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歯周病は細菌によるものなのですか?
2019年03月15日
江東区門前仲町の歯医者さん、原澤歯科です。今回のテーマは「歯周病の説明」です。まずタイトルの質問に回答すると、歯周病はその原因菌による感染で起こります。
ですから、歯周病は細菌によって起こるものであることに違いありません。しかし、風邪のように時期によって人から人にうつって流行するものではなく、元々口の中に存在する歯周病の原因菌が繁殖し、身体に悪さをすることで起こる病気です。
さて、今回お伝えするのはそんな歯周病をテーマにしたお話です。
目次
歯周病の原因菌
歯周病の原因菌は歯周病菌とまとめられることが多いですが、正確には複数の種類の細菌が該当します。また、それらの中で特に病原性が高いものに限ると、ある共通点が見つかります。それは、いずれの細菌も食べカスが細菌の塊となり、それがプラークとなって歯に付着します。
そして、そこから時間の経過によって細菌が繁殖していくという点です。ここでポイントとなるのは、「時間の経過によって細菌が繁殖する」の部分であり、一定時間以内に細菌を除去すれば繁殖を防げる…つまり、歯周病を予防できるということになります。
歯に付着した細菌、その棲み処であるプラークを除去する方法は歯磨きですから、毎日の歯磨きが歯周病予防においていかに大切なのかが分かります。また、歯石ができると歯磨きでは除去できないため、歯科医院での定期的な歯石取りも大切です。
歯周病にかかりやすい人
いくら予防してもすぐに歯周病になってしまう人もいれば、大した予防をしていないのに歯周病を予防できる人もいます。この差が生まれる理由として、次のことに該当する人は歯周病になりやすいので注意してください。
疲労やストレスが蓄積されている人
疲労やストレスの蓄積は身体の免疫力を低下させます。そして、身体の免疫力が低下すると細菌に感染しやすくなります。細菌に感染しやすくなるということは、歯周病の原因菌にも感染しやすくなるということになります。
噛み合わせが悪い人
噛み合わせが悪いと口呼吸になり、乾燥した空気を直接取り込んでしまいます。このため唾液が蒸発し、細菌が流れにくくなることで歯周病にかかりやすくなります。また、乾燥状態の口の中は嫌気性菌の働きが活発になり、この嫌気性菌も歯周病の原因菌に含まれます。
歯並びが悪い人
歯並びが悪いと、凸凹した歯並びによって歯磨きがしづらくなります。歯磨きがしづらいということは歯磨きの精度が落ちることになり、磨き残しも多くなります。また特定の箇所にプラークが溜まるため歯石もできやすく、いずれも歯周病の原因になります。
タバコを吸う人
喫煙は身体に害をもたらしますが、口の中の健康においてもそれは例外ではありません。ニコチンによって身体の免疫機能が狂いますし、プラークも付着しやすくなります。また、タバコを吸うと歯肉の腫れが見た目で確認できないため、歯周病を進行させやすい問題もあります。
女性
歯周病の原因菌の中には、女性ホルモンをエネルギー源とするものがあります。このため女性は男性に比べて歯周病にかかりやすく、特に女性ホルモンの分泌が過剰になりやすい妊娠時などは要注意です。
糖尿病の人
糖尿病と歯周病の関係は以前から指摘されており、糖尿病の人は歯周病にかかりやすくなります。糖尿病で血糖値が高くなると唾液の分泌量が低下しますが、その影響で白血球の機能まで低下して、歯周病の原因菌が繁殖してしまうのです。
定期検診を受けない人
歯磨きで常に全てのプラークの除去することはまず不可能で、磨き残しが確実に発生します。磨き残しプラークはやがて歯石になり、歯石になると歯磨きでは除去できなくなります。定期検診を受けない人は歯石が残ったままになり、歯石の蓄積によって歯周病にかかりやすくなります。
家族全員の歯周病の予防意識が低い人
歯周病の原因菌は唾液を介して人から人にうつります。歯周病の症状が直接うつるわけではないですが、原因菌が移動してしまうのです。このため家族全員の歯周病の予防意識が低いと、家族の誰かの歯周病の原因菌がうつってしまいます。
歯周病を予防するための歯磨き
歯周病予防の基本は毎日の歯磨きですが、そもそも歯磨きを欠かす人はまずいないでしょう。しかし、ただ歯を磨いているというだけでは予防できず、予防するためには精度の高い歯磨きが必要です。歯磨きの精度を高めるには、次の方法を実践すると効果的です。
ブラッシング指導を受ける
歯科医院の定期検診や予防歯科を受診すると、治療メニューの一つとしてブラッシング指導を受けられます。これは、自分の歯並びに合った正しい歯の磨き方を覚えるためのもので、歯科医が歯ブラシの持ち方から磨き方まで指導するため、歯磨きの精度を高めることができます。
デンタルフロスや歯間ブラシを使う
歯ブラシのブラッシングのみの歯磨きでは、一般的にプラークの除去率は約6割とされています。つまり、丁寧に磨いたつもりでも約4割の磨き残しが発生しているのです。デンタルフロスや歯間ブラシを使えば、プラークの除去率を約8割以上まで高められます。
