BLOG
出っ歯だと噛み合わせも悪いですか?
2019年03月01日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。今回のテーマは「出っ歯の原因と問題点と治療方法」です。噛み合わせが悪いと言ってもその状態は様々で、見た目では判断できないこともあります。
一方、見た目で判断できるのは歯並びが悪い場合で、歯並びが悪く凸凹していれば当然噛み合わせも悪いことが分かります。では出っ歯の場合はどうでしょうか。結論から言うと、出っ歯も噛み合わせが悪いケースの一つです。
そこで、ここでは出っ歯の状態をテーマにした説明をしていきます。
目次
出っ歯と噛み合わせ
出っ歯だと噛み合わせが悪いことは想像できると思いますが、あくまでそれは出っ歯の部分…つまり突き出した前歯の噛み合わせだけが悪いと考えていませんか?
実はそうではなく、結果的に全ての歯の噛み合わせが悪くなってしまいます。
と言うのも、出っ歯の状態だと上の前歯が突き出ているため、下の歯と重なり合うことができません。さらに前にある歯の噛み合わせがずれていることで、その後ろの歯の噛み合わせもずれていきます。そうなると、本来なら力のかからない箇所に力がかかることになり、それが歯へのダメージとなります。
例えば、当たることのないはずの箇所に歯が当たることで、歯が破損してしまうことも考えられます。破損しない場合でも歯は確実に擦り減ってしまい、歯の高さが変わることで噛み合わせが悪くなります。そして噛み合わせが悪くなることで、また別の箇所に負担をかけるサイクルに陥ります。
このように、出っ歯の状態になることで他の歯にも負担を与え、それが繰り返されることで全ての歯の噛み合わせが悪くなってしまいます。つまり、噛み合わせが一か所悪くなるだけで全ての歯の噛み合わせが悪くなってしまうのです。
出っ歯による噛み合わせの悪さが引き起こす問題
噛み合わせの悪さにも様々なケースがありますが、出っ歯で噛み合わせが悪いケースにおいてはどのような問題が起こるのでしょうか。
口の中が乾燥状態になる
出っ歯の状態だと口呼吸になってしまうため、口の中に乾燥した空気が直接取り込まれます。そうなると唾液が蒸発し、また酸欠状態を好む嫌気性菌の働きが活発になってしまいます。唾液の蒸発によって細菌が流れにくくなると、口の中で細菌が溜まって虫歯になるリスクが高まります。
また嫌気性菌がプラークを分解させる働きをすると口臭の原因となる臭いが発生しますが、この働きが活発になることで口臭がしやすくなってしまいます。
発音がしづらくなる
出っ歯だと、その箇所は歯と歯の間に隙間があいている状態です。この状態は見た目に影響するだけでなく、発音時にも大きな支障となります。と言うのも、息を使っての発音がしにくくなるのです。
具体的には「サ行」や「タ行」が発音しづらくなり、特に発音が重要になってくる英会話においては致命的とも言える支障になります。
歯が割れやすくなる
出っ歯だと前歯が突き出ているため、正面からぶつかった時に真っ先にダメージを受けるのは前歯です。激しくぶつかる時には反射的に口を閉じようとするものですが、出っ歯だと完全には口も閉じられず、前歯がまともにダメージを受けてしまいます。
このため、出っ歯だと前歯が割れやすくなるのです。歯が割れてしまえばその対処が必要なため、また別の治療も必要になってしまいます。
体調を崩しやすくなる
出っ歯だと口呼吸になり、口呼吸だと細菌が取り込まれてもそれを喉に直接送り込んでしまいます。もちろん、鼻呼吸でも細菌を取り込んでしまうことはありますが、ただしそうなっても鼻の粘膜によって細菌が駆除されます。
一方、口呼吸で細菌を直接喉に送り込んでしまうと細菌が生きたまま身体に入ってくるため、すぐに風邪を引いてしまうなど体調を崩しやすくなってしまいます。
肩こりや頭痛が起こる
出っ歯に限ったことではないですが、噛み合わせの悪さは肩こりや頭痛の原因になります。噛む時には広頸筋や側頭筋を使用しますが、これらの筋肉はそれぞれ首から肩、顎関節から頭の横にかけてつながっています。
噛み合わせが悪いとこれらの噛む筋肉が悪い影響を受けてしまい、さらにその筋肉が肩や頭につながっていることで、慢性的な肩こりや頭痛を引き起こしてしまいます。
顎関節症になりやすい
出っ歯は上下の顎のバランスが悪い状態であり、顎関節に常に負担がかかっています。このため顎関節症になりやすく、さらに重症化しやすくもなってしまいます。顎関節症になると顎やその周辺の痛み、さらには口が大きく開かないなどの症状が起こります。
また耳鳴り、腰痛、背中の痛み、目の充血など細かい様々な症状が起こるため、症状だけでは顎関節症と判断しづらい点も問題です。
出っ歯になる原因
出っ歯になる原因には先天的なものと後天的なもの…つまり生まれつきのものとそうでないものがあり、それぞれ次のことが原因として考えられます。
