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サプリメントで口臭は予防できる?
2018年11月01日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「口臭は深刻な問題である」です。
口臭は健康において重要な問題ですが、ほとんどの方が口臭予防の意識を強く持っていると思います。
男性はもちろん、特に女性は口臭予防を徹底しているでしょうからね。しかし、口臭予防の意識を持つ人は多くても、正しい対処方法ができている人は少なく、例えばサプリメントで簡単に口臭予防しようと考える人が多くいます。
さて、結論から言うとそのような方法での口臭予防、対処は間違っており、口臭がする人がまずすべきことは歯科医院に行くことです。なぜなら、その口臭はもしかすると大きな病気であることを示すサインの可能性があるからです。
目次
原因究明の重要性
これはどんなことにも言えますが、何か問題が起こった場合にはその問題を解決するだけでなく、問題が起こった原因を解決しなければまた同じことが起こります。例えば仕事で後輩がミスをしたとして、先輩のあなたはまずミスの解消を最優先するでしょう。
しかし、その後で後輩にミスが起こった原因を聞き、今後同じミスが起きないよう改善策を考えると思います。そうしなければ、いつかまた全く同じミスをして同じ問題が起こるでしょうからね。つまり、問題に対しては解消するだけでなく原因究明も重要だということです。
さて、これは口臭についても言えることです。口臭がする場合にサプリメントで対処するのは、あくまで一時的な解消効果でしかなく、口臭の原因究明やその改善には何の効果もありません。
最も、例えばその口臭がニンニク料理を食べたことによる口臭なら問題ありません。この場合は口臭の原因が食材だと分かっていますし、歯磨きすればその口臭は簡単に解消されるからです。問題なのは、その口臭の原因が何らかの病気である場合です。
一時的口臭と病的口臭
口臭には一時的口臭と病的口臭の2つのタイプの口臭があります。一時的口臭は文字どおり一時的な口臭であり、例えば食材などが理由による場合です。一時的口臭は時間の経過や歯磨きで解消できますし、それこそタブレットでの解消も効果的です。
ただし病的口臭は病気が原因で起こる口臭ですから、一時的な解消は無意味です。例えば歯磨きすれば一時的な口臭は解消されますが、原因となっている病気を治さない以上、再び口臭がするようになるでしょう。
病的口臭の例
ではここで、病的口臭について深く考えてみます。
そもそも口臭がする病気とはどんな病気が考えられるのでしょうか。
歯周病
病的口臭の場合、可能性として最も高いのが歯周病です。歯周病菌は臭いを発生させますが、歯周病になると口の中で歯周病菌が繁殖します。つまり歯周病菌だらけの状態になるわけで、その分だけ臭いが強くなり、それが口臭となります。
また、歯周病になると歯肉から出血する、膿みが出るなどの症状が起こるため、それらが歯石になるなどの原因で口臭となることもあります。歯周病による口臭は臭いもかなりきつく、起床時に確認すれば自分でも充分自覚できるほどです。
虫歯
虫歯になると歯に穴があくため、言わばその箇所は細い空洞ができた状態になります。このため、食べた物がその空洞に詰まってしまうことがあり、それが長時間除去されないことで、やがて詰まった食べ物は腐ってしまいます。
そうなると食べ物が腐った臭いが口の中に広がってしまい、呼吸時に口臭になるのです。最も、虫歯の場合は歯に痛みを感じますから、例え口臭がしなかったとしても自分が虫歯であることは自覚できるはずです。
胃炎
胃炎になると胃酸が正常に出にくくなり、その影響で食べた物が消化されづらくなります。そうなると食べた物は未消化の状態で胃に長時間留まることになり、本来なら腸で行われるはずの発酵が胃で起こってしまいます。
その際、発生した発酵臭が肺に入ってしまうことで呼吸時にその発酵臭がするようになり、それが口臭となります。この場合の口臭は発酵臭ですから、臭いとしては腐った卵のような非常に嫌な臭いがするのが特徴です。
胃がん
胃がんになることでの口臭は、2つのパターンがあるとされています。1つは胃がん特有の口臭で、がん細胞が増殖する時に発生する化学物質が原因と言われていますが、現状あくまでそれは一説に過ぎず、ハッキリとした原因や根拠は明らかになっていません。
もう1つのパターン…これは既に確認されていることで、がんの壊死によって発生する臭い成分が原因です。臭い成分が発生すると血液中に吸収され、血管を通じて肺に入ります。そして肺のガス交換によって排出されることに口臭になるのです。
十二指腸潰瘍
口臭がするメカニズムは胃炎の場合とほとんど同じです。十二指腸潰瘍になると消化不良が起きやすくなりますが、そのせいで食べた物が消化されにくくなります。このため、胃炎同様に胃の中で食べた物が停滞してそこで発酵が起こってしまいます。
