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口からどんな臭いがしたら要注意?
2018年06月15日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「注意が必要な口臭のパターン」です。
自分、もしくは他人の口臭が気になった経験がある人は多いと思います。
さてこうして口臭が気になった際、どんな臭いがするのか?…口臭の類を気にしたことはあるでしょうか。
実は口臭には様々な種類があり、「口臭=全て同じ臭い」とは限らないのです。
ちなみに、最も問題ないのは直前の食事が原因で起こる口臭です。
これは単に食べたものが原因で口臭がしているだけですから、
歯磨きすればすぐに解消できますし、エチケットの問題だけですみます。
しかしそれ以外の臭いがする口臭については、身体に異常が起こっている可能性があります。
目次
腐った卵や魚の臓物臭がする場合
腐った卵の臭いからは硫化水素、魚の臓物臭からはメチルメルカプタンの発生が予想できます。
これらが発生していることを考えると、可能性として最も高いのは嫌気性菌です。
嫌気性菌とは文字とおり空気を嫌う特徴を持った細菌で、酸欠状態の環境になると増殖します。
そして嫌気性菌が新陳代謝を行うと、その時に硫化水素やメチルメルカプタンが発生するのです。
つまり、腐った卵や魚の臓物臭の口臭がする場合、
口の中はそれだけ多くの嫌気性菌が存在していることになります。
このように口の中で嫌気性菌が増殖していたとすれば、次の2つの可能性を考えなければなりません。
可能性1. 歯周病
歯周病になると歯周ポケット(歯と歯肉の境目の溝)が深くなり、そこに細菌が溜まっていきます。
そして歯周病が進行することで、歯周ポケットはどんどん深くなっていきます。
そうなると歯周ポケットに溜まった細菌は除去できず、溜まる一方になってしまいます。
歯磨きしても腐った卵や魚の臓物臭の口臭がするのであれば、
その歯磨きによって嫌気性菌が除去できておらず、むしろ大量に増殖していることになります。
ではなぜ歯磨きで除去できていないのか?…そこで考えられるのが歯周病です。
歯周病によって歯周ポケットが深くなり、そこに嫌気性菌が溜まっている可能性があるのです。
可能性2. 唾液の分泌量が低下している
腐った卵や魚の臓物臭の口臭がする以上、口の中に大量の嫌気性菌が存在しています。
さらに、これらの臭いは嫌気性菌が新陳代謝を行って発生する気体が原因のため、
それだけ嫌気性菌が活発に働いているということになります。
酸欠状態を好む嫌気性菌がそこまで活発に働くのであれば、口の中は酸欠状態にあることが予想できます。
そして、口の中が酸欠状態ということは唾液が少ない…つまり唾液の分泌量が低下しているからなのです。
唾液には細菌を洗浄する効果がありますから、
唾液の分泌量が低下しているということはそれができない…つまり虫歯や歯周病になりやすくなります。
<唾液の分泌量を高めるには>
唾液の分泌量は、日常生活の中にいくつかのことを取り入れることで高められます。
・ガムを噛む
噛めば噛むほど唾液が出ますから、噛む回数の多いガムを噛むのがおすすめです。
ただし糖の含まれたガムは虫歯のリスクを高めるため、キシリトール配合のものを選びましょう。
・水を飲む
要は水分補給です。身体の水分量が不足すると、身体は水分を確保するため唾液の分泌を抑制します。
そうならないよう、適度に水分補給をして身体の水分量を充分にしてください。
・リラックスする
緊張した時には口が渇きますが、これは緊張によって交感神経が優位になるためです。
一方リラックスして副交感神経を優位にすれば、唾液の分泌量が正常な状態に戻ります。
・鼻呼吸をする
口呼吸は乾燥した空気を直接口に取り込むため、どうしても唾液が蒸発して口が渇いてしまいます。
さらに細菌に感染するリスクも高まるため、呼吸は鼻呼吸を意識しましょう。
壊死臭がする場合
「壊死」という点で大きな病気を予感しますが、この場合最も考えられるのは虫歯です。
虫歯になると虫歯菌の出す酸によって歯が溶かされ、穴があいた状態になります。
これによって歯に空洞が発生するため、食べカスなどがそこに詰まってしまいます。
本来食べカスは歯磨きで除去できますが、虫歯の穴に詰まることで除去できなくなるため、
詰まった食べカスは時間の経過で腐ってしまいます。
このように食べカスが詰まった状態で腐ることで、壊死臭の口臭がするようになるのです。
<虫歯の痛みを感じない場合>
ほとんどの場合、虫歯を自覚するきっかけは歯の痛みです。
このため例え壊死臭の口臭がしても歯が痛くなければ、本当に虫歯が原因なのか疑問に思うでしょう。
確かに、ここでは口臭の類だけで判断しているため、100%虫歯とは断言できません。
しかし、痛みがなくても虫歯になっている可能性があることも事実です。
ケースとして考えられるのが、既に神経を失っている場合です。
神経を失った箇所が虫歯になっても歯は痛まないため、知らない間に虫歯になっている可能性があるのです。
酸っぱい臭いがする場合
酸っぱい臭いの口臭がする場合、胃の状態が悪いことが考えられます。
そして、最も可能性が高いのは逆流性食道炎です。
