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リステリンなどの洗口液で口臭は予防できる?
2018年09月14日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「洗口液による口臭予防の効果」です。
洗口液とは口臭をはじめ、虫歯や歯周病を予防できるとされる液体製品です。
液体を口に数十秒含むだけで口臭を予防できる手軽さから、時間に余裕のない社会人は重宝するでしょう。
しかし、歯科医の視点で意見すれば洗口液による口臭予防はおすすめできません。
おすすめできないと言うより、口臭予防における根本的な解決にならないのです。
例えば虫歯になって歯が痛む時、痛み止めを飲めば痛みは治まります。
しかしこれでは虫歯という根本的な問題が解消されておらず、痛みが治まるのは一時的でしかありません。
洗口液による口臭予防にもこれと似たことが言え、口臭の原因を解消できないのが問題です。
目次
洗口液での口臭予防効果
洗口液を使用すれば一時的に口臭を予防できます。
ですから、「例えば餃子を食べたために口臭を予防する」…このような使い方だと効果を発揮するでしょう。
しかし、こうした食べ物が原因による口臭ではなく、他の原因による口臭の場合はおすすめできません。
と言うのも、その場合は口臭の原因が一切無視されているからです。
つまり洗口液では口臭は予防できても、口臭を引き起こしている原因は解消できないわけで、
さらに言えばその原因が深刻な問題である可能性もあるのです。
洗口液で口臭予防し続けた場合
洗口液に口臭予防し続けると、次の2つの問題があります。
・問題1. 口臭の予防効果が一時的なものでしかない
・問題2. 口臭の原因が放置されたままになる
「問題1」についてですが、上記で例に挙げたような餃子などの食べ物による口臭なら問題ありません。
例えば外食でラーメンと餃子を食べた時に洗口液で口臭予防すれば、
その後に餃子の口臭で周囲を不快にさせることがなくなりますからね。
しかし仮に歯周病による口臭ならどうなるでしょうか。歯周病が口臭を引き起こしている以上、
歯周病を治療しなければ口臭は続くわけで、例え洗口液で口臭予防しても一時的な効果でしかありません。
時間が経過すれば、すぐにまた口臭を感じてしまうでしょう。
そして、この場合に深刻なのが「問題2」です。洗口液で口臭予防し続ければ歯周病は放置された状態になり、
そうなると歯周病はどんどん進行し、やがて歯を失うほど重症化してしまいます。
つまり、洗口液では口臭の原因は解消されず、それが後に大きな事態を招くのです。
口臭の原因
口臭の原因は様々ですから、単に「口臭がする」だけでその原因の特定はできません。
ちなみに、考えられる口臭の原因には次のようなものがあり、中には胃や腸の病気が原因のケースもあります。
歯周病
口臭の原因として最も可能性が高いのが歯周病です。
歯周病になると歯周ポケットが深くなるため、その溝に細菌が溜まって繁殖します。
さらに歯石、歯肉が出た膿み、歯肉からの出血が口臭を引き起こし、それもキツイ臭いの口臭が起こります。
唾液の分泌量の低下
唾液の分泌量が低下すると、口の中で酸欠状態を好む嫌気性菌の働きが活発になります。
嫌気性菌はプラークを分解する働きを持つため、それが活発になることで口臭が起こります。
唾液の分泌量の低下は虫歯や歯周病のリスクを高めるため、改善しなければならない問題です。
<唾液の分泌量を高めるには>
唾液の分泌量を高めるには、次のような方法があります。
・水分補給を意識して身体の水分不足を防ぐ
・乾燥した空気を取り込まないよう、鼻呼吸での呼吸を意識する
・唾液の分泌を促進させるためにガムを噛む(虫歯のリスクを考えてシュガーレスのガムを選択)
・交感神経が優位になると唾液の分泌が抑制されるため、リラックスして副交感神経を優位になる
・噛むことで唾液の分泌が高まるため、食事の時はよく噛んで食べる
虫歯
虫歯になると歯に穴があき、そこに食べカスが詰まります。
詰まった食べカスは歯磨きでも簡単に除去できず、長時間詰まったままになることで腐ります。
こうして食べカスが腐ると壊死臭がして、それが口臭になるのです。
逆流性食道炎
逆流性食道炎になると、胃液が食道に逆流する症状が起こります。
食道に流れる胃液は酸性で酸っぱい臭いがしますが、それが食道…つまり喉付近まで上がってくるわけで、
そのため呼吸すると胃液の酸っぱい臭いが口臭となるのです。
胃炎・十二指腸潰瘍
胃炎や十二指腸潰瘍になると、食べた物が胃で消化されずに未消化のまま残ります。
そうなると、本来なら腸で起こるはずの発酵が胃で起こってしまい、
その時に発生した発酵臭が肺に取り込まれることで、呼吸時に口臭が起こるのです。
便秘
便秘になると口臭が起こります。便秘によって排泄物が腸に蓄積されると腸内環境が悪化します。
そうなると発生した悪玉菌によって排泄物が腐敗し、腐敗することで今度は有害物質が発生します。
この有害物質が血液から肺に取り込まれると、呼吸時に便臭に近い口臭が起こります。
