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原因が分からず、歯がグラグラしていて抜けそうなのですが歯周病ですか?
2019年01月01日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。
今回のテーマは「歯周病について」です。歯がグラグラと不安定になっている場合、その原因としていくつか考えられることがあります。
例えば、歯をぶつけた場合に衝撃の強さによっては歯がグラつくことがありますが、突然歯がグラつくようになったのであれば、その可能性は低いでしょう。と言うのも、ぶつけた場合は本人もそれを自覚できるからです。
原因不明で歯がグラつくとすれば、原因として最も可能性が高いのは歯周病でしょう。歯周病は「静かなる病気」と呼ばれるほど自覚症状が少なく、そのためいつの間にか発症していつの間にか進行するケースが少なくありません。
目次
歯周病とは
歯周病とは炎症性疾患で、歯肉の炎症や歯槽骨の破壊などが起こる病気です。歯槽骨は歯を支えているため、その歯槽骨が破壊されることは歯が支えを失うことを意味します。ですから最終的に歯が抜け落ちてしまい、それが歯周病で歯を失う理由でもあります。
歯周病が発症する流れを分かりやすく解説すると、歯と歯肉の境目には僅かな深さの溝があります。口の中の清掃が不充分だと、この溝に細菌が停滞するため、その影響で歯肉は炎症を起こします。そして、症状が進行することで歯と歯肉の境目の溝が深くなっていきます。
歯周病によって深くなったこの溝を歯周ポケットと呼び、歯周ポケットに溜まった細菌…つまり歯周病菌はやがて歯の骨である歯槽骨を溶かします。そうなると歯は支えを失うため不安定になり、グラついて抜け落ちてしまうのです。
歯肉炎と歯周炎と歯槽膿漏
歯肉に炎症が起こるのは初期の歯周病の症状ですが、症状だけ聞くと歯肉炎を想像するでしょう。では歯肉炎と歯周病はどう違うのか?…実はこれらは呼び方が違うだけです。歯周病は、進行度に応じて初期段階と中期段階と重度段階の3段階に分けられています。
そして以前は歯周病と呼ばず、それぞれの段階ごとで病名が設定されていたのです。その病名とは歯肉炎、歯周炎、歯槽膿漏であり、現在ではそれら全てをひっくるめて歯周病と呼ぶようになったのです。
つまり、歯肉炎は初期段階の歯周病であり、歯周炎は中期段階の歯周病であり、歯槽膿漏は重度段階の歯周病を意味しています。ですから歯肉炎と診断された場合、それは初期段階の歯周病になっていると判断すれば良いでしょう。
歯周病の自覚症状
歯周病が静かなる病気と呼ばれる理由は、目立った自覚症状がないからです。例えば虫歯は歯の痛みという分かりやすい自覚症状があり、歯が痛むことで自分が虫歯であると気づけます。一方、歯周病にはそこまで分かりやすい自覚症状がなく、そのため進行してしまうケースが多いのです。とは言え、歯周病にも全く自覚症状がないわけではなく、次のような自覚症状があります。
口臭がする
ちなみに口臭の原因も様々なため、「口臭がする=歯周病」とまで断言はできません。歯周病の口臭は歯周病菌の繁殖、歯石、歯肉から出た血液や膿みが臭いの原因となっています。また、歯周病による口臭は他のことが原因で起こる口臭に比べて臭いがきついのが特徴です。
歯肉が腫れる、変色する
歯周病になると歯肉が炎症を起こしますが、この時は特に痛みはありません。しかし歯肉の見た目には変化が生じ、炎症による影響で歯肉が腫れたり変色したりします。また、触れた時の感触も歯肉らしい張りがなくなり、プヨプヨとした感触になります。
歯肉から出血しやすくなる
歯周病になると身体の防御機能が働き、歯周病菌を駆除するため患部に血液が集結します。そのため患部は少々の刺激で出血しやすくなり、特に食事や歯磨きの時に出血しやすくなります。「歯周病になるとリンゴを食べた時に歯肉から出血する」と聞くのは、この自覚症状が理由になっています。
歯が伸びたように見える
これは実際に歯が伸びたわけではなく、歯が伸びたように見えるだけです。歯周病が進行すると歯槽骨が溶かされ、その影響で歯肉の高さが下がります(歯肉退縮)。歯肉の高さが下がることで歯の根が露出してしまい、その分だけ歯が伸びたように見えます。
知覚過敏が起こる
知覚過敏とは、歯が冷たさを感じた時などに一瞬ピシッとしみる症状のことです。歯周病が進行して歯肉退縮が起こると歯の根が露出しますが、この歯の根はエナメル質で保護されていないため、冷たさなどの刺激によって知覚過敏が起こります。
歯がグラつく
歯周病が進行すると歯槽骨が溶かされ、そのため歯は支えを失ってグラつくようになります。この状態になると指で押すだけでも歯は動くため、歯周病の自覚症状の中でも分かりやすいでしょう。しかし大きな問題があり、それはこの自覚症状で歯周病に気づくようでは遅すぎるということです。
歯周病の予防方法
歯周病を予防するには、次の3つの方法全てを実践するのが効果的です。
予防方法1. 精密な歯磨きをする
歯磨きは歯周病予防の基本ですが、歯磨きにとって大切なのは頻度や回数ではなく精度です。このため、ただ磨きだけではなく丁寧で精密な歯磨きを心掛けましょう。
<精密な歯磨きをするには>
・デンタルフロスや歯間ブラシの使用 :プラークの除去率が2割高まります
