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歯が痛くないのは口の中が健康な証拠と言えますか?
2017年10月14日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「歯の痛みとお口の健康の関連性」です。
お口の中が健康かどうか、それを知るための判断基準として多いのが歯の痛みの有無です。
つまり、「歯が痛くなければ健康で歯が痛ければ健康でない」…そう判断する方が多いのです。
確かに、歯が痛ければ虫歯などが考えられますし、何らかの問題が起こっていることは明白です。
また、歯が痛くなければお口の中が健康である可能性もあるでしょう。
しかし一概にそう断言することはできません。
なぜなら、歯が痛くないのにお口の中に何らかの問題が起こっていることもあるからです。
では実際、歯が痛くなくても起こる問題として何が考えられるのでしょうか。
目次
虫歯の可能性
歯が痛くなくても虫歯の可能性があり、その時の虫歯として考えられるのが次のパターンです。
初期段階の虫歯
完全な初期段階の虫歯には痛みはなく、歯の表面が変色している程度の症状しか起こりません。
最も、この段階で虫歯に気付くのは難しいですし、
痛くなくても虫歯かもしれないとずっと悩んでしまうのも、それはそれで不健康ですね。
確実なのは歯科医院の定期検診を受けることで、そうすれば実際に虫歯があるかがすぐ分かります。
既に神経を除去した歯が虫歯になっている
一度虫歯になり、さらにその時神経を除去していると、以後その歯が虫歯になっても痛まなくなります。
言わば虫歯の再発ですが、例え被せ物で覆われている歯でも虫歯が再発することはあるのです。
また、神経が死んだ歯においても同じことが言えます。
神経が死んだ歯を虫歯治療した場合、例え虫歯が再発しても既に神経が死んでいるため痛みは感じません。
虫歯が進行して神経が死んでしまった
虫歯になり、それが進行して神経が死ぬと全く痛まなくなります。
この場合、虫歯が相当進行しているにもかかわらず痛みは全く感じないのです。
ただし、このパターンに当てはまる方はそれなりの自覚があるはずです。
なぜなら神経が死ぬ前の段階で激痛を感じるため、その時点で既に虫歯を自覚しているでしょう。
歯周病の可能性
虫歯と並び、お口の中の病気として代表的なのが歯周病です。
歯周病は歯の周りの病気…すなわち歯肉の病気です。
そして歯周病は虫歯と違い、ある程度進行しても痛みという自覚症状はないのです。
つまり、歯の痛みの有無は歯周病の有無を知るための参考には全くならないということです。
このため、「歯が痛くないけど歯周病と診断された」というケースは珍しくありません。
そうなると気になるのが歯周病の症状ですが、具体的には以下のような症状が起こります。
初期段階(歯肉炎)
初期段階の歯周病は歯肉炎とも呼ばれます。
歯肉が腫れて変色し、歯肉の炎症の影響で食事や歯磨きの際に歯肉から出血するようになります。
また、膿みや細菌の増殖が原因で口臭がするようになります。
中期段階(歯周炎)
中期段階の歯周病は歯周炎とも呼ばれます。
歯肉の炎症に加えて歯を支えている歯槽骨が徐々に溶かされ、支えを失った歯がグラつくようになります。
また、歯肉が退縮して歯肉全体が下がってくるため、歯の根元が露出して歯が長くなってように見えます。
重度段階(歯槽膿漏)
重度段階の歯周病は歯槽膿漏とも呼びます。
歯を支える歯槽骨はさらに溶かされ、歯は支えを完全に失う寸前になっています。
そして歯はやがて抜け落ちてしまい、ここまで進行すると治療しても歯を残せない可能性があります。
…どの段階に注目しても、歯周病の症状として痛みはありません。
正確には一定以上進行することで冷たいものや熱いものがしみることはありますが、
少なくとも虫歯のような分かりやすい痛みは起こらないのです。
定期検診のすすめ
歯の痛みの有無だけでは参考にならない以上、お口の健康状況を把握するにはどうすれば良いのでしょうか。
それは歯科医院で歯科医に直接診てもらうことで、そのためには定期検診を受けることです。
定期検診では歯科医がお口の状態をチェックするため、
自覚症状がないほどの初期段階の虫歯や歯周病を発見できます。
このため、3ヶ月に1度のペースで定期検診を受けていれば、
例え虫歯や歯周病になったとしても酷く進行することはありません。
さらに定期検診を受けることで以下のようなメリットがあります。
プラークと歯石を綺麗に除去できる
定期検診では歯のクリーニングを行います。
これによって歯磨きでは除去しきれないプラークも除去できますし、
歯磨きでは対応自体できない歯石も綺麗に落とせます。
歯磨きの技術が高まる
定期検診ではブラッシング指導を行っています。
これを受けることで正しい歯磨きの方法を学ぶことができるため、
それを実践することで歯磨きの技術が高まってより効率よくプラークを除去できます。
虫歯や歯周病になりにくい生活習慣が身につく
虫歯や歯周病は生活習慣次第でなりやすくもなりにくくもなります。
定期検診では患者さんの生活習慣を聞いて改善のアドバイスを行います。