先天的な原因
まず骨格の遺伝によるもので、骨格の状態はある程度遺伝するとされています。傾向として上顎が大きい場合はその可能性が高くなっています。また、歯の大きさや形も遺伝するため、その遺伝によって出っ歯になることもあります。
例えば、歯が骨の大きさに比べて大きすぎると綺麗に歯が並ばなくなり、大きすぎる分だけ歯が前に出てしまう…つまり出っ歯になってしまいます。最も、先天的な原因で出っ歯になったとしても、早い段階の小児矯正によって対処することも可能です。
後天的な原因
最も多いのは子供の頃の癖によるもので、指しゃぶり、爪を噛む、舌で歯を押すなどの癖が該当します。実際、小さな子供の指しゃぶりはある程度大きくなると止めさせる必要があると言われていますが、それは噛み合わせが悪く出っ歯になってしまうことも理由の一つです。
また、頬杖など大人でもする癖で出っ歯になることもあります。他の原因としては、下顎の成長が不充分になりやすい口呼吸や、親知らずによって前歯が押し出されて出っ歯になることもあります。
出っ歯の治療方法
出っ歯の治療方法は基本的に矯正治療で対処しますが、年齢や状態によって具体的な方法が異なります。どの時期からでも対処できますが、治療方法や症例を考えると早い時期に対処した方が良いでしょう。
5歳以下の場合
年齢的にまだ乳歯だけの状態ですが、この時期に指しゃぶりなどの癖があると出っ歯になる、そうでなくても骨格に影響を与えて歯並びが悪くなるため、こうした癖をなおすことが最優先になります。症状の治療と言うよりは、症状の原因の解消を優先する時期とも言えます。
6歳以上~12歳未満の場合
年齢的に乳歯と永久歯が混ざって生えている状態です。この時期に矯正すれば顎の成長を正常に促しながらの治療が可能なため、永久歯が正常な位置に生えるように誘導もできます。矯正装置も簡単なもので対応できます。
12歳以上の場合
年齢的に永久歯が生えそろった状態です。この時期の矯正は本格的なものになり、状態によっては抜歯も必要です。一方、簡単な症例ならマウスピース矯正でも対応できます。
<補足>
6歳以上~12歳未満の時期に矯正を開始すれば、12歳以上の矯正においてもプラス効果をもたらします。最初の矯正(第一期治療)の結果次第で12歳以上の本格的な矯正(第二期治療)をする必要がなくなりますし、例え本格的な矯正が必要になったとしても、比較的軽度の状態で開始できます。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、出っ歯の原因と問題点と治療方法についてまとめます。
1. 出っ歯と噛み合わせ :出っ歯は前歯だけでなく、最終的に全ての噛み合わせが悪くなる
2. 出っ歯による噛み合わせの悪さが引き起こす問題 :出っ歯だと次の問題が起こる
・口の中が乾燥状態になる :嫌気性菌の働きが活発になり口臭がしやすく、さらに虫歯にもなりやすい
・発音がしづらくなる :「サ行」と「タ行」の発音に影響し、発音が重要な英会話においては致命傷にもなる
・歯が割れやすくなる :前歯が突き出ているため、正面の衝撃に対して前歯が真っ先にダメージを受ける
・体調を崩しやすくなる :口呼吸によって細菌をそのまま喉に送り込んでしまうため
・肩こりや頭痛が起こる :噛み合わせの悪さによって広頸筋や側頭筋が悪い影響を受けるため
・顎関節症になりやすい :上下の顎のバランスの悪さから、顎関節症に常に負担をかけているため
3. 出っ歯になる原因 :大きく分けて、先天的な原因と後天的な原因がある
・先天的な原因 :骨格や歯の大きさや形の遺伝によって出っ歯になることがある
・後天的な原因 :主に癖。指しゃぶりや爪噛みや舌癖など、子供の時に行う癖に原因が多い
4. 出っ歯の治療方法 :主に矯正治療で対処するが、年齢や状態によって治療方法に次の違いがある
・5歳以下の場合 :症状の治療よりも、指しゃぶりなど出っ歯になる原因となる癖の改善が最優先
・6歳以上~12歳未満の場合 :顎の成長を正常に促しながらの矯正。矯正装置は簡単なもので対応できる
・12歳以上の場合 :本格的な矯正。状態次第で抜歯も必要だが、マウスピース矯正で対応できることもある
・補足 :6歳以上~12歳未満の時期に矯正することで、12歳以上の本格的な矯正が楽になる
これらのことから、出っ歯の原因と問題点と治療方法について分かります。出っ歯と聞くと、多くの人が真っ先に連想するのは見た目の悪さだと思います。確かに、出っ歯は審美面においてマイナス影響をもたらしますが、それは健康面においても言えることです。
出っ歯になると口の中が乾燥して虫歯や口臭が起こりやすくなりますし、慢性的な肩こりや頭痛、さらには顎の痛みを引き起こす顎関節症になるリスクまで高まります。出っ歯は遺伝的なものであっても個性と捉えず、健康のためには矯正治療で改善すべき必要があります。