BLOG
歯周病と口が臭いのは関係ありますか?
2019年04月01日
江東区門前仲町の歯医者、良修会 原澤歯科です。今回のテーマは「歯周病と口臭の関係」です。
身体に何らかの症状が起こった時、それは身体が異常を伝えるためのSOSのサインです。
例えばお腹を壊した時、それは腹痛という症状でSOSを伝えます。また虫歯は痛みという症状でSOSを伝え、その意味でサインとして最も多いのは「痛み」でしょう。しかし、時に身体は「臭い」によってSOSのサインを伝えることもあります。
例えば歯周病…歯周病は目立った自覚症状がなく、そのため「静かなる病気」とも呼ばれます。しかし歯周病にも実はいくつかの自覚症状があり、口臭はその中の一つです。そこで、ここでは歯周病と口臭をテーマにしたお話をしていきます。
目次
歯周病で口臭が発生する理由
歯周病になると口臭が発生するのは、歯周病菌の働きが原因です。歯周病菌には多くの種類がありますが、代表的なのは嫌気性菌と呼ばれる空気を嫌う細菌です。嫌気性菌は歯周ポケットに棲みつき、主にタンパクをエサとしています。
そして、タンパク質を吸収して代謝によって出される物質が口臭の原因となります。その物質とは揮発性硫化物と呼ばれる種類の物質で、主に硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどがあります。
ただ、これは歯周病によって口臭が発生するケースの一例にしか過ぎません。なぜなら歯周病菌の種類によって揮発性硫化物の割合などが変化するからです。また、歯周病による膿みや歯肉からの出血、歯石などが原因でも口臭が発生します。
「口臭=歯周病」とは限らない
歯周病になると口臭が発生します。では、仮にあなたが口臭を自覚しているとして、それは歯周病であることを示すサインなのでしょうか?
確かにその可能性は高いですが「口臭=歯周病」とは限らず、他のことが原因でも口臭は発生します。
虫歯
歯周病と並んで口腔内の代表的な病気である虫歯でも口臭は発生します。虫歯になると歯に穴があきますが、穴の深さによってはそこに食べ物が詰まってしまいます。その状態が続くと食べ物はやがて腐るため、口の中で腐敗臭がするようになります。
胃炎
胃炎になると胃の中で食べた物が正常に消化されずに胃の中で残ります。その場合、腸で行われる発酵が胃の中で起こって発酵臭が発生します。その発酵臭が肺に入り込むことで呼吸時に発酵臭を感じるようになり、それが口臭となります。
胃がん
胃がんになると、がんの壊死が起こった時に腐敗臭のする臭い成分が発生します。この成分が血液に吸収され、肺のガス交換によって排出されると口臭が起こります。また、がん細胞の増殖時に発生する化学物質によっても口臭が起こると言われています。
十二指腸潰瘍
口臭が起こるメカニズムとしては胃炎と同じで、十二指腸潰瘍による消化不良が口臭を招きます。食べた物が正常に消化されないことで胃の中でそれが停滞してしまい、胃の中で発酵することで発生する発酵臭が肺に回ると呼吸時に口臭が起こります。
逆流性食道炎
聞き慣れない病気だと思いますが、逆流性食道炎とは胃液が食道に逆流する病気です。まず胃液が食道に逆流する際、喉の方まで上がってくるため胃液の酸っぱい臭いが口臭として発生し、さらにそこに胃の臭いも混ざるため、口臭の中でも相当なきつい臭いがします。
便秘
便秘になると排泄物が腸に溜まり、やがて腐敗して有害物質が発生します。便秘で排泄が起こらないことでこの有害物質は依然残り、やがて腸壁に吸収されて血液に溶け出します。そして血管から全身に回り、肺にまで回ってしまうことで呼吸時に口臭が起こります。
…これらの原因でも口臭が発生するため、「口臭=歯周病」とは限りません。それぞれの口臭には特徴があるものの、臭いの特徴だけで原因を特定するのは困難です。とはいえ、確率だけで考えれば口臭が起こっている場合の原因として最も可能性が高いのは歯周病です。
口臭の原因を特定するには
口臭は口から発生するものですから、原因を特定するには歯科医院に行くのが一般的です。
しかし、さらに専門的に考えるなら口臭外来で検査を受けてみても良いでしょう。口臭外来とは、文字どおり口臭治療を専門とした機関です。
口臭外来なら口臭の検査、原因の特定、さらに治療まで行えます。原因によっては専門の医療機関を紹介し、本格的な治療はそこで行うことになります。
ちなみに、口臭外来の検査は自由診療になるため健康保険が適用されません。
しかし治療が必要になった場合、その治療が保険診療であれば治療費に健康保険が適用されます。例えば、口臭の原因が歯周病だった場合、そのための検査費用には健康保険が適用されませんが、歯周病の治療費おいては健康保険が適用されるという意味です。
歯周病のその他の自覚症状
歯周病の自覚症状は口臭だけではありません。その他にも次のような自覚症状があり、中には進行することで起こる自覚症状もあります。
歯肉の腫れ、変色
歯周病になると歯肉に炎症が起こり、歯肉の見た目にも腫れや変色などの変化が起こります。また、歯肉に触れると普段の張りを感じなくなり、プヨプヨとしたやわらかい感触になります。