…このように口臭の原因は様々ですが、共通点を挙げると「洗口液では解消できない」という点です。
歯周病、唾液の分泌量の低下、虫歯、逆流性食道炎、胃炎、十二指腸潰瘍、便秘、
それぞれ治療方法は全く異なりますが、少なくとも洗口液では治らないですからね。
口臭がする場合、大切なのは洗口液による一時的な解消ではなく原因の究明と治療です。
とは言え、それはとても自身でできることではないため、
口臭がする時にはまず歯科医院に行かなければなりません。
口臭の治療に特化した「口臭外来」
様々な病気に対する専門外来がありますが、口臭に対する専門外来もあります。
それが口臭外来で、口臭外来では口臭の検査や治療を行います。
つまり口臭に特化した診療体制であり、歯科医院だけでなく総合病院に設置されている場合もあります。
口臭の専門的な治療を受けられるのが大きな特徴でありメリットですが、
その一方で専門的な治療が必要なケースでは健康保険が適用されず、費用が高いのがデメリットです。
ただし、従来の治療で健康保険が適用される治療においては口臭外来でも同様に適用されます。
例えば虫歯や歯周病が原因の口臭の場合、虫歯や歯周病の治療には健康保険が適用されますから、
口臭外来で治療しても健康保険が適用されるということです。
口臭外来の流れ
口臭外来の流れは次のようになっています。
・STEP1. 問診
言わばカウンセリングで、口臭における悩みや思っていることを医師に伝えましょう。
また、食生活を中心とした生活習慣についても把握しておくと後の治療がスムーズです。
カウンセリングによる患者さんの意見は、口臭を改善するための貴重な情報になります。
・STEP2. 口腔内検査
割合としては口臭の原因のおよそ8割が口腔内にあるとされています。
このため、原因究明のためにまずは口腔内検査を行います。
簡単な診察ではなく、レントゲンなどを使用して慎重に調べます。
・STEP3. 精密検査
口臭の原因をより深く究明するための検査です。
口臭測定器、唾液の検査、舌診、さらに必要であれば尿検査も行いますし、
CTや口腔内写真の撮影などによる歯周精密検査も行います。
・STEP4. 診断
これまでの検査の結果を元にして口臭の原因を特定し、本格的な治療計画を立てて説明します。
また、口臭の原因によっては専門医とも連携しますし、生活習慣における指導も行います。
この後の流れは一定ではなく、口臭の原因にあわせた治療を行っていきます。
心理的口臭とは
口臭外来の検査でも特に問題がなかった場合、その口臭は心理的なものが原因の可能性があり、
このような口臭を心理的口臭…もしくは自臭症と呼びます。
これはある種の錯覚で、実際にはキツイ口臭があるわけではありません。
しかし周囲から口臭を指摘された過去があるなど、
こうしたトラウマが原因で口臭がする…正確には「口臭がすると思い込んでしまう」ケースです。
この場合、カウンセリングを中心とした治療を行っていきます。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、洗口液による口臭予防の効果についてまとめます。
1. 洗口液での口臭予防効果 :一時的な解消されるものの、口臭の原因は全く解消されない
2. 洗口液で口臭予防し続けた場合 :口臭の原因が放置されたままになるなどの問題がある
3. 口臭の原因 :以下のような原因がある
・歯周病 :口臭の原因として最も可能性が高い、細菌の繁殖や歯肉から出た膿みが口臭を引き起こす
・唾液の分泌量の低下 :嫌気性菌の働きが活発になり、プラークを分解して口臭を引き起こす
・虫歯 :虫歯の穴に食べカスが詰まり、それが腐ることで口臭を引き起こす
・逆流性食道炎 :胃液が逆流してくるため、胃液の酸っぱい臭いが口臭を引き起こす
・胃炎・十二指腸潰瘍 :食べ物が胃で発酵し、その発酵臭が肺に取り込まれて呼吸時に口臭を引き起こす
・便秘 :腸で腐敗した排泄物が有害物質を発生させ、それが肺に取り込まれて呼吸時に口臭を引き起こす
4. 口臭の治療に特化した「口臭外来」 :口臭に対する専門外来で、歯科医院や総合病院に設置されている
・口臭外来の流れ :問診→口腔内検査→精密検査→診断
・心理的口臭とは :過去のトラウマが原因で口臭がすると思い込んでしまうケースがある
これらのことから、洗口液による口臭予防の効果について分かります。
まとめとして分かりやすい例を挙げると、例えばあなたの会社で後輩が重大なミスをしたとします。
先輩のあなたが対処することでそのミスは解消できますが、実際にはそれで解消して終わりにはなりません。
なぜならこの場合、ミスが起こった原因を究明して対策をとらなければならないからで、
そうしなければ後輩は今後何度でも同じミスを繰り返してしまうでしょう。
口臭の問題もこれと似たようなことが言えます。
ただ口臭を一時的に解消するだけで良いなら、洗口液を使用すれば問題ないでしょう。
しかしそれでは口臭の原因は解消されないため、今後何度でも口臭は起こります。
原因の解消を大切に考えるなら、口臭がする時にまずすべきことは歯科医院に行くことです。