プラークテスターを使う
プラークテスターを使えばプラークを染色して目に見える状態にできるため、磨き残しを確実に減らせます。また、連続して使えば磨き残した箇所のパターンの把握もできるため、自分の歯磨きの弱点が分かります。プラークチェッカーとも呼ばれ、インターネットやドラッグストアにて数百円で購入できる手軽さも利点です。
静かなる病気の自覚症状
歯周病は静かなる病気と呼ばれており、それは目立った自覚症状がほとんどないからです。例えば虫歯の場合、歯の痛みという分かりやすい自覚症状があり、その自覚症状があるからこそみなさんは虫歯の発症に気づき、そして治療を受けます。
一方、歯周病には目立った自覚症状がなく、そのため歯周病が発症しても気づかない人が多いのです。歯周病の発症に気づかなければ治療を受けようと考えることもないため、その間に歯周病は静かに進行してしまう…それが歯周病の最も怖い部分です。
しかし、そんな歯周病も自覚症状が全くないわけではありません。歯周病にかかると進行度によって次の自覚症状が起こるため、該当する人は歯周病を疑ってみるべきです。
歯肉が腫れる、変色する
初期の自覚症状です。歯周病にかかると歯肉が炎症を起こすため、歯肉の見た目に変化が起こります。変色してさらに腫れあがり、触って感触も歯肉ならではの張りがなくなっています。
歯肉から出血する
初期の自覚症状です。炎症を起こした歯肉は血液も集まっているため出血しやすくなります。このため、食事の時や歯磨きの時などのささいな刺激によって出血することが多くあります。
口臭がする
初期の自覚症状です。歯周病にかかった時点で、口の中では歯周病の原因菌が繁殖しています。このため口の中がネバつきますし、きつい臭いの口臭もするようになります。
歯が長くなる
中期の自覚症状です。実際に歯が長くなるわけではないですが、歯周病による歯肉退縮によって歯肉の高さが下がるため、歯の根が露出して歯が長くなったように見えます。
知覚過敏が起こる
中期の自覚症状です。歯周病の進行によって歯の根が露出している場合に起こる症状です。露出した歯の根はエナメル質が存在しないため、冷たさなどの刺激によって知覚過敏が起こります。
歯が動く
重度の自覚症状です。指で動かすだけで歯が動くため、非常に分かりやすい自覚症状です。このため歯周病の発症を充分自覚できますが、この段階で気づくようでは遅すぎます。
まとめ
いかがでしたか?
最後に、歯周病の説明についてまとめます。
1. 歯周病の原因菌 :食べカスから細菌の塊となるものが多く、そのためプラークの除去が予防の基本
2. 歯周病にかかりやすい人 :次のことに該当する人は歯周病にかかりやすい
・疲労やストレスが蓄積されている人 :身体の免疫力が低下しており、歯周病の原因菌に感染しやすい
・噛み合わせが悪い人 :口呼吸による唾液の分泌量の低下が原因で、歯周病の原因菌が繁殖しやすい
・歯並びが悪い人 :歯並びが悪いと歯磨きの精度が落ちるため、磨き残しが多くなる
・タバコを吸う人 :プラークが付着しやすくなり、ニコチンによって身体の免疫機能が狂わされる
・女性 :歯周病の原因菌の中には女性ホルモンをエネルギー源とするものがある
・糖尿病の人 :血糖値が高くなることで唾液の分泌量が低下して、歯周病の原因菌が繁殖しやすい
・定期検診を受けない人 :自分では歯石の除去ができないため、歯石が蓄積されてしまう
・家族全員の歯周病の予防意識が低い人 :歯周病の原因菌が唾液を介して人から人にうつるため
3. 歯周病を予防するための歯磨き :歯磨きの精度を高めるためには次のことが効果的
・ブラッシング指導を受ける :自分の歯並びに合った正しい歯の磨き方が分かる
・デンタルフロスや歯間ブラシを使う :プラークの除去率が約2割以上高まる
・プラークテスターを使う :プラークを染色することで、磨き残しが目で確認できる
4. 静かなる病気の自覚症状 :歯周病は静かなる病気と呼ばれるが、次の自覚症状がある
・歯肉が腫れる、変色する :歯肉が炎症を起こすことで腫れて変色する。触った感触も張りがなくなる
・歯肉から出血する :炎症を起こした歯肉は出血しやすく、食事や歯磨きのささいな刺激で出血する
・口臭がする :口の中で歯周病菌が繁殖しているため、きつい口臭がするようになる
・歯が長くなる :歯周病の進行によって歯肉退縮が起こると、歯肉の高さが下がって歯が長く見える
・知覚過敏が起こる :歯肉退縮で露出した歯の根にはエナメル質がなく、冷たさなどで知覚過敏が起こる
・歯が動く :明確で分かりやすい自覚症状だが、ここで歯周病の発症に気づくようでは遅すぎる
これらのことから、歯周病の説明について分かります。歯周病は細菌による感染症ですが、生活習慣病とも呼ばれています。つまり、日常生活の中に発症のリスクを高める原因がいくつも潜んでいるのです。
予防のための基本は毎日の歯磨きですが、精度の高い歯磨きを実践しなければ予防効果はないですし、定期的に検診を受けなければ完全に予防するのは難しいでしょう。また、発症時は早期治療が必要となるため、歯周病の自覚症状も知っておくと良いでしょう。