歯肉からの出血
歯周病になると歯肉に炎症が起こる上、細菌を駆除するため患部に血液が集まります。この状態になると少しの刺激で出血しやすくなり、食事や歯磨き時に歯肉から出血することがあります。
歯が伸びて見える
実際には歯が伸びたわけではないですが、歯周病の進行によって歯肉退縮が起こった場合、歯肉の高さが下がって歯の根が露出するため、一見歯が伸びたように見えます。
冷たいものがしみる
これは知覚過敏による症状です。歯肉退縮よって歯の根が露出した場合、露出した歯の根にはエナメル質が存在しないため、温度差などの刺激によって知覚過敏が起こります。
噛み合わせると痛む
歯周病が進行して歯槽骨が溶かされると、歯は支えを失います。不安定に歯が傾いた場合、その状態で噛み合わせると強い痛みを感じます。
歯が動く
歯周病が進行して歯槽骨が溶かされた歯は、やがて指で触れると動くほど不安定になります。ここまでの自覚症状が起こると歯周病は重症化しており、治療しても歯を残せない可能性があります。
歯周病を予防するための歯磨き
歯周病予防の基本は毎日の歯磨きですが、予防効果は歯磨きの仕方によって大きく変わります。歯磨きに求められるのは精度であり、つまり丁寧で精密な歯磨きをしてこそ歯周病を予防できるのです。
一方、いくら頻繁に歯磨きしてもその歯磨きの精度が低ければ、歯周病の予防効果として不充分です。そこで気になるのが歯磨きの精度を高める方法ですが、それは以下の方法が効果的です。
デンタルフロスや歯間ブラシの使用
ブラッシングだけで歯磨きをした場合、プラークの除去率は6割ほどとされていますが、デンタルフロスや歯間ブラシを使用すればそれを8割以上まで高められます。両方使用すればより効果は高くなるものの、実際にはどちらか一方の使用でも充分です。
ブラッシング指導を受ける
予防歯科や定期検診を受診すると、治療メニューの一つとしてブラッシング指導を受けられます。これは正しい歯磨きの仕方を覚えるためもので、歯並びに合った効率の良い歯磨きの仕方を学べます。学んだ歯磨きの仕方をマスターして実践すれば、歯磨きの精度が確実に高まります。
プラークテスターを使う
プラークチェッカー、歯垢染色剤などと呼ばれることもあります。プラークテスターはプラークを染め出す…つまり染色する効果があるため、歯磨き後に使用すれば磨き残しを目で確認でき、残ったプラークを確実に除去できます。
まとめ
最後に、歯周病と口臭の関係についてまとめます。
1. 歯周病で口臭が発生する理由 :歯周病菌の出す揮発性硫化物、歯肉から出た膿みや血液、歯石など
2. 「口臭=歯周病」とは限らない :可能性としては歯周病が最も高いが、以下の原因でも口臭が起こる
・虫歯 :虫歯の穴に食べ物が詰まり、時間の経過でそれが腐ると腐敗臭が起こる
・胃炎 :食べた物が消化されずに胃の中で停滞することで胃の中で発酵が起こり、発酵臭が口臭となる
・胃がん :がんの壊死によって臭い成分が発生すると、血液に吸収されて肺のガス交換時に口臭となる
・十二指腸潰瘍 :メカニズムは胃炎と同じ。胃の中で食べた物が発酵して、その時の発酵臭が口臭となる
・逆流性食道炎 :胃液が喉の方まで上がってくるため胃液の酸っぱい臭いや胃の臭いが口臭となる
・便秘 :腸に溜まって腐敗した排泄物から発生した有害物質が肺に回ることで口臭となる
3. 口臭の原因を特定するには :歯科医院で診察してもらう。口臭を専門とした口臭外来で検査するのも良い
4. 歯周病のその他の自覚症状:口臭以外にも以下の自覚症状が起こる
・歯肉の腫れ、変色 :歯肉が炎症を起こすことが原因。触れた感触も歯肉ならではの張りがなくなる
・歯肉からの出血 :炎症を起こした歯肉に血液が集まることで、少しの刺激で歯肉から出血する
・歯が伸びて見える :実際に伸びたわけではなく、歯肉退縮によって歯の根が露出するためそう見える
・冷たいものがしみる :歯の根はエナメル質が存在しないため、露出することで知覚過敏が起こる
・噛み合わせると痛む :歯槽骨が溶けて歯が傾いている場合、その状態で噛み合わせると歯が痛む
・歯が動く :歯槽骨が溶けて歯が支えを失うと、指で触れただけでも歯が動く
5. 歯周病を予防するための歯磨き :歯周病を予防するには、以下の方法で歯磨きの精度を高める
・デンタルフロスや歯間ブラシの使用 :プラーク除去率がさらに2割高まる。どちらを使っても良い
・ブラッシング指導を受ける :自分の歯並びに合った正しい歯の磨き方をマスターできる
・プラークテスターを使う :プラークを染色することで、磨き残しが目で確認できるようになる
これらのことから、歯周病と口臭の関係について分かります。実際には口臭を単にエチケットの問題だけと捉える人が多く、口臭をガムやサプリメントで安易に解消しようとしてしまいがちです。
しかしそれは食材などによる一時的口臭の場合にしか効果がなく、歯周病などの病的口臭の場合は何の解決にもなりません。口臭は身体が発するSOSのサインの可能性がありますので、気になる方は歯医者に行かれることをお勧めします。