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噛み合わせと顎関節症の関係を教えてください
2018年05月01日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「噛み合わせと顎関節症の関係性」です。
噛み合わせの悪さを自覚しつつも、それを大した問題と考えていない人も少なくありません。
確かに、噛み合わせの悪さは虫歯や歯周病と違って病気ではないですから、
治療に積極的になれない気持ちは理解できます。
しかし、噛み合わせの悪さは単に噛み合わせが悪いだけでなく、様々な病気を引き起こす原因にもなります。
そこで今回テーマとなるのが顎関節症です。
噛み合わせが悪いと顎関節症になるリスクが高くなる上さらに重症化しやすい傾向があり、
その点からも噛み合わせの悪さと顎関節症が関係していることは明白です。
目次
顎関節症と症状について
顎関節症とは顎関節の慢性的な疾患で、顎関節やその周辺の痛み、
さらに口を開けにくいや耳が痛いなどの症状が起こります。
代表的な症状としては以下のようなものがありますが、それ以外にも細かい症状が起こります。
症状1. 顎の痛み
顎関節や周辺の頬、さらにこめかみが痛むこともあります。
これらは常に痛むわけではなく、食事などで顎を動かした時に痛む傾向があります。
このため、顎を動かしていないのに痛む場合は他の病気になっている可能性があります。
症状2. 開口障害
分かりやすく言えば、開口障害とは口を大きく開けられないことです。
とは言え、「口を大きく開く」の基準が分からないと思います。
そこで解説すると、正常な場合は40ミリ~50ミリほど口を開くことができます。
これは指を縦にして3本口に入るくらいの数値であり、
開口障害になると指を縦にした時に2本、もしくはそれ以下しか入らなくなります。
ちなみに突如口が開かなくなる場合もありますが、一方で徐々に開きづらくなる場合もあります。
症状3. 顎を動かした時に音がする
関節雑音とも呼ばれる症状で、顎を動かした時に耳の近くから音がします。
表現が難しいですが、「カクンカクン」や「ミシミシ」のような音で、
この症状しか起こっていない場合はそれほど深刻な状態ではありません。
症状4 噛み合わせた時に違和感がある
顎関節症によって顎関節や筋肉に異常が起こった場合、
顎の動きに変化が生じるため噛み合わせが今までと変わってしまうことがあります。
このため、何かいつもと噛み合わせが違うような違和感があるのです。
症状5. 口が完全に閉じない
顎関節症の代表的な症状の中でもこれは非常に稀なケースです。
顎関節内の構造に異常が起こり、その影響で歯列に隙間ができてしまうことがあります。
そうなると、状態によって口を閉じようにも完全には閉じられないようになってしまいます。
<顎関節症によるその他の症状>
他にも頭痛、肩こり、腰痛、背中の痛み、耳の痛み、耳鳴り、めまい、目が充血する、目が疲れる、
歯が痛む、舌が痛む、味覚に違和感がある、呼吸困難、手足のしびれなどの症状があります。
このように、顎関節症になると小さなものも含めて非常に多くの症状が起こります。
噛み合わせの悪さと顎関節症の関係
噛み合わせが悪いと顎関節症になりやすく、さらに重症化しやすい傾向があります。
最も、「噛み合わせが悪い=100%顎関節症になる」とは限らず、
あくまで顎関節症になるリスクが高まると捉えてください。
ではなぜ噛み合わせの悪さが顎関節症のリスクを高めるのでしょうか。
その理由は簡単で、噛み合わせが悪いことで顎関節に掛かる負担が大きくなるからです。
また、上記で説明した顎関節症の症状には「噛み合わせた時に違和感がする」があります。
その点から考えてみると、噛み合わせの悪さによって顎関節症が起こるだけでなく、
顎関節症になることで噛み合わせが悪くなる…つまり逆のパターンも言えることが分かります。
これらのことから、噛み合わせの悪さと顎関節症には深い関係があるのです。
顎関節症が起こるその他の原因
そもそも顎関節症は誰にでも起こり得るため、噛み合わせが良い人でも起こります。
そこで、今度はなぜ噛み合わせが良いのに顎関節症が起こるのかを考えてみましょう。
これについても理由は簡単で、顎関節症が起こる原因は噛み合わせの悪さ以外にもあるからです。
3-1. クセや姿勢
クセも姿勢も日常生活の中で無意識に行うものですが、これらが原因で顎関節症が起こることもあります。
例えば「頬杖をつく」や「歯を食いしばる」や「歯ぎしり」などのクセは、
いずれも顎関節に大きな負担を掛ける上、噛み合わせが悪くなる原因にもなります。
特に歯ぎしりは睡眠中のクセのため予防が難しく、本格的に改善するなら専用のマウスピース着用が必要です。
3-2. 精神的なストレス
精神的なストレスが原因で顎関節症が起こることがあり、しかもそれは決して稀なケースではありません。
精神的なストレスが蓄積されると脳がそれを発散させようと、歯ぎしりや食いしばりなどのクセを起こさせます。
また、噛みしめによる筋肉の疲労や緊張が続くことで顎のバランスも悪くなります。
実際に顎関節症になった人の性格に注目すると、ストレスが蓄積されやすい神経質な人が多い傾向があります。