それによって身体の免疫力の向上などの効果をもたらし、虫歯や歯周病になりにくくなるのです。
…メリットとして挙げた3点に共通するのは、虫歯や歯周病の予防につながるという点です。
つまり定期検診を受けることはお口の健康状態を知るだけでなく、
虫歯や歯周病の予防効果を高めるメリットがあるのです。
4. 乳歯の虫歯に注意
まだ乳歯の小さな子供の場合、「歯が痛くない」はお口の中が健康の証にはなりません。
と言うのも乳歯と永久歯の虫歯の違いの1つとして、乳歯の虫歯は痛みが出にくいという特徴があるのです。
最も、必ずしも痛まないとは限らず、乳歯の虫歯でも痛むことはあります。
しかし、永久歯なら痛むほどの虫歯でも乳歯なら少ししみる程度しか感じないこともあり、
乳歯の場合は痛くなくても虫歯が起こり、なおかつその虫歯が進行している可能性もあるのです。
そもそも乳歯の虫歯は進行しやすいですから、
乳歯の子供のお口の健康を歯の痛みの有無だけで判断してはいけません。
4-1. 乳歯の虫歯放置の問題
乳歯はいずれ永久歯に生え変わることは誰もが知っていることでしょう。
このため、中には乳歯が虫歯になってもそれほど深刻になる必要はないと考える方もいます。
例え虫歯になっても、いずれ抜ける永久歯なら問題ないと考えてしまうからです。
しかしそれは大きな間違いで、乳歯の虫歯の放置は永久歯や顎の発育に様々な悪影響をもたらします。
永久歯が虫歯になるリスクが高くなる
乳歯の虫歯を放置することで、虫歯はやがて歯の根まで進行していきます。
そうなるとそこに膿みを溜め込むのですが、永久歯はちょうどその膿みを溜め込んだ位置から生えてきます。
このため永久歯が虫歯の原因菌にまみれる状態になり、生えてきた永久歯が虫歯になるリスクが高まります。
永久歯の生え方に支障が出る
本来乳歯は自然に抜けますが、虫歯が進行すればその影響で抜けてしまいます。
この場合予定外の早さで乳歯が抜けたことになり、その影響で奥の歯が前に動き出してきます。
そうなると永久歯の生えるスペースが不充分になり、歯並びの悪い形で永久歯が生えてきてしまいます。
噛む力や顎の発育に支障が出る
乳歯が虫歯になってその箇所が痛む場合、痛みを避けるために別の歯で噛もうとします。
そしてその別の歯まで虫歯になってしまえば、今度は噛む歯がなくなって飲み込むクセがついてしまいます。
このため噛む頻度が少なくなり、その影響で噛む力や顎の発育に支障が出てしまいます。
食生活に支障が出る
乳歯が虫歯になってその箇所が痛む場合、「噛むことで痛む」というのを子供は理解します。
そうなると痛みを避けるため、「噛まなくても良い方法」を考えるようになります。
その結果やわらかいものばかりを食べるようになり、食生活に偏りが出てしまいます。
…乳歯の虫歯の放置にはこのような問題があるため、
例え乳歯でも虫歯になったらしっかりと治療しなければなりません。
また、何より虫歯になりやすい乳歯においては予防治療を受けることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、歯の痛みとお口の健康の関連性についてまとめます。
虫歯の可能性 :歯が痛くなくても虫歯の可能性がある
初期段階の虫歯 :初期段階の虫歯は痛みがない
既に神経を除去した歯が虫歯になっている :神経を除去した歯は再度虫歯になった時に痛みを感じない
虫歯が進行して神経が死んでしまった :この場合、神経が死ぬまでは痛むので虫歯の自覚はあるはず
歯周病の可能性 :歯周病は歯肉の病気で、症状として虫歯のような痛みは起こらない
初期段階(歯肉炎) :歯肉が腫れて変色して炎症を起こすが痛みはない
中期段階(歯周炎) :歯を支える歯槽骨が溶けて歯がグラつくが痛みはない
重度段階(歯槽膿漏) :歯が抜ける寸前だが痛みはない
定期検診のすすめ :お口の健康状態を知るためには歯科医院の定期検診を受けるのが確実
プラークと歯石を除去できる :プラークはもちろん、歯磨きで除去できない歯石も除去できる
歯磨きの技術が高まる :ブラッシング指導によって歯磨きの技術が高まり、プラークの除去率が上がる
虫歯や歯周病になりにくい生活習慣が身につく :生活習慣を改善でき、虫歯や歯周病を予防しやすくなる
乳歯の虫歯に注意 :乳歯の虫歯は永久歯に比べると痛みを感じないことがある
乳歯の虫歯放置の問題 :いずれ抜けるという理由で乳歯の虫歯を放置するのは厳禁
永久歯が虫歯になるリスクが高くなる :虫歯の原因菌にまみれた状態で永久歯が生えてくる
永久歯の生え方に支障が出る :予定より早く乳歯が抜けることで、永久歯の歯並びに影響する
噛む力や顎の発育に支障が出る :虫歯の痛みを避けるために噛まなくなってしまうため
食生活に支障が出る :噛んだ時の痛さを避けるため、やわらかいものばかり食べるようになる
これらのことから、歯の痛みとお口の健康の関連性が分かります。
このように、歯が痛くないからと言ってお口の中が健康だと断言することはできません。
もちろん健康である可能性もありますが、そうでない可能性もあるのです。
このため、歯が痛くないからと言って充分な予防ができていると軽視せず、
歯科医院で定期検診を受けて本当に健康かどうかを定期的に診てもらいましょう。