傷もついているわけではないのにズキズキと辛い痛みを感じる…これが虫歯の痛みです。
さて、正確に言えば虫歯になったからと言って絶対に歯が痛むわけではなく、
逆に言えば痛まなくても虫歯である可能性があるのです。
その理由は、そもそもなぜ虫歯になると歯が痛むのか?…その答えを知ることで分かります。
そこで、ここでは虫歯になると歯が痛む理由について説明していきます。
目次
虫歯のメカニズム
まず虫歯とはどんな状態を意味するのかを知っておきましょう。
実は虫歯は細菌による感染症で、虫歯の原因菌に感染することで起こります。
虫歯の原因菌にはいくつか種類がありますが、最も一般的なのはミュータンス菌と呼ばれる細菌です。
この細菌は糖分とエネルギーにして増殖し、歯にプラークと呼ばれる棲み処を形成します。
そしてプラークの中から酸を出し、歯を溶かしてしまうことで虫歯になるのです。
私達は普段歯磨きによって虫歯を予防していますが、
それは歯磨きによって虫歯の原因菌が形成したプラークを取り除くためなのです。
歯の再石灰化
虫歯の原因菌によって歯のカルシウムなどのミネラル成分が溶かされますが、
その結果歯の結晶構造は空の状態になってしまいます。
これを脱灰と呼び虫歯の始まりでもあるのですが、実際には一方的に溶かされるわけではありません。
歯は修復する力も持っており、唾液中のカルシウムなどが脱灰された部分に沈着し、
溶かされる前の元の状態に戻そうとする働きを起こすのです。そしてこれを歯の再石灰化と呼びます。
つまり、私達のお口の中では脱灰と再石灰化が頻繁に繰り返されているのです。
しかし、唾液の分泌量の低下やプラークなどの影響で再石灰化が不充分になると、
脱灰だけが一方的に起こる形になり、虫歯になってしまうのです。
歯の再石灰化を促すには
脱灰と再石灰化のメカニズムから考えると、再石灰化を活発にさせることが虫歯予防に繋がると分かります。
ではどうすれば歯の再石灰化を促せるのか?…その方法はいくつかあります。
まずプラークを効率よく除去してお口の中を清潔に保つことで、そのため手段は歯磨きです。
そして唾液の分泌量を高めること…これはいくつか方法があります。
例えばフッ素配合の歯磨きの使用、これはフッ素によって唾液の分泌量が高まりますし、
他にもキシリトール配合のガムを噛むことでも唾液の分泌量が高まって歯の再石灰化を促せます。
実際、フッ素やキシリトールが虫歯予防に効果的だと聞いたことがある方も多いでしょうが、
その理由はフッ素やキシリトールは唾液の分泌量を高め、その結果歯の再石灰化を促せるからなのです。
虫歯で歯が痛む理由
さてここからが本題で、「虫歯になると歯が痛くなるのはなぜか」について説明していきますが、
答えのキーワードとなるのは「象牙質」と「刺激」です。
私達の歯はエナメル質に覆われており、このエナメル質は歯を刺激から守る役割を果たしています。
つまりエナメル質は歯にとっての保護役…バリアのような存在です。
だからこそ虫歯で穴があいたとしても、その穴がエナメル質の表面までの範囲なら痛みはありません。
しかし、虫歯が進行するにしたがって虫歯の穴はどんどん深くなっていきます。
そうなるとエナメル質のさらに奥にある象牙質まで穴があいてしまうのです。
この象牙質はエナメル質と全く逆で、刺激に対して非常に敏感です。
衝撃の類はもちろん、熱さや冷たさという温度でさえ刺激となってしまいます。
さて、虫歯が象牙質まで進行するとその箇所はエナメル質の保護が失われ、
象牙質が剥き出しの状態になります。そして刺激に敏感な象牙質が剥き出しになっている以上、
ささいな刺激で痛みやしみを感じてしまい、これが虫歯の痛みでもあるのです。
つまり虫歯で歯が痛むのは、虫歯が進行することで刺激に敏感な象牙質が剥き出しになってしまうからです。
虫歯の痛みを抑える方法
では虫歯の痛みを抑える方法を考えてみましょう。
最も、ここでお伝えする方法はあくまで応急処置ですから、治療の効果はありません。痛みを抑えることはできるものの、効果としては一時的なものであり、
痛みそのものを完全に消すためには歯科医院での治療が必要だということを忘れないでください。
痛み止めを飲む
薬局にある市販のもので構いません。痛み止めを飲むことで虫歯の痛みを抑えることができますが、
即効性はないので痛みが治まるのは一定時間経過してからになります。
また、神経まで進行した激しい痛みの場合は痛み止めでも効果が薄いです。
正露丸を詰める
これは正露丸の使用方法や効果の欄にきちんと記載されていることです。
注意すべきなのは「飲む」ではなく「詰める」ということです。
患部に詰め込むことで痛みを感じなくなります。
ぬるま湯でうがいをする