3-3. 外傷
ぶつけるなどの外傷が原因で顎関節症が起こることもあります。
最も、これについては突発的な事故のようなものなので予防方法はありません。
ただ1つ言えるのは、強くぶつけた場合は例え大きな出血や腫れがなくても、
油断せずにひとまず冷やす処置をすることをおすすめします。
顎関節症の治療方法
顎関節症を治療する場合、治療の目的は2つあります。
1つは顎関節症の原因を解消するための治療、そしてもう1つは現状の痛みを治める治療です。
実際には現在の状態や起こっている症状を元に、以下のような治療を組み合わせる形になります。
・顎関節症の原因となるクセや習慣を患者さん自身に自覚してもらい、それを取り除く意識を強める
・患部を冷やし、痛みを軽減させる
・リハビリのように顎を動かすなどの訓練を行い、徐々に口が開くようにしていく
・特殊な装置を歯列に装着して顎関節に掛かる負担を軽減させる
・炎症による痛みが激しい場合などは薬を使用して対処する
・状態によっては外科治療を行う
…これらはいずれも病院で行う治療ですが、
実は顎関節症の治療においてのメインは患者さんによるセルフケアです。
そこで、必要なセルフケアについてもお伝えしておきます。
4-1. 歯の接触を回避する
目的は食いしばりを防ぐことです。食事や歯磨きの時は例外として、
それ以外の場面ではできるだけ歯の接触を避けて顎関節に負担を掛けさせないようにします。
4-2. 大きく口を開かない
注意すべき点は食事で、大きく口を開かないようにするために食材を小さく切るなどの工夫が必要です。
また、あくびや会話時にも口の開き方に注意しなければなりません。
4-3. 温める、冷やす
それぞれ使い分けが必要なので注意してください。急な痛みを抑える目的なら冷やすのが効果的ですが、
筋肉の緊張などによる慢性的な痛みに対しては温めるのが効果的です。
4-4. 姿勢を正しくする
猫背や顎を突き出す姿勢の人は改善してください。立った状態だけでなく座った状態の時の姿勢にも注意し、
さらに同じ姿勢のまま長時間過ごすのは避けましょう。
4-5. リラクゼーション
緊張をほぐすことで顎への負担を軽減させます。
緊張状態が続く場面では適度に力を抜いて筋肉を休ませましょう。
4-6. 全身運動
例えば水泳やウォーキングなどが効果的です。顎関節症に対する直接の治療効果はないですが、
顎関節症の原因となるストレスの解消効果があります。
4-7. 顎に負担を掛けない意識を高める
日常生活の中には顎に負担を掛ける場面が多々あります。頬杖などのクセ、食事の時の噛み方、
楽器の演奏など、顎関節症になった時はこれらを控える生活を意識してください。
…これらのセルフケアは顎関節症を改善する効果があると同時に、予防する効果もあります。
つまり虫歯や歯周病と同じで、顎関節症も生活習慣次第では予防できるということです。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、噛み合わせと顎関節症の関係性についてまとめます。
1. 顎関節症と症状について :代表的な症状は以下の5つ
・顎の痛み :顎関節だけでなく周辺の頬やこめかみが痛むこともある
・開口障害 :大きく口を開けた時、指を縦にした状態で3本口に入るのが正常
・頬を動かした時に音がする :「カクンカクン」や「ミシミシ」などの音がする
・噛み合わせ時に違和感がある :顎関節症によって顎関節や筋肉に異常が起こっているため
・口が完全に閉じない :非常に稀なケース。顎関節内の構造に異常が起こり、歯列に隙間ができるため
2. 噛み合わせの悪さと顎関節症の関係 :噛み合わせが悪いことで顎関節に負担が掛かる
3. 顎関節症が起こるその他の原因 :噛み合わせの悪さ以外にも以下の原因がある
・クセや姿勢 :頬杖をつく、歯を食いしばる、歯ぎしりなどのクセは顎関節に大きな負担を掛ける
・精神的なストレス :ストレスによって脳が歯ぎしりや食いしばりなどのクセを起こさせる
・外傷 :ぶつけるなどの突発的な事故。強くぶつけた場合は出血や腫れがなくても冷やすべき
4. 顎関節症の治療方法 :病院で行う治療よりも、以下のセルフケアが治療のメインになる
・歯の接触を回避する :顎関節に負担を掛けさせないのが目的。食事や歯磨きの時などは例外
・大きく口を開かない :食事は食材を小さく切る工夫が必要で、あくびや会話時の口の開きにも注意
・温める、冷やす :急な痛みは冷やし、慢性的な痛みは温めるのが効果的
・姿勢を正しくする :猫背や顎を突き出す姿勢に注意。立った状態だけでなく座った状態の姿勢も注意する
・リラクゼーション :緊張状態が続く場面では適度に力を抜いて筋肉を休ませる
・全身運動 :顎関節症の原因となるストレスの解消効果がある
・顎に負担を掛けない意識を高める :頬杖などのクセ、食事の時の噛み方、楽器の演奏などに注意
これらのことから、噛み合わせと顎関節症の関係性について分かります。
今回の説明から最も感じてほしいのは、噛み合わせの悪さは決して軽視できない問題だということです。
噛み合わせが悪いのは病気ではないですし、虫歯のように激しい痛みが起こるわけでもありません。
しかしだからと言って改善を無視すると、顎関節症のような症状が起こってしまうことがあるのです。