そして、発酵時に発生した臭い物質が血液に入ることで、血管を通じてそれが全身に回ります。その結果、臭い物質が肺に入ってしまうと呼吸時に口臭がするのです。ちなみに十二指腸潰瘍が原因の口臭なら、それ以外にも吐き気や胸やけなどの自覚症状もあります。
逆流性食道炎
あまり聞いたことのない病気だと思う人も多いでしょうが、逆流性食道炎とは胃液が食道に逆流する病気で、胃液の逆流によって食道が炎症を起こしてしまいます。口臭の原因としては、胃液が食道まで上がることで呼吸時に酸っぱい臭いがするためです。
さらに胃の臭いも漏れてきますから、酸っぱい臭いと胃の臭いが混ざったきつい口臭がするようになります。ちなみに、逆流性食道炎は聞き慣れない病気の割には、誰にでもかかる可能性のある病気です。と言うのも、食生活の乱れ、ストレス、過労などが原因で起こる病気だからです。
腸内環境の悪化
腸の中には善玉菌と悪玉菌があり、本来なら2つの菌がバランスよく共存しています。しかし、腸内環境が悪化することで悪玉菌が増えてしまいます。そして、悪玉菌が発生する際には腐敗したガスが腸の中で充満します。
そうすると、充満した腐敗したガスが腸壁→血液へと吸収されていき、血管を通じて全身に回り、肺に入り込むことで呼吸時に口臭がするようになるのです。ちなみに腸内環境が悪い人は便秘になるケースが多いため、つまり便秘の人も口臭がすることになります。
肝臓の不調
肝臓には様々な働きがありますが、その中の一つに有毒なアンモニアを解毒する働きがあります。食べた物にタンパク質が含まれていると、分解時に有毒なアンモニアが発生します。そして、その有毒なアンモニアは肝臓によって解毒され、尿素になって身体の外に排出されます。
しかし、肝臓が不調で正常な働きがでない場合、有毒なアンモニアの解毒が正常に行われなくなり、そうなるとその有毒なアンモニアが血液中に溶け込んでしまうのです。そして血管を通じて全身に回り、肺に入り込むことで呼吸時に口臭がするようになります。
…口臭は口から感じる臭いですから、一見その原因は口の中にあると決めつけてしまいがちです。確かに食材などによる一時的口臭はそのとおりですし、病的口臭の場合も虫歯や歯周病によって口臭が起こり、口臭の原因として可能性も高いでしょう。
しかし、胃や腸の病気で口臭がするケースもあり、その意味では口臭の全身の健康にかかわる問題です。このため口臭がすることを単にエチケットの問題だけと考えず、病気の可能性があるという危機感を持ち、まずは歯科医院に行って原因の究明をしなければなりません。
口臭外来について
歯科医院にはそれぞれ診療科目が設けられていますが、最近では口臭の検査や治療を専門として口臭外来を設けている歯科医院もあります。また、口臭外来は歯科医院に限らず、総合病院に設けられていることもあります。
ちなみに、口臭外来ではなく「口臭専門治療」と表記されている歯科医院もあり、こうした歯科医院では口臭に対する本格的な精密検査や治療を行えます。ただし、口臭外来は自由診療になるため、検査の費用などは保険診療に比べて高額です。
最も、口臭の原因が究明された場合、その原因の治療においては健康保険が適用されるケースもあります。例えば歯周病や虫歯が原因の場合、歯周病治療や虫歯治療は健康保険が適用されますから、口臭外来で歯周病治療や虫歯治療を行う場合は従来の治療と同様に健康保険が適用されます。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、口臭は深刻な問題であることについてまとめます。
1. 原因究明の重要性 :口臭の原因を解消しなければ、いくら一時的に解消しても再び口臭がする
2. 一時的口臭と病的口臭 :病気が原因で口臭がすることもあり、口臭は身体の健康に異常を示すサイン
3. 病的口臭の例 :以下のような病気の場合に口臭がする
・歯周病 :可能性として最も高い。歯周病菌の繁殖や歯肉から出た膿みや血液が口臭になる
・虫歯 :虫歯の穴に食べた物が詰まり、それが腐ってしまうことで口臭になる
・胃炎 :食べた物が正常に消化されずに胃の中で発酵することで、その発酵臭が口臭になる
・胃がん :がんの壊死によって発生する臭い成分が血液に入り、肺に回ることで呼吸時に口臭がする
・十二指腸潰瘍 :胃炎と似たメカニズムで口臭がするようになる
・逆流性食道炎 :逆流した胃液の酸っぱい臭いと胃の臭いが混ざった口臭がする
・腸内環境の悪化 :悪玉菌の増加によって腐敗したガスの臭いが肺に回って呼吸時に口臭がする
・肝臓の不調 :有毒なアンモニアが解毒させないことでアンモニア臭の口臭がする
4. 口臭外来について :口臭の検査や治療を専門としており、歯科医院や総合病院に設置されている
これら4つのことから、口臭は深刻な問題であることについて分かります。例えるならサプリメントによる口臭解消は、大きな病気による痛みを痛み止めで一時的に抑えるのと同じです。口臭が解消されてもそれは一時的なものでしかなく、時間が経てば再び口臭がするようになります。
それどころか原因…つまり病気が放置状態になるため、その病気が進行する問題があり、その意味でも口臭は身体の異常を示すサインと受け止め、まずは原因究明のために歯科医院に行きましょう。