・プラークテスターの使用 :磨き残したプラークを染色することで、磨き残しが目で確認できます
・ブラッシング指導を受ける :予防歯科や定期検診で受けられ、正しい歯の磨き方を学べる
・矯正治療を受ける :矯正治療で歯並びを改善すれば、凸凹がなくなり歯が磨きやすくなる
予防方法2. 生活習慣を改善する
歯周病は生活習慣病であり、日常生活の中に発症の要因がいくつもあります。そこで生活習慣の見直しと改善を行い、歯周病発症の要因をできるだけ多く排除しましょう。
<生活習慣改善のポイントとは>
・禁煙する :喫煙は歯周病になるリスクを5倍以上高め、さらに重症化しやすくなる
・疲労やストレスの解消 :疲労やストレスの蓄積は身体の免疫力が低下して、歯周病菌に感染しやすくなる
・食生活の改善 :糖の摂取は虫歯だけでなく歯周病になるリスクも高める
・家族全員が予防意識を高める :歯周病菌は唾液を介して人から人に移動するため
予防方法3. 定期検診を受ける
歯科医院で定期検診を受ければ、歯周病の予防効果が高まるだけでなく歯周病の早期発見も可能です。早期発見できれば早期治療できるだめ、重症化する前に歯周病を治すことができます。
<定期検診を受けることでの予防効果とは>
・歯のクリーニング :歯磨きでは除去しきれないプラークまで完全に除去できる
・ブラッシング指導 :歯磨きの技術が向上してプラークコントロールしやすくなる
・生活習慣改善のアドバイス :生活習慣の見直しと改善において、その具体策が分かる
・口の中の健康状態の確認 :本来なら気づかないほど初期の歯周病でも発見できる
…これら3つの予防方法の実践で大抵の歯周病は予防できるようになりますし、例え歯周病になったとしても、定期検診を受けていることで初期段階の時点で発見と治療が可能です。
歯周病についての意外な事実
歯周病は虫歯と同様に口の中の代表的な病気ですが、虫歯に比べると病気そのものを詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。そこで、歯周病についてあまり知られていない意外で怖い事実をお伝えします。
歯周病は人にうつる!
正確には、唾液を介して人から人に歯周病菌が移動します。例えば「キス」、「回し飲み」、「食器の共用」、「歯ブラシの接触」などの行為が該当します。
歯周病は妊娠した女性に悪影響をもたらす!
妊娠した女性が歯周病になると、早産と低体重児出産のリスクが数倍高まります。このため、妊娠した女性は虫歯だけでなく歯周病も予防しなければなりません。
歯周病は年齢関係なく発症する!
歯肉炎は小学生でもかかりますし、歯肉炎は初期段階の歯周病とイコールです。代謝が活発なため重症化することはまずないものの、初期段階の歯周病なら子供でもかかります。
人工の歯でも歯周病になる!
歯周病は「歯」ではなく「歯の骨」の病気です。ですから、歯が人工物でも歯周病になります。例えばインプラントが歯周病になることもあり、それをインプラント周囲炎と呼びます。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、歯周病についてまとめます。
1. 歯周病とは :炎症性疾患で、歯肉の炎症や歯槽骨の破壊などが起こる病気
2. 歯肉炎と歯周炎と歯槽膿漏 :初期段階の歯周病、中期段階の歯周病、重度段階の歯周病を意味する
3. 歯周病の自覚症状 :静かなる病気と呼ばれており自覚症状が少ないが、以下の自覚症状がある
・口臭がする :歯周病菌の繁殖、歯肉から出た膿みや血液、歯石などが原因できつい口臭がする
・歯肉が腫れる、変色する :歯肉に炎症が起こることで見られる自覚症状。特に痛みはない
・歯肉から出血しやすくなる :歯周病菌を駆除するため血液が集結し、そのため歯肉から出血しやすくなる
・歯が伸びたように見える :実際には伸びておらず、歯肉退縮で歯の根が露出するため伸びて見える
・知覚過敏が起こる :露出した歯の根はエナメル質に保護されておらず、刺激を感じると知覚過敏が起こる
・歯がグラつく :明確で分かりやすい自覚症状だが、ここで歯周病に気づくようでは遅すぎる
4. 歯周病の予防方法 :以下の3つの予防方法が効果的
・精密な歯磨きをする :デンタルフロスや歯間ブラシを使ってプラークの除去率を高めるなど
・生活習慣を改善する :疲労やストレスを解消して身体の免疫力を高めるなど
・定期検診を受ける :歯周病の予防効果が高まるだけでなく、歯周病の早期発見も可能になる
5. 歯周病についての意外な事実 :歯周病には以下のような特徴もある
・歯周病は人にうつる :唾液を介して歯周病菌が人から人に移動する
・歯周病は妊娠した女性に悪影響をもたらす :早産や低体重児出産のリスクが高まる
・歯周病は年齢関係なく発症する :初期段階の歯周病である歯肉炎なら小学生の子供でもかかる
・人工の歯でも歯周病になる :インプラントが歯周病になることもある(インプラント周囲炎)
これらのことから、歯周病について分かります。歯周病で歯がグラつくのは、歯周病菌によって歯槽骨が溶かされてしまうためです。歯槽骨は歯を支えていますから、その歯槽骨が溶かされることは歯が支えを失うことを意味します。歯周病は虫歯のような痛みを感じることはほとんどなく、そのため怖くない病気と思っている人もいます。しかしそれは間違いで、歯周病は最終的に歯を失ってしまう怖い病気です。