痛む要因が「食べカスが虫歯の箇所に詰まっている」だった場合に効果的です。
この場合は食べカスを取り除けば痛みは治まりますが、指や歯ブラシで掻き出すと痛みが増してしまいます。
刺激の少ないぬるま湯でうがいして、詰まった食べカスを取り除きましょう。
…こうした方法で痛みは治まりますが、前述したようにあくまで応急処置の効果でしかありません。
本当に大切なのは歯科医院に行くことで、例え痛みが治まっても必ず治療を受けましょう。
虫歯の痛みが激痛に変化する理由
虫歯の痛みはそのまま放置すると、やがて激痛に変化します。
これは虫歯が象牙質からさらに進行し、歯髄…いわゆる歯の神経まで虫歯の原因菌におかされたためです。
そもそもなぜ歯の神経まで進行すると激痛が起こるのか?…歯髄の圧迫が原因です。
身体の器官には至るところに防御機能がありますが、
虫歯の原因菌が神経付近まで侵入してくることで身体がそれに対抗する動きを見せます。
具体的には白血球を含む血液の量が増えるため、その影響で歯髄が圧迫されてしまうのです。
ただし結果を言っておくと、いくら身体が抵抗しても虫歯の原因菌を駆除することはできず、
ここで治療を受けなければ今度は歯髄まで死んでしまいますし、
治療を受けたとしても患部の歯髄は除去しなければならないでしょう。
さらに放置した場合
激痛が起こるようになってさらに放置した場合、今度は逆に全く痛みを感じなくなります。
これは歯髄が死んでしまったためで、中にはこれをプラスに考える方もいるかもしれません。
しかし痛みを感じなくなるということは自覚症状を失うということで、とても怖いことなのです。
また虫歯の原因菌が駆除されたわけではないので、痛くないといって放置してしまうのは厳禁です・。
虫歯を放置し続けるとどうなるか
虫歯が象牙質まで進行すると痛むようになり、
ここで放置すると歯髄まで進行して痛みは激痛に変化します。
そしてさらに放置することで歯髄は死に、その影響で痛みを感じなくなります。
さて、ここでなお放置するとどうなるか?…その場合、虫歯は本当の怖さを見せます。
歯髄が死んでしまった後、虫歯の原因菌は血液に侵入して血管を通じて全身に回ります。
そうなると、脳に虫歯菌が回ってしまった場合は脳梗塞が起こる危険性がありますし、
心臓に回ってしまった場合は心筋梗塞が起こる危険性もあるのです。
可能性としては低いものの、実際にこうした事態が起こって死亡した例もあるのです。
つまり、虫歯の放置はお口の中だけでなく最終的に全身の健康を脅かし、
さらには命にかかわる深刻な病気を引き起こす危険性があるのです。
これは非常に怖い事実ですが、きちんと治療すれば実際にこうした事態に陥る心配はありません。
いかがでしたか?
最後に、虫歯になると歯が痛くなる理由についてまとめます。
虫歯のメカニズム
・虫歯の原因菌がプラーク内から酸を出し、歯が溶かされることで虫歯が起こる
・歯の再石灰化 :溶かされた歯を修復する再石灰化、それが不充分になると虫歯になってしまう
・歯の再石灰化を促すには :プラークの除去、フッ素配合の歯磨き粉の使用、キシリトールの摂取など
虫歯で歯が痛む理由
・象牙質まで虫歯が進行すると、刺激に敏感な象牙質の影響で痛みを感じる
・虫歯の痛みを抑える方法 :以下の方法はあくまでも応急処置であり、治療効果はないので注意
・痛み止めを飲む :歯科医院で処方されたものでなく、市販のものでも構わない。即効性はない
・正露丸を詰める :ポイントは「飲む」ではなく「詰める」。使用方法の欄にこのことは記載されている
・ぬるま湯でうがいをする :食べカスが虫歯の患部に詰まっていて痛む場合に効果的
虫歯の痛みが激痛に変化する理由
:歯の神経である歯髄まで虫歯が進行したため
・さらに放置した場合 :歯髄が死んでしまって痛みを感じなくなるが、虫歯の原因菌は生きたまま
虫歯を放置し続けるとどうなるか
血管を通じて全身に回り、脳梗塞や心筋梗塞が起こる危険性がある
これらのことから、虫歯になると歯が痛くなる理由が分かります
虫歯がエナメル質の奥の象牙質まで進行すると痛みが起こるわけですが、
この点から1つの事実が言えます。それは痛みを感じた時点で既に虫歯が進行しているということです。
初期の虫歯はエナメル質が虫歯の原因菌におかされた状態で、この時点では痛みはありません。
と言うことは、痛みのない方でも実は虫歯になりかけている可能性があるということになるのです。
この場合、最大の問題は自分が虫歯であることに気付けない点です。
そこでおすすめなのが歯科医院の定期検診です。定期検診を受けること自体に虫歯の予防効果がありますし、
痛まない初期の虫歯でも発見できる機会となるため、
痛みなどの辛い症状が起こる前に虫歯を治すことが可能になるのです。