逆流性食道炎とは、文字とおり胃液が食道に逆流してしまう病気です。
胃液は強力な酸を含んでいますから、これが逆流することで食道の粘膜が刺激を受けて炎症が起こります。
さて、逆流性食道炎になると酸っぱい臭いの口臭がする理由ですが、
これは酸っぱい臭いのする胃液が逆流し、さらにそれが喉の方まで上がってくるためです。
このため、呼吸時に胃液特有の酸っぱい臭いが口臭となるのです。
ちなみに、胃の状態が悪い…すなわち胃の病気によって起こる口臭は他にもあります。
そして、病気ごとで異なった類の口臭がします。
・胃炎
口臭の類としては、嫌気性菌同様に腐った卵のような臭いがします。
胃炎になると食べたものが未消化のまま胃に停滞し、腸ではなく胃で発酵が起こってしまいます。
この発酵によって発生する発酵臭が肺に入り込み、呼吸時に口臭となるのです。
・十二指腸潰瘍
口臭の類としては、これも嫌気性菌や胃炎と同じで腐った卵のような臭いがします。
十二指腸潰瘍になるとやはり食べたものが未消化のまま胃に停滞し、それが胃で発酵してしまいます。
その発酵臭が口臭になるのですが、十二指腸潰瘍だと口臭だけでなく吐き気や胸やけも感じます。
便臭がする場合
腸内環境が悪化して便秘になると、便臭の口臭がするようになります。
これについて説明すると、便秘になるということは排泄物が腸に溜まるということです。
そして排泄物が溜まることで腸内環境が悪化し、その影響で大腸菌などの悪玉菌が増殖します。
こうした悪玉菌の増殖で排泄物は腐敗しますが、腐敗した排泄物は有害物質を発生します。
この時発生した有害物質は、本来なら排泄時に便と一緒に排出されます。
しかし便秘で排泄が行われないため、有害物質は腸に留まり腸壁から吸収されて血液の中に溶け出します。
血液は血管によって全身に通じていますから、そこに溶け出した有害物質も全身にまわります。
この時、有害物質が肺にまわってしまうことで呼吸時に口臭が起こるのです。
しかも有害物質は排泄物が腐敗したものですから、その時の口臭は便臭に近いものになるのです。
アンモニア臭がする場合
アンモニア臭の口臭がする場合、その原因として肝臓の不調が考えられます。
これは肝臓の働きが関係しており、肝臓の働きの中には有毒なアンモニアを解毒するというものがあります。
例えば食べものにタンパクが含まれている場合、分解されることで有毒なアンモニアが発生します。
肝臓はその有毒なアンモニアを尿素という形に解毒し、それが尿となって身体の外に排出されます。
これが正常な状態ですが、肝臓が不調になることでこうした解毒が正常に行われなくなります。
そうなると、解毒されないままアンモニアが血液の中に溶け出し、血管を通じて肺にまわってしまうのです。
そして呼吸時に口臭となるのですが、アンモニアが原因である以上、その口臭はアンモニア臭がするのです。
口臭外来のすすめ
このように口臭の原因は様々ですし、原因によって口臭の類も異なります。
このため、口臭がするからといってその原因が何かを判断するのは非常に難しくなっています。
しかし口臭は身体が発するSOSのサインに等しいため、原因を特定した上でその原因の治療が必要です。
そこでおすすめなのが、口臭外来を受診することです。
口臭外来とは口臭の専門外来で、口臭の原因の特定や治療を行うのがメインとなっており、
歯科医院だけでなく総合病院の診療科目に設置されていることもあります。
そして原因が口の中にあった場合はその場での治療が可能ですし、
胃や腸など、言わば内臓にあった場合は専門の医療機関との連携も充実しています。
口臭において重要なのはまず原因を特定することですから、その意味でも口臭外来の受診がおすすめです。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、注意が必要な口臭のパターンについてまとめます。
1. 腐った卵や魚の臓物臭がする場合 :嫌気性菌の増殖が考えられ、原因として以下の2つの可能性が高い
・歯周病 :歯周ポケットに嫌気性菌…つまり細菌が溜まっている
・唾液の分泌量が低下している :嫌気性菌は酸欠状態の環境で増殖するため
2. 壊死臭がする場合 :可能性が高いのは虫歯。虫歯の穴に詰まった食べ物が腐っている
3. 酸っぱい臭いがする場合 :可能性が高いのは逆流性食道炎。胃の病気による口臭は以下の例もある
・胃炎 :胃で発酵した食べ物が原因で口臭が起こる
・十二指腸潰瘍 :胃で発酵した食べ物が原因で口臭が起こり、さらに吐き気や胸やけも感じる
4. 便臭がする場合 :可能性が高いのは腸内環境の悪化。便秘になると便臭の口臭がする
5. アンモニア臭がする場合 :可能性が高いのは肝臓の不調。有毒なアンモニアの解毒が行われていない
6. 口臭外来のすすめ :口臭の原因を特定でき、さらに治療も可能
これらのことから、注意が必要な口臭のパターンについて分かります。
このように口臭の原因が病気にある場合、その病気は口の中の病気だけとは限りません。
胃や腸や肝臓…いわゆる内臓の病気が原因の可能性もあるのです。
こうした口臭は歯磨きでも解消されず、原因となることを解決しなければ口臭は続きます。
確実なのは口臭外来を受診し、原因を特定した上でそのための治療にすすむことです。